農政・農協ニュース

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【クローズアップ農政】貿易自由化と農業の共存

 ブラジルで開かれたG20サミットでの交渉参加表明は見送ったものの、TPP(環太平洋連携協定)参加に前のめりな野田首相の姿勢は変わらない。関税撤廃を原則とするTPPは農業に大打撃を与えることは明らかだ。
 しかし、貿易自由化と農業はそもそも共存しないのか。この問題について愛媛大学の村田武教授は「悲観的な考え方が支配的だが、国際社会にはそれを可能にした先例がある」と指摘している。今回はその先例のひとつ、EUの歴史と農業政策を改めて解説してもらった。

「共存」と「成長」を可能にしたEEC関税同盟

日本も東アジア共同体の構築を


◆二つの先例に学ぶ

愛媛大学・村田武教授 わが国の農業危機と食料自給率の低下、韓国食料のアメリカ依存、飢餓に苦しむ北朝鮮国民、中国の穀物輸入大国化、そして世界的な食料需給のひっ迫がすう勢となっていること……、これらの現実を冷静に判断しなければなりません。
 わが国はTPPでさらなる農産物市場開放に進むような愚策を選択する余裕はないのであって、食料安全保障のための東アジア諸国間の連携を強化し、将来の「東アジア共同体」に向けての地道な国際協力こそが求められます。
 自由貿易と農業の共存については悲観的な考えが支配的ですが、国際社会はそれを可能にした先例をもっています。
 ひとつは、以下に紹介する欧州経済共同体の関税同盟と加盟国農業の共存であり、いまひとつは、北米自由貿易協定を結びながらアメリカに抵抗して農産物マーケティングボードと需給管理を維持しているカナダです。今回は、欧州共同体を、8月10日号では、カナダを紹介します。


◆なぜ、欧州は統合をめざしたか?

 西欧諸国は第2次世界大戦後、悲惨な戦争を再び起こすことのない欧州をめざそうと、新しい秩序をめざす努力を重ねました。
パルミジャーノ・レッジャーノの協同工場 そのスタートになったのが、ドイツとフランスが資源をめぐって争わない体制をつくることでした。それが実を結んだのが、石炭と鉄鋼の効率の良い生産と合理的な配分をめざす「欧州石炭鉄鋼共同体」の設立(1952年)です。フランス、旧西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーおよびルクセンブルクの6か国が加盟しました。 そして、この共同体の成功が加盟国を励まし、他の分野でも統合を進めようということで1957年3月にこの6か国が調印し、翌58年1月に発効したのが、欧州経済共同体を設立する「欧州経済共同体条約」(EEC条約)だったのです。これと同時に発効した「欧州原子力共同体条約」といっしょに「ローマ条約」ともいわれます。

(写真)イタリア・パルミジャーノ・レッジャーノの協同工場


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(2012.07.06)