農政・農協ニュース

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協同組合が「未来の創造者」となるために JC総研の「協同組合研究セミナー」  元明治大学教授・北出俊昭

 8月17日、明治大学駿河台キャンパスでJC総研「協同組合研究セミナー」が開催された。JC総研は2012年国際協同組合年を記念する研究活動として、2010年11月から新協同組合ビジョン研究を進めてきたが、このセミナーはその研究成果の中間報告として開催されたものである。セミナーでは3つの講演と2つの実践報告があり、その後のパネルディスカションを含め、協同組合が当面している問題や課題が幅広く検討された。そのなかでとくに現在の協同組合を考える上で重要と思われる3点について述べたい。

◆協同組合の特徴を活かす

JC総研の「協同組合研究セミナー」  その第1は「協同組合は『未来の創造者』になれるか」の問題である。これは講演?の明治大学大学院教授・中川雄一郎氏の講演テーマでもある。
 中川教授はレイドロウも引用しながら、現代の資本主義社会では協同組合も市場メカニズムに則した事業活動を展開せざるを得ないが、協同組合(人)は協同組合の特徴を活かし、「生活と労働をより豊かにする諸条件を再生産する手段として事業を遂行する」ことが望まれており、そこに「未来を創る」主体としての協同組合の存在意義があると強調している。こうした観点から、「世界と人類が直面している危機的状態」という「重大問題」に対処することこそ、「協同組合運動の中心的目標」であり、現代協同組合(人)の具体的な挑戦課題である、とする。これは日本の農協(人)にとっても協同組合(人)として当然な国際的責務であるといえる。

◆新たな仲間づくりを考える

 第2は協同組合における新しい「参加者」を呼び込む重要性についてである。
 講演?のテーマは関西大学教授・杉本貴志氏の「大規模化した現代の協同組合で『参加』を求めることができるのか」であったが、杉本教授は現在の日本では「新自由主義的な競争万能主義が猛威」を振るっている結果、これまでにない格差社会が到来した。それにもかかわらず平等・公正を基本理念とする協同組合が「出番である」とする声は、協同組合関係者以外あまり聞かれない。そこには「協同組合=単一利害集団」という閉鎖的イメージがあるので、これからは新しい消費者、新しい生産者を協同組合に積極的に参加させる取り組みが重要だとする。これは中川教授が提起した「未来の創造者」となるためにも、協同組合にとって重要な課題であることはいうまでもない。

◆地域とともに歩む活動を

JC総研の「協同組合研究セミナー」  第3は協同組合にとって地域を基盤に、組合員・住民の多様な要求や希望を取り上げた活動の重要性である。
 東京海洋大学准教授・濱田武士氏は、地域社会にあった人格を取り戻すためにも、地域での日常的な「協同のネットワーク・社会連帯」への意識的な取り組みを強調されたが、これはJAあつぎ代表理事組合長・井萱修己氏と南医療生協専務・成瀬幸雄氏の実践報告でも明らかである。
 JAあつぎでは「夢ある未来」を基本に「人とともに」、「街とともに」、「大地とともに」を組合理念とし、地域で農協の存在意義を高めるため教育文化活動を重視している。具体的には役職員・組合員教育からさらに進んで子供たちを対象に「夢未Kidsスクール」などを開設している。
 また、南医療生協では「みんなちがって みんないい ひとりひとりのいのち輝くまちづくり」を基本理念に、「組合員と職員の合意形成づくり」を追及している。その結果、とくに新規事業では「南医療生協がやる事業」から「南医療生協でやる事業」への変化が進んでいる。
 以上、重要と思われる3点を中心にJC総研セミナーの内容を紹介したが、重要なことは先進事例にも学びながら、それぞれの農協で知恵を出し合い、地域の実情に応じて、創意を発揮した本来の協同組合としての取り組みを強めることである。

(2012.09.07)