農政・農協ニュース

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農作業事故に歯止めを 産官学が連携し対策強化  JAはだのでシンポジウム

 JAはだの、東京農業大学総合研究所、JA神奈川県中央会の3団体は3月19日、JAはだの本所で「農作業事故防止対策シンポジウム」を共催した。農作業に対する安全意識を共有しようと、生産者をはじめ国や県、県下JAの役職員ら100人以上が参加した。

◆「後継者不足による不安」も事故原因

nous1203290611.jpg 農作業中の死亡事故はここ40年間ほど、毎年400件ほどと横ばい傾向が続いている。しかし、就農人口は毎年減少しているため、人口に占める死亡事故の割合は年々上昇している。シンポジウムでは、農作業事故の原因分析や農機の安全管理技術、事故補償の必要性などについて話し合った。
 基調講演は、東農大客員教授で農学博士の三廻部眞己氏が「農作業事故は なぜ どうして起きるのか」をテーマに行った。
 三廻部氏は事故やその危険性の要因として、炎天下での農作業による熱中症、朝食抜き・疲労、睡眠不足、ストレス・整理整頓などの不備といった「不安全行動」、思いこみ・見間違いなどのヒューマンエラーなどを挙げた。特にヒューマンエラーについては、「後継者不足によって常に心に不安を抱えている、雨模様なので作業を急いだ、路面がぬかるんでいることに注意不足だったなど、事故は常に異なる要因の連鎖で起こる」として、全日空でパイロットのヒューマンエラーをなくすために事故要因を詳しく分類し対策を講じていることを紹介。また、「個人の安全管理は限界がある。地域や集落で取り組むべき」として、組織の代表者は[1]危険有害要因の特定、[2]事故発生の可能性の検討、[3]リスク低減対策、といったリスク評価を厳密に行うべきだとした。その上で、「安全管理は自分の健康管理と同じだと考えてもらいたい。これからの農作業と農業技術はその中に、生産能率だけでなく、“安全”を組み込まなくてはいけない」と強調した。

(写真)
農作業事故防止を呼び掛ける三廻部氏

◆安全管理は地域・集落全体で取り組む

 現場での取り組みを紹介したのは、JAグループ神奈川とJAはだの。
 神奈川県では、平成12年から21年までの10年間で毎年平均3・7人の死亡事故が起きている。これを根絶させるための対策として、営農指導員、TAC、渉外担当、部会担当者など現場の担当者から収集し、研修会や機関紙への掲載などでそれを組合員へフィードバックしている。
 JAはだのでは春と秋で年2回の農作業安全運動を実施しているほか、農薬保管管理コンクールや農作業安全標語を募集し、組合員を巻き込んだ安全運動を展開している。
 農水省の担当官からは、乗用型トラクターの片ブレーキ防止装置や、コンバインの手こぎ部の緊急即時停止装置など、あらたに開発された農機技術が紹介された。
 シンポジウムに参加した生産者は、「農業経営者にとって安全管理は重要な問題。自分の農作業を見つめ直す良いきっかけになった」と、安全作業への意識が新たになったと気を引き締めていた。

(2012.03.29)