農政・農協ニュース

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8年後には市場規模120兆円に 農水省が「食品産業ビジョン」策定

 農水省は食品産業のあり方や展開方向を明らかにする「食品産業の将来ビジョン」を3月30日発表した。「食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」に基づいて策定した。

 同ビジョンは食品産業の役割や状況変化、目指すべき方向、目標などを示し、2020年までの将来像を掲げた。
 食品関連産業全体の市場規模(国内生産額)は、09年の96兆円から、20年には120兆円に拡大するとの達成目標を打ち出した。
 また同産業は農林漁業とともに成長することが期待されるが、うち6次産業化の市場は10年の1兆円から15年には3兆円、20年には10兆円に拡大するという成長目標を掲げた。
 ビジョンは食品産業の役割については、農林漁業の成長産業化に参画し、1次産業で生み出された価値を消費者までつなぎ、高めることによって、農林漁業とともに発展し、我が国の経済成長を牽引することが期待されるとしている。
 いずれにしても国産の農林水産物の3分の2は食品産業向けであり、最大の需要者として農林漁業者の所得確保に寄与している。
 その産業が、かつて経験したことのない困難な状況に直面しているとビジョンはいう。人口減少・高齢化などにより国内市場は量的に縮小傾向で推移しているのだ。原発事故の影響も大きい。TPP問題もある。
 しかし日本の食品産業は一部で海外展開が加速しているものの大部分は国内市場を基盤にしている。こうした中で困難を打開していくには、従来の生産を起点とした発想ではなく、需要サイドに立った新しい付加価値の提供が重要であるとした。
 そしてビジョンは「消費者」「地域」「グローバル」という3つの起点を組み合わせた戦略の重要性を挙げた。


◆ライフスタイルを起点として

 消費者起点は、事業活動を単なる「物」の供給でなく、幅広いライフスタイルの提案として捉え、商品開発力を強化するものだ。
 例えば、タイムリーに適切な温度帯で食品を供給する効率的なシステムなど、フードチェーン当事者の連携によるビジネスモデルとか、高齢者向け食品や介護食、医食農の連携による商品、在宅者向けサービスの提案などが「消費者のライフスタイルを起点とした付加価値の提供といえる」とした。
 地域起点では、研究機関、地方自治体、消費者団体などとのネットワークを形成するとともに、地域の食材、人材、技術などの資源の活用などを挙げた。
 グローバル起点では、グローバルな観点から企業競争力を高めることが重要とした。


◆ファンドを設立して

 「行政の果たすべき役割」という項目の中には「農林漁業成長産業化ファンド」(仮称)の創設がある。
 食と農林漁業の潜在的な成長力を顕在化させるためには1次産業側の努力で生み出した価値を2・3次産業へ大きく高めながらつなげ、消費者に提供していくことが重要として、官民共同でファンドを設立する。
 1次産業が起点となって2・3次産業との融合を図る新たな事業分野を開拓するためにファンドから資金を提供し、各次産業が対等な立場で資本提携することを促進する、というものだ。

2020年における食品関連産業全体の市場規模
 

(2012.04.10)