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生物多様性の危機を緩和する人工林伐採 遷移初期種の再生に貢献  森林総合研の研究

 人工林の伐採は「遷移初期種」の減少緩和に貢献するという研究を5月28日、独立行政法人森林総合研究所がまとめた。

新植造林地 採草地や若い森林などの開放地が減少。そこに住む鳥類など遷移初期種といわれる生物の減少は、生物多様性の第2の危機と心配されている。
 しかし今回の研究によって、カラマツ人工林の新植造林地や伐採跡地では、ハナバチ、鳥、植物の遷移初期種の種数は採草地や放牧地に匹敵するほど多いことがわかった。
 人工林の適切な管理によって生物多様性の危機が緩和されると期待されている。
 日本の人工林面積は世界第5位、また森林に占める人工林の割合は世界第2位という人工林大国。この資源を活用する林業再生の議論も起こっている。
 おりしも草地環境の減少にともなった遷移初期種の全国的な減少が大きな注目を集めるようになった。
 既存の人工林での林業復活は、新植造林地という開放的な環境を一定規模で持続的に提供することにより遷移初期種の再生に貢献することが期待される。
 一方、より高齢な森林を好む生物も多くいることから、今後は地域全体としていろいろな年齢の森林をバランス良く保つことも必要と考えられる。
 なお今回の調査では、4種類の開放地(放牧地、伝統的な採草地、カラマツ新植造林地、カラマツ人工林伐採跡地)と2種類の森林(50年生程度のカラマツ人工林、老齢天然林)で遷移初期種の比較をしたところ、これら生物の種数は、いずれも森林より開放地で高く、また植物を除き、4種類の開放地はほぼ等しい値を示した。

(写真)
新植造林地

(2012.06.01)