農政・農協ニュース

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【現場に役立つ農薬の基礎知識】第8回 水稲本田の病害防除

 黄金週間が過ぎ、ちょうど普通期の田植えが盛んなころである。気候も温暖となり、梅雨の声が届くころになると、蒸し暑さが加わってうっとうしさが増す季節でもある。
 しかし、それは、水稲本田の病害にとって快適な季節であり、多くの本田に発生する病害が跋扈する時でもある。そして、この時期に発生する病害には、水稲の生育や収量に大きな影響を及ぼす重要なものが多く、この時期の防除をしっかりと組みたてておかなければ、健全なイネを育てるは難しい。
 今回は、この時期にどんな病害が発生し、どんな被害が出るのか、そして、上手な防除の組み立て方とはどんなものなのか取材した。

これからが水稲の病害に快適な季節
しっかりと防除を組み立てよう

水稲本田に発生する病害


◆蒸し蒸しが大好きないもち病の胞子

いもち病(「ずりこみ」症状) 水田に発生する病害で最も大きな被害を発生させるのは、いもち病である。
 糸状菌(かび)が引き起こす病害で、25℃〜28℃の温度を好み、しとしと雨が長時間続くときに多く発生する。これは、稲の表面に付着したいもち病の胞子(病原菌の種みたいなもの)は、水滴があれば発芽して稲に侵入するが、水滴が無ければほとんど発芽しないためである。それに、この病害は、病斑に大量の胞子を作り、それを飛散させて蔓延していくのだが、胞子が飛散するのにも90%以上の高湿度が必要だ。つまり、蒸し蒸しの状態が大好きな病害なのである。
 この性格は、この病害の防除を考えるとき十分に考慮しなければならない点である。

(写真)いもち病(「ずりこみ」症状)


◆いつ発生してもイネに被害を起こす

いもち病(葉いもち(左)と穂いもち) この病害は、稲の生育期間を通じて発生し、その発生する場所によって、「苗いもち」とか、「葉いもち」とか、「穂いもち」などと呼び分けられている。
 被害はどの段階も大きい。苗いもちの場合、初期生育が悪くなって収量が減ったり、葉いもちの伝染源になって病害の蔓延の原因となったりする。
 葉いもちの場合、たくさんの病斑に葉がやられて生育が抑制され、ひどい場合は新しい葉も出すくみ状態となり、いわゆる“ずりこみ”状態となる。この状態になると、もはや収穫も望めなくなる。
 穂いもちの場合、穂首や籾に病斑ができるが、穂首に病斑ができると、首から先の穂に栄養が届かなくなり、籾が入らない白穂になるし、籾に病斑ができると稔実不良となったり、着色米の原因ともなる。
 つまり、いつ発生しても何らかの被害を起こす厄介な病害である。

(写真)いもち病(葉いもち(左)と穂いもち)

 

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(2012.06.15)