農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

経営体、平地で20〜30ha 「徹底した話し合いで合意形成」を明記 再生実現会議が中間提言

 政府の食と農林漁業の再生実現会議は8月2日の第6回会合で「我が国の食と農林漁業の再生のための中間提言」をまとめた。同会議は当初、3月に中間整理をまとめ10月に行動計画を策定する予定だったが震災で議論が中断した。
 中間提言では震災前までの検討と震災後に新たに生じた課題を加え、今後5年間集中的に競争力・体質強化、地域振興について全国的に取り組むべき課題をまとめた。

 このうち担い手対策では「攻めの担い手実現」との表現は盛り込まれたものの、水田農業ではJAグループが政策提言をした集落を基礎として2030haの経営体づくりをめざし、その実現のためには「徹底した話し合いによる合意形成」との文言を明記し生産現場の主体的な判断を重視する方向を打ち出した。
 また、高いレベルの経済連携協定と農林漁業再生の両立実現は重要な課題であるとしたが、TPPの文言はなく、また両立実現にはこの提言に盛り込んだ課題を実現するだけでなく、国民理解と安定した財源確保など、多くの課題があることを指摘し、今後の検討事項とした。


◆現場の主体的判断を重視

 提言は東日本大震災について、農林漁業に大きな被害をもたらしたが、「人と自然の共生、人々の絆やつながりの価値を再認識した」と明記。その一方で食料の安定供給の必要性も再認識されたとして「これを機会に国民生活の根幹を担う農林漁業が国民の期待に応えられるよう農林漁業関係者の意識改革を図ることも必要」とも提言している。
 また、震災を機に産業の空洞化懸念が深刻化し地域経済が深刻な影響を受けるとの指摘もある。これらは同会議のTPPを推進すべきとの立場の委員が指摘していたもので、基本的な認識では両論併記となったといえる。
 そのうえで「めざすべき姿」として、▽グローバル化が進展するなかでさまざまな地域や多様な産業が共存する、▽農林漁業も活力に満ち若者が魅力を感じ従事したくなるような産業になる、▽国は必要な政策メニューを責任を持って提示し現場の方々の主体的判断を尊重する、▽新たな需要の創出、新規市場の開拓を通じて高いレベルの経済連携と両立し得る持続可能な農林漁業の実現、を掲げた。
 また、この姿を実現するための「基本的考え方」として▽需要に応じた農業の実現、6次産業化による付加価値の向上、▽平地で2030ha、中山間地域で1020ha規模の経営体が太宗を占める構造、▽世界各国の農林漁業の経営ノウハウなどから学びつつ優秀な人材を呼び込む、▽政府は農林漁業者にセーフティネットを提供する、をあげた。


◆再生のための7戦略

 平地で20ha30haの経営体の実現に向けては「徹底的な話し合いを通じた合意形成」と現場の取り組みを重視する考え方を盛り込むとともに、「実質的な規模拡大」との表現で、利用権設定や農地所有などにこだわらず、作業受委託なども含め集落ごとの実情に合わせて農地利用集積を進める考え方を示した。
 また、提言では補足として「一定規模を示してそれ以下を政策の対象から外すことを目的とするものではない」ことを明記するとともに、昨年3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画の方針を変更するものではなく、意欲あるすべての農業者が農業を発展できる環境を整備するという基本方針を「むしろ強める性格のもの」とこの提言を位置づけている。
 こうした経営体育成の基本的な考え方を示した戦略1「攻めの担い手実現、農地集積」では、ほかに相続の際に担い手に農地集積が図られる仕組みの検討や、農協の役割についてもさらに検討するとしている。また、担い手確保策ではフランスの新規就農者支援制度を参考に検討をさらに検討することも盛り込まれた。
 戦略2は「6次産業化」で、6次産業化に取り組む法人では資金需要が大きくなるとして「資本力増強のためのファンドによる支援」を行う方針を示した。農水省によるとこのファンドは官民協調のファンド組成を視野に入れているという。
 そのほか戦略は▽戦略3:エネルギー生産への農山漁村の資源活用の促進、▽戦略4:木材自給率50%をめざした森林・林業再生プランの推進、▽戦略5:水産業再生、▽戦略6:震災に強い農林水産インフラの構築、▽戦略7:原子力災害対策への正面からの取り組みとなっている。
 被災地の復興にあたっては全国のモデルとなるような思い切った取り組みが必要との記述もあるが、今後の課題では「それぞれの地域の地勢やこれまで営まれてきた農林漁業の特徴を念頭に置く必要がある」ことを強調した。
 提言を受けて農水省は来年度予算に盛り込める施策は概算要求する方針。

(2011.08.03)