農政・農協ニュース

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重金属、オイルボール、放射能・・・土壌汚染をどう取り除くか  土づくり推進フォーラム

 7月末に開かれた(財)日本土壌協会主催の「土づくり推進フォーラム」講演会は例年、土壌改良や施肥改善の新技術などについて報告されるが、今年は土壌の放射能汚染の現状とその影響、津波被害からの農地の修復などについての発表が多かった。その中から、日本土壌協会会長の松本聰氏と元農業環境技術研究所の結田康一氏の2人の発表内容を紹介する。

塩害よりも重金属・オイルボール

松本聰氏・日本土壌協会会長、東大名誉教授

◆低コストで手軽な重金属不溶化剤

nous1108180701.jpg 津波被害を受けた農地の復旧としては、がれきの撤去と塩害・除塩の問題が大きくクローズアップされた。
 松本氏は、それら以上に「重金属まみれの海底ヘドロと被災船舶から漏れた重油の塊いわゆるオイルボールが大きな問題だ」と指摘する。
 一般的な海水の冠水であれば、むしろミネラル分や栄養価の高い海底土によって田畑は肥沃になる。その際、問題となるのが塩害と硫酸第一鉄による土壌の強酸性化だ。しかし降雨量の多い日本では、塩は自然に流されるか地下に沈み、硫酸第一鉄は化学変化し無害になる。例えば東北地方では土壌からの蒸発散量650mlに対し年間降雨量は1500mlと倍以上だ。
 松本氏は「塩や酸性土壌などは自然に任せれば解消できるが、人工的に手を加えなければ解決できないのが重金属ヘドロとオイルボールだ」という。
 今回の津波被害では、永年、温泉や鉱山、工場などからの排水により海底に溜まった銅、カドミウム、亜鉛、水銀などの重金属がヘドロとなって農地を覆った。
 その対策として現地では土壌の表面を削り一カ所にまとめて野積みしたが、「重金属汚染が近隣の土壌に拡大する可能性がある」と警鐘を鳴らす。むしろ「重金属の働きを抑制する重金属不溶化剤を投入すれば安く手軽に無害化できる」という。
 アパタイトを主成分とする重金属不溶化剤は土壌重量に対し0.5〜1%投入するだけで5年間効果が持続する。松本氏は持続性を10年に伸ばす研究を続けている。

◆微生物で重油を分解

 オイルボールの除去には「微生物の力を利用する」。1990年の湾岸戦争でクウェート国内の多くの土壌が重油で汚染されたが、その時日本のプロジェクトチームは落ち葉などの植物残さを汚染地区に敷き詰め微生物の力で重油を分解する方法を取った。これにより重度の汚染地区でも3年以内に植物が育つようになった。
 今回の震災でオイルボールの被害が出ている地域は局地的であり、「重機を入れて処理するより微生物を利用する方がはるかに安価で効率的だ」と強調する。
 「微生物でオイルボールを除去し、重金属不溶化剤を投入すれば、どんなに時間がかかっても1年半以内には農地が復旧する」と太鼓判を押す。「農地の復活までに3〜5年かかるなど絶望的な意見も聞かれるが、そういう人々にこういった技術を伝え、一日でも早く農業が再開できるような手助けをしたい」とした。


土壌・森林汚染への対策徹底を

結田康一氏・元農業環境技術研究所

◆土付きの農産物は洗って出荷

nous1108180702.jpg 結田氏はチェルノブイリ、JCO、平常時の土壌の放射能汚染の調査などから、農作物や家畜などへの放射性セシウムの汚染について予測した。氏が注意を促すのは土壌汚染への対応だ。
 チェルノブイリ事故の影響を大きく受けたドイツ・ミュンヘンの森林地帯や日本国内の土壌の放射性セシウムの平常時調査などによると、セシウムは土壌の表層に溜まる性質があり、土壌表面への付着から20年以上経っても土中5cm以下には沈殿しない。そこで問題となるのがネギ、ニンジン、ジャガイモなど地中に埋まっている農作物だ。農作物の検査は食べられる状態で検査しているが、これらの農作物は土が付いた状態で出荷されることが多い。「農作物自体は検査で安全が確認されたとしても、高濃度の汚染土壌が消費者の家庭に持ち込まれれば消費者の信頼を失う可能性がある。集荷場などでは農産物をよく洗うなどの対策をすべきだ」という。
 土壌汚染は放牧牛にも大きな影響を与える。牛は牧草15cmあたり約100gの土を同時に食べており、仮に牧草から放射性セシウムが検出されなくても、土壌が汚染されていれば牛も被ばくする。単純に福島県中通のある3市町の土壌中放射能濃度から試算すると、土壌1cmあたり413Bqとなり、牧草基準値の300Bqを超える値に高まる。
 また放射性セシウムは落ち葉や腐植層に堆積しやすく、森林は高濃度有機物の集積場となりやすい。そのためキノコ類や材木などに注意が必要であり、「それらを採取するための森や山への立ち入り入り制限も必要になるかもしれない」と注意を促す。


◆内部被ばくの危険度高いヨウ素129を注視

 現在は放射性セシウムの検査が主となっているが、これからより注意する必要があるのは、「核燃料棒の処理などの際に放出される放射性ヨウ素129」だ。
 放射性ヨウ素131は半減期が8日と短く事故直後には多く観測されたが、現在はほとんど観測されていない。しかしヨウ素129は半減期が1600万年と非常に長寿であり、しかもヨウ素は人間に必要な物質であり欠乏症の人も多いため、「人間の吸収力が強くセシウムよりも数倍内部被ばくの危険性が高い。原子炉の廃炉などの際には注意が必要だ」と危険性を述べた。

(2011.08.18)