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カイガラムシの特効薬「スプラサイド」の権利取得 クミ化で系統一元流通へ  JA全農

 JA全農とクミアイ化学工業は9月1日、東京・JAビルで記者会見を行い、園芸殺虫剤「スプラサイド」の権利を全農がシンジェンタから取得し、来年10月からクミアイ化学による製品販売開始をすることを明らかにした。

◆カンキツ・茶生産には不可欠な剤

会見後、握手する山崎常務(左)と石原社長 「スプラサイド」はDMTP(メチダチオン)を主成分とする殺虫剤で、カンキツ・リンゴ・茶などの栽培農家を中心に、各種カイガラムシ類やロウムシ類に対する特効薬として、1967年に日本で農薬登録されて以来約44年間も使われてきているロングセラー殺虫剤だ。
 しかしこの剤の製造販売を行ってきたシンジェンタクロッププロテクションAG(本社・スイス)が、全世界における販売数量が減少したことから、「DMPTを含む製品の製造販売中止を決定し、日本においても2011年末をもって本剤のシンジェンタ社としての販売を中止する」(シンジェンタ ジャパン社)ことにした。
 しかし、この剤は日本においては特に果樹・茶生産場面でのカイガラムシに対する特効薬として定着しており、農家にとって不可欠な薬剤となっていることから、全農がシンジェンタと流通継続の交渉を進めてきたが、上記のように全世界的に製造販売の中止が決定された。
 そこで全農はシンジェンタ ジャパン社の協力を得て、国内生産者の「営農を守るため」(山崎周二全農常務理事)に、日本における本剤の登録・製造・販売の権利を譲り受けることにした。


◆クミアイ化学が系統一元で販売

 具体的には、シンジェンタ ジャパン社からの製品販売終了(今年12月)後の2012年1月に全農への権利移管が行われ、10月からクミアイ化学工業による製品販売が開始される。
 同剤には「スプラサイド乳剤40」(主にカンキツ、茶に使用)と「スプラサイド水和剤」(主にリンゴ、カキ、ウメ、ナシ、オウトウに使用)の2剤があり、両剤をあわせた市場規模は約21億円。現在は系統と商系の二元販売で系統のシェアは約35%だが、来年10月からはクミ化による系統一元流通ということになる。
 クミアイ化学は、同剤が農薬登録された1967年から91年まで同剤を製造販売していた実績があることから「その経験やノウハウを活かして、現在の市場規模を確保していきたい」(石原英助社長)と考えている。
 カイガラムシ類は農業害虫だけでも日本に250種類いるといわれており、防除が難しい害虫だが、この剤は殺虫スペクトルが広いことと、2齢幼虫の初期まで効くなど生産者にとっての使い勝手が良いこと、歴史が長い剤なので低コストで提供されていることなどから、多くの園芸農家に支持されてきているといえる。
 最近は「樹木のカイガラムシ類が問題になってきており、そこにも広がることも期待できる」(上園孝雄全農肥料農薬部長)など、園芸分野が弱いといわれている全農にとって楽しみな剤だといえる。
 なお、この剤の権利取得には、この3月に設立された「農薬開発積立金」が初めて使われることになる。

(写真)
会見後、握手する山崎常務(左)と石原社長


※山崎常務の「崎」の字は正式には旧字体です。

(2011.09.02)