農政・農協ニュース

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気象変動で発生状況が変化―臨機応変な対応が必要に―

 地球温暖化に伴う気候の変動により病害虫雑草の発生状況も変化している。ここのところ、発生する病害虫が毎年変化する傾向があるため決まった防除暦等では対応しきれないことも多く、臨機対応が中心となることから指導側の苦労も増大しているようだ。平成23年も、昨年とはうって変わった気候となり、病害虫の発生状況も昨年とは異なっていた。そこで、公表されている平成23年の病害虫発生予察情報をもとに、最近の問題病害虫の発生状況と防除の現状を取材した。

最近問題となっている病害虫雑草と
防除対策の現状


【水稲】
カメムシの発生が多かった23年

 病害では、平成23年は梅雨時期の降雨と日照時間が少なかったことから、イネいもち病の感染好適日が確認され、6道県から述べ8件の注意報が発表され、防除が呼びかけられた。梅雨明け後は、台風や大雨の影響もあり病害の発生が懸念されたが、発生は多くなく、注意報の発表も少なかった。ただし、8月に入り九州においては葉いもちの発生が多かったことから、穂いもちの注意報が4県から出されたが、大きな被害はなかった。
 害虫では、セジロウンカ、トビイロウンカともに例年に比べて飛来が少なく、その後の発生量も少なかった。一方で、斑点米カメムシ類は、7月から東北、関東、北陸、東海、近畿及び中国で発生が多く、8月の中旬までに計21県から延べ24件の注意報、1件の警報が発表され、防除が呼びかけられた。近年発生が多かったフタオビコヤガについては、2件の注意報が発令されただけだった。


◆育苗箱処理剤選択のポイント

 このような状況の中、近年の防除は、育苗箱処理剤によって初期に防除し、必要に応じて斑点米カメムシ防除を行うという体系が主流となっている。育苗箱処理剤による防除対象病害虫は、いもち病、紋枯病、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ウンカ類、ニカメイチュウ、フタオビコヤガが主なものであり、これらを防除できる有効成分を組み合わせた育苗箱処理剤が数多く販売されている。その中から、病害虫の発生に合わせて使用する薬剤が選ばれているが、選択にあたっては、次のような点がポイントになっている。
 まず紋枯病だが、この病害は発生に地域性があり、発生の有無によって要否が異なる。防除が必要とされる地域では、紋枯病防除成分を含む薬剤が選ばれているが、有効成分数を増やしたくないとの考えもあってか、1成分でいもち病と紋枯病を同時防除できるオリサストロビン剤が多く利用されている。
 ウンカ類ではネオニコチノイド剤の効果が低い個体の飛来が確認されている地域もあり、そのような地域ではネオニコチノイド剤以外の成分のものが選択されている。また、北陸の一部など、フィプロニルの効果が低いイネドロオイムシが発生しており、そのような地域ではネオニコチノイド剤などフィプロニル以外の有効成分を持つ薬剤が選ばれている。
 一方、ニカメイチュウやフタオビコヤガ(イネアオムシ)などチョウ目害虫の発生も目立つことが多くなっており、そのような地域では、チョウ目に対し優れた効果を示すクロラントラニリプロールを含む薬剤が数多く販売され、数量を伸ばしている。
 斑点米カメムシでは、発生が少量で小型カメムシが優先している地域であれば、ジノテフランやチアメトキサムを含む育苗箱処理剤で防除が可能のようだが、実際には大型カメムシも混じる上、発生時期も出穂を前後して異なってくるため、無人ヘリ防除も含めた地上散布剤による適期防除が重要視されている。


◆地域の発生状況に適した除草剤の検討を

 雑草では、スルホニルウレア抵抗性雑草が、徐々に発生地域を拡大しているようであるが、抵抗性雑草に高い効果を示すフリルトリオンなど新規除草剤やブロモブチド、ベンゾビシクロンといった抵抗性雑草に効果の高い成分を含む除草剤が数多く登場し、十分に除草できている。ただ、近年の温暖化傾向によってか、ヒエやホタルイなど雑草の発生時期が早まる傾向にあり、散布適期を逃し、とりこぼしが発生する事例も多くなってきている。一度、地域毎に雑草の発生状況をよく確認し、適した散布時期や除草剤の検討が必要となっているようだ。


【果樹】
◆降雨で発生が多くなるべと病などが要注意

 ブドウべと病が、多雨の影響もあってか5月下旬以降、関東から九州にかけて発生が多く、7月中旬までに6県から注意報が出されたが、大きな被害はなかった。しかし、雨の多い傾向が続いているので、べと病など降雨で発生が多くなる病害には今後も注意が必要なようだ。
 害虫では、例年カメムシの発生が問題となるが9月の中旬に近畿で発生が多くなり1県から注意報が出された以外は発生が少なかった。果樹は、防除暦による防除がしっかりとしていることもあってか、近年特に問題となる病害虫は報告されていない。


【野菜・花き】
◆耐性菌は発生しているイチゴ炭疽病に注意

 イチゴ炭疽病が、6月中旬以降、関東以西の地域で発生が多くなり、7県から注意報が発表された。この病気には、有効薬剤の耐性菌が発生しており、薬剤選択の際には注意が必要で、地域指導機関の情報などに従って防除にあたってほしい。
 害虫では、ハスモンヨトウが7月より関東から九州にかけて発生が多くなり、9月上旬以降3県から注意報が発表された。本害虫には、クロラントラニリプロールなど優れた新規有効成分が登場し、高い効果を発揮しているようだ。これら以外で、特に問題となる病害虫は報告されていない。

(2012.01.31)