農政・農協ニュース

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女性のパワーアップに向かって女性役員が都内で研修会

 JA全中とJA全国女性組織協議会は「全国JA女性役員等研修会」を12月7、8日、東京の国立オリンピック記念青少年総合センターで開いた。
 JAの経営者として今後より一層能力を発揮していくことをめざす研修会には、全国から約220人の女性役員が参加した。

あいさつするJA全国女性協の瀬良会長 2日間の日程のなかでは4者による講演と「女性パワーでJAを活性化させるには!」をテーマにしたグループ別交流会を行った。
 開会のあいさつでJA全国女性協の瀬良静香会長は今年の女性役員数の調査結果にふれ、「女性役員数は着実に増加したといえるが、女性役員のいないJAが321あり、JA間の格差が広がっている。女性役員だけではなく、女性の正組合員や女性の総代を一人でも多く増やし、地域の声を事業や活動に結びつけることが停滞するJAを変えていくことにつながる」と話し、TPPについても「地域の人たちにいかにデメリットが多いか、日本が被る不利益が多いかをしっかり伝えていきたい」と述べた。

◆新しい視点で問題提起を

 1日目は昭和女子大学学長の坂東眞理子氏が講演し、そのなかで「男性と同じ事ができると強調するよりも、これまで男性が見落としていた新しい視点から問題提起できることが女性たちに一番期待されること」と強調。自分で情報収集して判断し、責任をとる力をつけることとあわせて、他者とプラスに関わる力をもつことが大事などとアドバイスした。
全国から220人の女性役員が集まった 2日目は女性役員を代表してJAいぶすき(鹿児島県)の理事・谷村久恵さんが「女性理事ではなく理事として、やれること、やるべきこと」をテーマに、理事となって6年目を迎えた自らの経験を語り、同じ立場の仲間たちにメッセージを送ったほか、中小企業診断士の三橋貴明氏が「シンプルにすると見えてくるお金のながれ」をテーマに「お金の回り方」についての仕組みをわかりやすく解説、現在の政策の誤りも指摘した(別掲)。
 また、特定非営利活動法人素材広場理事長の横田純子氏が「地域の価値を掘り起こし、人と人をつなぐ地産地消再発見女性の力で人をつなぐ」と題して講演した。

(写真)
上:あいさつするJA全国女性協の瀬良会長
下:全国から220人の女性役員が集まった


◆女性の強みを活かして

JAいぶすき(鹿児島県)理事・谷村久恵さんJAいぶすき(鹿児島県)理事・谷村久恵さん

 女性理事枠の設置を組合長が変わるたびに要望してきたが、あるとき「参与」ならといわれ、参与に。しばらくして「理事になりたい」と家族に相談したが取り合ってもらえず一度はあきらめたが、次の改選で選挙に臨んだ。選挙活動の中では現職理事との軋轢もあったが、「湖面に石を投げると小さな輪がだんだん大きくなっていくのと同じように、閉鎖的な考えの中でも少しずつ問題意識が広がれば」との思いで戦った。正組合員になって応援してくれた女性部員の仲間も励みとなった。
 「他になる人がいなくて頼まれたから仕方なく理事になった」という声を聞いたことがあるが、これから枠が設けられれば、必ずこういう状況が増える。畜産部会や生産部会の女性は自分の家の経営に敏感で、「JAはどうなっているのか?」と関心も高い。部会の女性たちにも「理事にもなれるから女性部に入らない?」と働きかけることも必要。
 そして、1人で主張するのと複数で主張するのとでは重みが違う。女性理事同士が意志を統一し同じ方向を向いてがんばっていくことが大切。男女共同参画といっても男性でなければできないこと、女性でなければできないことがある。そこをかみ合わせていいJAにしていってほしい。


◆逆進するデフレ政策

中小企業診断士・三橋貴明氏中小企業診断士・三橋貴明氏

 日本は「国家経済」と家計簿やJA、企業経営といった「個人経済」を同じものと考えているがこれは間違い。
 デフレになると国民は貯蓄を増やし消費を抑える。また政府も緊縮財政と増税に向かおうとする。しかし、国が国民と同じ行動をするのではさらに状況を悪化させる。貯まった貯蓄を誰かが借りなくてはお金の流れが止まり、デフレが一層進行して物価が下落、GDPは下がり国は貧しくなる。この悪循環が今の日本だ。
 これを解決するには国が国債を発行し、貯蓄を消費に回すしかない。だから今こそ国債を発行し、それを大震災の復興に充てるべきだ。震災後に「復興増税」といって増税しようとしている国は歴史上、日本だけ。
 国の政策が変わってお金が回るようになれば、国民の年収が上がり、消費や投資が増えて失業率が減り、円安に向かって財政も健全化する。そうすれば現在日本が抱えている問題のほとんどを解決できるだろう。
 もう一つの間違った政策は「TPP」参加だ。影響は政府調達や知的財産権、金融などさまざまな分野に及ぶ。度肝を抜かれたのはアメリカには手術の術式にも特許があるということ。命にかかわるビジネスまで金の利益を優先するのがアメリカ。アメリカと結んだNAFTAによってカナダの農協が打撃を受けたように農協への影響も心配している。
 あらゆる分野を犠牲にしてまでTPPをやる必要があるのか。なんとしてでもTPPを止めないと日本の国が潰れてしまう。

(2011.12.12)