農政・農協ニュース

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コシヒカリより30%多収の「あきだわら」など  農研機構の新品種セミナー

 農研機構は3月6日、東京・有楽町の国際フォーラムで開催されたJAグループ国産農畜産物商談会に合わせて、同所で第5回産学官連携交流セミナーを開いた。各研究所が開発したイチオシの新品種をアピールしたが、その中から水稲と大豆の新品種を紹介する。

◆加工・業務用で注目高まる多収米

 作物研究所は良食味な多収品種として、「あきだわら」と加工用もち米の「もちだわら」などを紹介した。
 「あきだわら」は、食味をよくするコシヒカリ由来の「イクヒカリ」に、ひとつの穂に多くのもみ数をつけるアケノホシ由来の「ミレニシキ」をかけあわせて作られた品種だ。食味はコシヒカリとほぼ同じだが、コシヒカリが標準栽培で10aあたり540kg程度の収量であるのに対し、多肥栽培によって10aあたり720kgほどの収穫が可能となる。また、短稈で倒伏に強く、成熟期がコシヒカリより10日遅いため、収穫期が重ならない。平成21年に品種登録を取得し、22年には福島、栃木で産地品種銘柄指定を受けて約300haで作付。23年には、茨城、新潟でも産地品種銘柄指定を得た。ファミリーレストランなど外食産業を中心に、業務用として注目されつつある。
 「もちだわら」は、10aあたり800kg以上という多収のもち米品種だ。耐倒伏性が極めて強く、また、いもち病、白葉枯病、縞葉枯病など各種病害に対する抵抗性を持っている。米菓や加工・業務用もち米としてだけでなく、米粉や飼料用米としての利用も期待される。栽培適地は関東以西。

倒伏に強いあきだわら(左)、右はコシヒカリ

(写真)
倒伏に強いあきだわら(左)、右はコシヒカリ

◆九州初の黒大豆「クロダマル」

 九州沖縄農業研究センターはさまざまな用途別の大豆新品種を紹介した。
 九州初の黒大豆「クロダマル」は、菓子加工や煮豆などに適した大粒の品種だ。表面にツヤあるため外観品質がよく、見た目で従来の黒大豆と差別化できる。また、ほかの黒大豆と比べて酸味が低く甘みが強いため、煮豆、煎り豆、甘納豆などの加工に最適だ。アントシアニンの含有量も多く、機能性成分も高い。20年度に作付1.5haほどで試作が始まったが、22年度には福岡、大分を中心に36haが作付され、出荷量は50tほどと栽培を拡大している。
 豆腐用品種として紹介されたのは「フクミノリ」だ。九州、東海地区で9割ほどの作付シェアがあり、全国作付シェアでも2割以上を超えて10年連続1位となっている「フクユタカ」の収量、種子の外観品質、成熟期など特性はすべてほぼ同等だが、同品種の弱点だったハスモンヨトウへの抵抗性を高めている。農薬散布が少なくて済み、コスト低減、省力化に貢献する新品種として栽培の拡大が期待される。
 そのほか、小粒納豆用「すずかれん」、青大豆「キヨミドリ」などを紹介した。

煮豆など加工品・特産品づくりに最適なクロダマル

(写真)
煮豆など加工品・特産品づくりに最適なクロダマル

(2012.03.08)