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JA全青協会長牟田天平(むた・たかひら)氏 インタビュー  「農業が国を支えている 自信と誇りを持ってほしい」 

 全国農協青年組織協議会(JA全青協)は平成23年5月の総会で、新たな3カ年の中期活動計画を決めた。計画の最大の柱である「次世代農政運動の確立」として全県域でのポリシーブック作成に取り組んだが、23年はそのほかにも東日本大震災での支援活動や、TPP(環太平洋連携協定)の反対運動などでJA全青協の活動が注目された1年だった。牟田会長に23年度の活動を振り返るとともに、「日本農業の未来を拓くため」の提言を聞いた。

JA全青協会長・牟田天平氏 23年度はほぼイメージ通りの活動ができたし、特に被災地への支援活動やTPP反対運動など、本来の計画外の活動でも全国の盟友が協力してくれました。
 復興支援での義援金や被災地でのガレキ撤去、またTPP反対での国会前の座り込みなどに参加するうちに、盟友1人ひとりが震災やTPPは自分たち自身の問題だと考え方を変えていったように感じました。こういう活動がきっかけで、協同の精神や絆を大切にする気持ちが大きくなっていったのではないでしょうか。
 私自身も座り込みはほぼ毎日、トータルで10日間ほど参加しましたが、盟友が全国から集まってきてがんばっているのを見て、改めて青年部のよさを感じました。また、反対運動をきっかけに、JAグループ内だけでなく、一般マスコミにもわれわれの活動が大きく取り上げられるようになり、JA青年組織の存在感が高まったと思います。評価されるために活動しているわけではありませんが、世間一般にJA青年組織の存在を知ってもらうという意味では大きな効果がありました。

◆ポリシーブックで新たな人材発掘

 今年度から取り組んだ「ポリシーブック」は、初めてだったこともあり、なかなか思い通りには進みませんでしたが、なんとか3月末には全県域で完成する予定です。
 ポリシーブックを作ってみて感じたのは、個人にせよ組織にせよ、できる潜在能力があるのにやってこなかった活動がこんなにも多かったのか、という驚きです。
 これまで青年組織の活動は、一部の役員だけで話し合って決めるとか、事務局のJAや中央会に任せっきりというのが多かったのではないでしょうか。だから、少数派の意見はなかなか反映されませんでしたし、具体的な対策もなかなか出ませんでした。しかしポリシーブックは、どんな小さな意見でもすべて議論のテーブルに乗せて作り上げていくものです。できあがりの良し悪しは現時点ではあまり問わず、とにかく全ての盟友から意見を聞くというのが当面の目標ですから、それによって、どこに相談していいかわからなかったことや、問題解決のヒントなどが共有でき、実行に移せるものはすぐに動くという体制ができあがりました。
 1つの大きな収穫は、ポリシーブックが新たな人材発掘にも役立ったことです。というのは、自由闊達な青年組織と言えどもやはりタテ社会的な部分もあって、脱サラした人や、若い新規就農者などは、なかなか意見を言えない雰囲気がありました。しかし、すべての盟友から意見を聞くというかたちにしたことで、これまで口を閉ざしていたり、発言する機会のなかった盟友が、ものすごいいいアイディアを出したり、リーダーシップを発揮したりして非常に驚かされました。これまで埋もれていた、そういう人材を表に登場させたのも大きな成果です。
 中身で言えば、資材をもっと安くしてほしいとか、担い手支援をキメ細かくやってほしいなど、全国共通の問題がわかった一方で、地域固有の問題を全国で共有できたのも大きな収穫です。例えば、都市農業者の相続税や、中山間地の鳥獣害被害など、これまで話には聞いていたが具体的にはよくわからなかったよその地域の問題が明文化され、互いに悩みを知るきっかけになりました。

◆地方議会や首長からのアプローチ増える

 ポリシーブックの当初の目標は、JAグループや行政に対して不平不満を言うだけではなく、問題を明確化して、それに対する青年組織の活動方針を決め、政策決定までのプロセスをしっかりわれわれの手で作りあげたいという思いでした。実は、ポリシーブックを作っているということを聞いた地方議会や首長などから、「是非見せてほしい」、「政策立案の参考にしたい」などのアプローチがすでにいくつかあり、本来目標としていた成果が早くも出てきたと手応えを感じています。
 これだけメリットのあるポリシーブックですから、今年1年で終わらせるのではなく、自分らの活動がどう変わったか、何が変わっていないのかを反省するためにも、ぜひ次年度以降も継続してつくってほしいと思います。
 最後に、全国の盟友へのメッセージですが、今、農業にとって何かと厳しいことが言われていますが、われわれ農業者がこの国の食と命を支えているんだ、という強い誇りと自信をもって欲しいと思います。農業はどの国にもあり、国家の礎を築いています。逆に言えば、農業がなければ国は成り立ちません。世界的に食料争奪戦が起こっている現状を見れば、極めて高品質で高収量を実現する日本の高い農業技術が、必ず世界的に注目される時代がやって来ます。その未来のためにも、今こそ、大規模の生産法人も、小規模の兼業農家もみんなが支えあい助け合って、しっかりした農業基盤を確立してほしいと思います。
 地域を守り、日本農業の明るい未来を拓くため、ともにがんばりましょう。


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