農政・農協ニュース

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シリーズ 「作りあげよう! 実践しよう! 自らの手で」―地域営農ビジョン策定・実践強化全国運動  第2回 【現地レポート】下湯沢農家組合(岩手県盛岡市)

 今回の地域営農ビジョン策定・実践運動は、農家が主役となって徹底的に話し合い、5年後、10年後の集落の将来像を描くことがもっとも重要な点だ。
 岩手県盛岡市の下湯沢農家組合は昭和55年の農事実行組合の時代から、集落の活性化のためにさまざまな自主的な活動を始め、農業を次世代につなぎ、集落での豊かな生活をめざしてきた。最近では若者だけでなく多彩な技能を持つ中高年層も集落の農業を維持するための「登録担い手」として位置づけるなど、新たな発想で農業の持続をめざしている。
 下湯沢農家組合の事務局長でJAいわて中央元代表理事専務の熊谷健一さんを訪ねた。

若者だけでなく中高年も「登録担い手」に


「集落ぐるみ農業」がめざす将来ビジョン


◆なぜ「生活部」を設置したのか?

加工用キャベツの共同栽培畑。早朝の作業には20人ほどが集まる。「非農家も参加。集落のコミュニケーションの場にもなっています」と熊谷さん 下湯沢農家組合のスローガンは「結いの心で集落の活性化をめざそう」。54戸の農家が参加し昭和62年に農事実行組合から農家組合に改組した。
 その際、組織に「営農部」とともに「生活部」も設置した。営農部では、米や小麦などの作業受託や肥料散布、ライスセンターの管理運営、農薬と肥料の共同購入など、いわゆる農業の協業化を推進する事業を担っている。
 一方、生活部は味噌づくりのための大豆種の配布と味噌づくり、冬場の野菜加工としてのキムチづくり、正月の飾りづくり、直売所「下湯沢フレッシュ直売所」の運営とそこを拠点とした学童への農業教育などを事業としている。
 営農組合といえば地域農業の協業化のための組織と考えがちだが、下湯沢農家組合は発足当初から、集落での「暮らし」も組合の活動テーマとしたのである。「営農の集団化、効率化だけを追求してしまうと集落の食文化や健康、子どもたちへの伝承などがおろそかになってしまう。この集落で農業を続けていくためには暮らしの課題解決も含めて活動すべきではないかと考えてきた」と熊谷さん。
 だから「集落営農ではなく、“集落ぐるみ農業”だと言っているんです」。
 生活部の活動内容をみれば分かるように、味噌や漬け物づくりなど女性の活躍の場でもある。直売所も収益を上げるというよりも集落の人々の交流の場、「心のオアシス」との位置づけだ。味噌づくりなどで使う材料はもちろん集落の農産物。だから生活部は「営農の応援部門ともいえる」わけだ。


(写真)
加工用キャベツの共同栽培畑。早朝の作業には20人ほどが集まる。「非農家も参加。集落のコミュニケーションの場にもなっています」と熊谷さん


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(2012.07.25)