農政・農協ニュース

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飼料用・加工用米「モミロマン」など 13作物15品種を認定  農水省

 農水省は4月23日、平成23年度の「農林認定品種」13作物15品種を発表した。「農林認定品種」は年間で1000件以上が登録される新品種の中で(※)、品質、収量、耐病性などが優良で、将来的に広い地域に普及が見込まれる農産物品種について、その普及拡大を支援しようと、毎年、選定している。今年は13作物15品種が選ばれた(別表)。その中から注目の品種を紹介する。(※種苗法に基づくすべての植物の品種登録数)

◆低アミロースで冷害に強いイネ 「ほっかりん」

「ほっかりん」の草姿と籾・玄米の外観 「ほっかりん」は青森県産業技術センターが育成した品種で、北海道の主要水稲品種「きらら397」を由来にもつ早生品種だ。アミロース含有率が14%と低く、もちもちした食感が特徴の良食米だ。耐冷性が極めて強く、また、いもち病への抵抗性も強いため、栽培適地は東北北部や中山間地域。青森県では奨励品種に準ずる第1種認定品種として採用し、県内で80haの普及を見込んでいる。

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「ほっかりん」の草姿と籾・玄米の外観


◆食用米との識別が簡単 飼料用・米粉麺用米「モミロマン」

玄米の外観品質が著しく悪いため、容易に識別できる「モミロマン」(左)、右は「日本晴」 「モミロマン」は、粗玄米重の非常に高い多収品種で、飼料用や米粉麺用への利用に適している。耐倒伏性が極めて強いため、直播にも適している。最大の特徴は心白、乳白などで玄米品質が非常に悪く、そのまま炊飯しても硬くて粘りが少ない、いわゆる「まずい」コメだという点だ。しかし、見た目ですぐに識別ができ、また食味も悪いため、一般食用米への転用が防げるというメリットがある。玄米収量が多いため飼料用米に適しているが、米粉麺にすると、ぬめりがなく、コシが強く、味もよくなるため、加工用でも期待が持てる。栽培適地は関東以西で、22年は茨城、岐阜、大分、宮崎を中心に全国で2000haの栽培面積があり、今後もさらに増える見込み。

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玄米の外観品質が著しく悪いため、容易に識別できる「モミロマン」(左)、右は「日本晴」

◆コムギ縞委縮病に強い麺用小麦 「きたさちほ」

 「きたさちほ」は耐病性の高い小麦の品種で、特にコムギ縞委縮病への抵抗性は、北海道向けの麺用品種ではもっとも強い。小麦の品質取引項目である容積量が837g/lと大きいのも特徴だ。従来の麺用小麦「きたもえ」と比べると、製粉歩留は69%、原粒たんぱくは10.5%などとほぼ同程度だが、アミロース含有率は21.9%で2.4ポイント低い。ただし、ゆでうどんにした時の色、粘弾性は優れている。北海道では、コムギ縞委縮病の発生地域での普及をめざしており、道内で1000haの普及を見込んでいる。


◆裂皮が少なく外観品質がいい 「ゆめのつる」

 「ゆめのつる」は極大粒の大豆品種で、小袋売りや煮豆加工に最適だ。従来の煮豆用基幹品種である「ユウヅル」は、年を追うごとに裂皮被害が増え品質が低下する上、近年被害が拡大しているダイズシストセンチュウへの抵抗性が弱いという欠点があった。「ゆめのつる」はこれらの欠点を補い、「ユウヅル」の後継品種として期待される。ダイズシストセンチュウへの抵抗性、わい化病、茎疫病ほ場抵抗性など、耐病性が高いのが特徴で、また10aあたりの子実重も「ユウヅル」の344kgに対し372kgと約1割も多収で、列皮粒の発生も少なく外観品質が優れている。北海道でも優良品種に採用しており、普及面積300haを見込んでいる。


◆裏表がなく毎年安定した収量 カンキツ類「津之望」

香りがよく食味もいい「津之望」 「津之望(つののぞみ)」は「清美」と「アンコール」をかけあわせたカンキツの早生品種で、12月中下旬に成熟し、露地栽培も可能だ。「青島温州」と比べると、果汁の酸含量はほぼ同じで、糖度は同じかやや高く、果実重は170g程度でやや大きい。また、隔年結果性が低いため毎年安定した生産量を確保することができるのが特徴だ。全国のほとんどすべてのカンキツ類栽培地域で栽培可能だが、現在、宮崎県を中心に九州で普及が見込まれている。

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香りがよく食味もいい「津之望」


(別表―23年度の農林認定品種)
水稲「ほっかりん」「モミロマン」
小麦「きたさちほ」
大豆「ゆめのつる」
ソバ「レラノカオリ」
サトウキビ「KN00-114」
茶「はるのなごり」「なごみゆたか」
トウガラシ(ピーマン)「みやざき台木3号」
カンキツ「津之望(つののぞみ)」
モモ「つきかがみ」
ブドウ「サンヴェルデ」
シロクローバ「コロボックル」
トウモロコシ「きよら」
ソルガム「涼風(すずかぜ)」

(2012.04.10)