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有機質資源を簡単に無機化 農研機構が技術開発 共同開発の相手を募集中

 食べ残し食品や畜産廃棄物などの有機質資源から、短期間で無機肥料成分を回収する技術を開発したと農研機構の野菜茶業研究所が2月29日発表した。

 微生物の力で簡単に無機肥料を製造することができるし、製造時のエネルギーは不必要という新技術だ。
 微生物を定着させた多孔質の担体(微生物担体)に有機物を加え、水で洗うことにより無機の肥料成分を含む水溶液を回収できる。
 添加した有機物は担体内で分解を受け、添加を毎日繰り返すことで無機成分を毎日回収できるようになる。このため肥料製造に必要な電気などのエネルギーを使わずにすむ。
 製造時に大量の化石エネルギーが必要な化学合成の無機肥料(化学肥料)と比べて省エネ効果は大きい。畜産廃棄物など保管に場所を取る有機質資源を速効性の無機肥料に変換すれば保管コストを低減でき、輸出も容易な形態となる。
 無機肥料は速効性に優れているが、天然の産出はわずかのため持続可能な技術への転換が求められるが、実用的技術はなかった。
 新技術は、容器に多孔質担体(軽石・ウレタンなどの鉱物や樹脂)を充填した後、無機化反応を行う微生物群を添加して担体に定着させた。
 微生物群は有機物を分解する際にアンモニア化成と硝酸化成を同時並行で進める。この担体に有機物(鰹煮汁やナタネ油粕などの液体や固形物)を加え、翌日に水で洗うことにより無機肥料が得られる。
 現在、製品開発を共同で進める企業を募集している。

 《担体》とは、吸着や触媒活性を示し、他の物質を固定する土台となる物質のこと。アルミナやシリカがよく用いられる。

(2012.03.05)