農政・農協ニュース

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解散から再結成 畑づくりで生まれ変わった女性部支部活動  JA高岡

 一度は解散に追い込まれたものの、活発な組織に生まれ変わった女性部がある。それがJA高岡(富山県)の女性部戸出支部だ。
 再結成から1年―、以前より元気でいきいき活動する同支部。同組織再生に至るまでを取材した。

◆女性組織は地域に必要

 女性部が解散したのは昨年2月。高齢化が進んだことで会員の加入が減り、運営できなくなったとして地元自治体の婦人会が解散に追い込まれたことが要因だった。戸出支部の女性部メンバーは婦人会と掛け持ちしている人がほとんどで、婦人会の解散を機に同支部の女性部解散も決まってしまった。
 当時女性部の担当をしていた元JA職員の山本美智子さんはこの事態に、一度なくなった組織を復活させることは至難の業であるとして「絶対なくしたらあかん! すぐに立て直さなければ」と、戸出支店の水戸均支店長と女性部再建へと動いた。水戸支店長は「農業の女性は会社勤めの女性と違い、人とのつながりが希薄になりがち。女性部は地域の役割として必要」と女性組織を重要視していた。
 元部員の中には「交流の場がなくなってしまった」と解散を惜しむ声や「女性部を残したい!」という人もおり、それらの人に女性部再建の発起人になってもらうよう山本さんと水戸支店長とで協力を仰いだ。その後、発起人を招集して再結成のための準備会を開き、どういう組織にしていくかについて話し合いをすすめた。
 「やりたいことをやって楽しもう」をスタンスに、あえて代表者は設けず、各地区に班長的存在となる「理事」8人を横並びに置いた。理事の任期は2年。行事計画の立案などと各部員への連絡を担う。こういった運営体制としたのは役員への負担を少しでも軽くするためだ。
 会員を募集すると60人ほどが集まり、解散から1カ月後の昨年3月、新たな女性部活動がスタートした。
 山本さんも現在は理事の一人。「ぜったいに女性部をなくしてはだめだ」というJAとしての思いと、「負担は少なく楽しみたい」という女性部員の気持ちもわかる立場の存在であることが、女性部の立て直しが叶った理由のひとつだろう。


◆本部中心から地元中心に

 新しい女性部活動は支部内で立てた計画にもとづいた地元中心の活動になったことで、以前の縦型組織から横並びの組織に。JA合併後、どうしても本部での活動が中心となり、「地元での行事が少なくて寂しい」という部員からの声があったことをふまえた。
 現在活動の中心は畑作りだ。農地はJA役員の畑を一部借り、畑の持ち主である役員や営農指導員の指導を受けながら土作りや栽培方法をともに学び、野菜づくりをしている。そして直売所への出荷や、漬け物加工を楽しむなかでメンバー同士の交流が生まれている。
 「農村部なので家庭菜園に興味を持っている人も多く、そういった人も部員になってくれています」と新たなメンバーの加入にもつながっている。今後は仕事を退職した60代の奥さんたちがメンバーに入ってきてくれることを期待している。


◆特産品を生み出したい

漬け物講習会のようす 山本さんは「富山県は米どころとして有名ですが、女性部の畑を継続してその中から1品でも特産品となるものが作れたらと思っています。直売所に女性部として『なでしこ戸出』という名前でバーコード登録を取得したので、これからオリジナルの加工品も作り出していきたいです。団体の力で楽しく、将来的には収益にもつながるような活動になれば」と期待をふくらませる。
 水戸支店長は「以前の女性部活動と比べて非常に積極的です。前は組織の中の歯車のような存在で部員に“やらされている意識”があったようでしたが、今は主体的にやろうという意欲があって、『次はこれがしたい』という声も活発に聞かれます」と話す。
 「『下』が活発になってそれが『上』にも上がっていく」ことが組織活動の理想だと考えている。
 女性部の畑づくりをもっと本格的な活動としていくためには、畝作りなどどうしても力仕事の点で支援する必要があることから、「今後はそれをサポートできるような組織をつくっていかなければと思っています」と課題も話した。


(写真)漬け物講習会のようす

(2012.03.09)