農政・農協ニュース

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【JAは地域の生命線】 都市のJAこそ農業振興を  JA東京むさし(東京都)

 JA東京むさしは平成10年に5市(三鷹、武蔵野、小金井、国分寺、小平)のJAが合併して誕生した。都市化が進むなかでもJAの経営の柱は「常に農業」だと須藤正敏組合長は力を込める。
 農業が持続できるよう営農・販売、そして資産管理事業でJAが農業者をバックアップすることが、農地を残し、武蔵野の自然環境を守り、それが町づくりにも貢献することになる、と打ち出す路線は明快だ。こうした「農業協同組合」の役割を発揮し続けるためには、人づくりが根幹だと職員、組合員の「教育」も重視している。

現地ルポ

キーワードは「交流」と「学び」


◆「関心」が農業を支える

JA東京むさし本店。建物の日よけ(ルーバー)は「背負いかご」をイメージ 管内の農地は約700ha。5市の総人口73万人のうち、農業者は1800人とわずか0.025%を占めるに過ぎないが、農業者は地域住民との「交流」をキーワードに生産を続けている。
 三鷹市の星野直治さんは就農して50年。大産地に負けず市場で高く評価されている高品質のナスをはじめ、トマト、キュウリなどを作る。東京伝統野菜の「寺島ナス」を復活させるなど、都内の野菜栽培農家の第一人者だ。
 その星野農園には毎週土日、おおぜいの「ふれあい援農ボランティア」がやってくる。この制度は東京都農林水産振興財団と三鷹市、そしてJAが行っているもので、年10回の農業研修というかたちをとる。
 しかし、星野農園には研修を終了しても続けて来る人も多い。そもそもこの制度には関係なく手伝いにくる地域住民や六本木、横浜など遠方から来る人もいる。都営アパートで暮らす81歳の女性は「週に1回、土に触れることができて、作業後はみなさんと交流もできて楽しいです」と話す。
ボランティアに指導する星野さん(左) 定年後は田舎で農業をしたいと技術を教わりにくる人もいる。「労働力は足りないので誰でもどうぞ、と受け入れています」と星野さん。もっとも必ず星野さんが農場にいるわけではないが、そんなときは「長年、援農に来ているベテランが講師を務めてくれます」。
 星野さんは「農家の手伝いをしてさまざまな体験をしたいという仲間がいるのは都市農業ならでは」と話す。 「関心」と「理解」が農業を支えている。

(写真)
上:JA東京むさし本店。建物の日よけ(ルーバー)は「背負いかご」をイメージ
下:ボランティアに指導する星野さん(左)


◆農園を地域づくりの核に

JA東京むさしのマスコット「ムーちゃん」 小平市にある「みのり村」は粕谷英雄さんの学習・体験農園だ。
 農業高校の教諭だった粕谷さんは、家族や親戚とともに農業生産を続けてきたが、体験農園のプランを温め8年前に退職、2年間準備してオープンした。
 面積は20aほど、用意したのは80区画だがすべて埋まっていて、粕谷さんの指導のもと、草一本なくきれいに作物が育っていた。会員数は約90人。種子や肥料などは農園が用意する。
 ただし、粕谷さんは、この農園は単に栽培技術を学び農業体験をするだけが目的ではない、と強調する。ビニールハウスは机がぎっしり並ぶ「教室」になっているが、座学で学ぶのは農業だけではなく「たとえば、現代の食の問題。遺伝子組み換え食品についての報道など、新聞も教材にします」という。また、地域防災と農地の役割を考えたり、農園内にビオトープを作る活動なども行っている。

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JA東京むさしのマスコット「ムーちゃん」

 


(続きは シリーズ・JAは地域の生命線 JA東京むさし(東京都) で)

(2012.06.21)