農政・農協ニュース

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除染は表土の削り取り ヒマワリなど植物の効果小さく

 農林水産省は、放射性物質で汚染された農地土壌の除染技術について、これまでの研究成果をもとに技術的な考え方を整理、9月14日に公表した。ヒマワリなど植物による吸収効果が期待されたが、その効果は小さいことが明らかになった。

 農水省は5月中旬から8月下旬まで福島県の飯舘村、川俣町で(1)表土の削り取り、(2)水による土壌撹拌と除去、(3)ヒマワリなど高吸収植物による除染、(4)表土と深い層を入れ換える反転耕による放射性物質の埋め込みなどの実証試験を行ってきた。
 その試験結果に基づき、放射性セシウムの濃度が5000bq/kg以上の農地について効果的な除染技術の考え方をまとめた。
 セシウム濃度が2.5万bq/kg以上と高濃度のほ場は、5cm以上の厚さで表土を削り取ることが適当だとした。その際、土壌が飛散しないように土を固める固化剤などの使用も必要だとしている。
 実証試験では表土の削り取りによって濃度を75%82%低減できた。2.5万bq/kg以上のほ場は福島県内に農水省推計で2800haあり、このうち水田が2300haを占める。
 セシウム濃度が1万2.5万bq/kgのほ場でも表土の削り取りが適当だとした。この濃度レベルのほ場は福島県内に推計3000haあり、このうち水田が2200haを占める。
 また、50001万bq/kgのほ場では表土削り取りのほか、反転耕によって深く埋め込むことも有効だという。
 今回の実証試験で放射性セシウムは耕起していない農地土壌の表面か2.5cmの深さに95%が存在することが分かった。45cmの反転耕によって表土は2540cmの土中に移動することも分かった。この方法では最表層の放射性セシウム濃度は明らかに低下した。ただ、反転深度が深いほど地表面の空間線量率は低下するが、水田の場合は耕盤を壊す恐れがあるため、水田での反転耕は深さ30cmが適当だとした。また、今後は地下水汚染リスクの評価法の確立も課題だとしている。
 そのほか濃度が低レベルのほ場では、水による撹拌(代かき)をした後、濁水から土壌を分離させ廃棄する方法も有効だとした。
 一方、ヒマワリを栽培することによって放射性セシウムを吸収させる実験では、結果から約2000分の1程度しか吸収されないことが推察された。このため除染に極めて長い時間がかかり実用的ではないと結論づけた。
 また、削り取りなどで廃棄する土の除染も課題だが、これまでの結果ではセシウムと粘土の吸着力は極めて強く、土壌からセシウムを分離、除去することはかなり難しいことが判明した。そのため廃棄された土は厚さ15cmのコンクリート製の容器に入れて一時的に保管するしかないという。
 福島県内の農地で放射性セシウムの濃度が5000bq/kg以上の農地は8300haある。かりにこのすべての農地から表土45cmを削り取った場合、その総量は300350万tと膨大になる。その保管場所とも課題となるほか、除染のコスト負担も問題となる。実際に除染する場合は汚染された雑草の処理などもしなければならないなど、課題は多い。

(2011.09.15)