農政・農協ニュース

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地産地消メニューを社食で 地元企業との新企画  JA北九

 JA北九(福岡県)は新たな地産地消の取り組みとして、地元企業と連携した試みをスタートした。
 その第1弾として行ったのが社員食堂での地場産食材を使ったメニューの提供だ。

◆農業守る街づくり

地産地消プロジェクト第1弾の「白菜たっぷりチャンポン」を味わうTOTOの職員たち TOTO(株)小倉第一工場の社員食堂に1月31日、地元で獲れたハクサイをふんだんに使った「白菜たっぷりチャンポン」が1日限定メニューとして登場した。食堂では毎日1000食を提供しているが、この日用意した約300食は完売。好評な売れ行きだった。
 地元でハクサイが獲れることや、今が旬だということを知らない人が意外と多く、地元農業や農産物を再認識してもらうよい機会になったとして、JAとしても手応えは上々だ。「『今後は地元のものを注意して買ったり食べたりしたい』という声もあって意識改革の糸口になったと思います」と地産地消対策課の池尻正昭課長は話す。
地場産のハクサイをたっぷり使用した 北九州市は遊休農地の増加や高齢化による農業者の減少が課題となっている。こういった課題に対し、地元企業と連携することで地元の農業や農地を守るシステムを構築していきたいとの思いが企業側と一致したことでこの企画は実現した。池尻課長は「企業と連携し、農業と産業をうまく両立させた街づくりができれば」と期待する。
 2月22日には第2弾として「若松キャベツ」を使った「回鍋肉」がメニューとなった。地産地消メニューの提供には企業側も協力に積極的で、月1〜2回の頻度で続けていく予定だ。今後はブースを設けて農産物の販売もしていきたいと考えている。

(写真)
上:地産地消プロジェクト第1弾の「白菜たっぷりチャンポン」を味わうTOTOの職員たち
下:地場産のハクサイをたっぷり使用した


◆情報発信を強化

 地産地消対策課が誕生したのは3年前のJA合併時。3JAが合併し100万人の胃袋を抱える大型JAとなったことで、新たな農産物の販売ルートの開拓として「地産地消」に重点を置いた。それには地元農業や農産物に対する消費者側の理解が必要だとして、同課は消費者への情報発信に力を入れている。
 これまで池尻課長を先頭に管内8店舗ある直売所の販売システムの統一や、学校給食への供給体制の整備、客に収穫体験してもらった食材をホテルで食べてもらう企画や、ホテルのシェフに米作りを体験してもらい、その米をホテルで提供するといったホテルとの連携企画などで地産地消の推進に取り組んできた。こういった取り組みによって、池尻課長は農水省が地産地消の取り組みのリーダーを選定する「地産地消の仕事人」に昨年選ばれた。


◆企業菜園も構想中

 一方、この社員食堂での取り組みをきっかけに、社員が週末に農業をしてもらえるような仕組みをつくりたいとして、4月からはTOTOが企業菜園を開園する予定だ。
 農地はJAが昨年設立した(株)JA北九絆ファームを介して確保した遊休農地を使い、JAが栽培指導などを行っていく。米と野菜の2コースで合わせて50家族の参加を予定しているという。
 池尻課長は「市内には大手企業も多いので、それらと連携して共生できれば土地も荒れず農業を守っていけると思います。現役世代に農業の楽しさや大切さを伝えていきたい」と抱負を語り、いずれは定年退職後の新規就農者が地域農業を守っていけるようなモデルができればと考えている。

(2012.02.23)