農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

TPPの懸念事項と党の考えまとめる  民主党

 民主党の経済連携PT(プロジェクトチーム)は9月6日、これまでの議論をとりまとめた。報告では「TPP交渉参加の是非につき、慎重に判断することを求める」と提言した。ただ、議論では経済連携の政府戦略が明確でないとの指摘もあったとし、国益の視点に立った戦略を早急にまとめるべきとも提起している。

◆参加の是非、慎重判断を

 報告では、政府により収集された情報とPT代表団の米国、カナダへの訪問時に得た情報をもとに、TPPに対する懸念事項の事実確認や、国民を代表する国会議員による「国民的議論」を行ってきたとした。
 そのうえで党として整理した懸念事項をふまえて「TPPへの交渉参加の是非につき、慎重に判断することを求める」と報告した。
 同時に、これまで多くの議員から政府のTPPをふくむ経済連携の戦略が明確ではないとの指摘があったことから、「政府においては早急に国益の視点に立った経済連携全体の戦略およびこれに基づく個別経済連携の戦略をとりまとめるべきである」との提言を盛り込んだ。
 懸念事項に対する党としての考え方は以下のようにとりまとめて政府に提出されている。
 TPPは100%関税撤廃が原則か、例外は認められないのかという点については「現時点では例外を求めている国はない」との認識のもと「党としては国内に深刻な影響がある分野にかんがみ、例外なき関税撤廃は認められない」との考えでまとめた。また、「制度についても日本に不利な形での調和を求められる可能性があることに十分留意する必要がある」とした。
 参加国で合意したルールの再協議については「情報収集の結果、再協議はできないもの」と認識を示し、仮に参加判断をする場合「わが国が受け入れられないルールが合意されていないか。確認する必要がある」との考えを示した。
 ただし、TPPについては秘密交渉であり、十分な事前の情報収集はできないのではないか、というのも懸念事項だ。
 これについて党の考えは「交渉に参加していない現段階ですべての情報を収集し、公表することは困難」との考え方を示しながらも「そのことのみを理由に交渉参加の是非を判断することは適当ではない」とのとりまとめをした。

◆影響試算を政府に要求

 農業への甚大な影響が懸念されることについては、「政府はTPPに参加した場合の現実的な影響を精緻に分析する」必要があるとした。農業分野については議論が深まってはいないが、党としても「日本農業を守り抜くためにどのような対応を行うか、どのような財政支援策が必要か、その財源を確保できるのか、その現実的な可能性も含めて検討し、国民に方向性を示していくべき」との考え方をまとめた。
 そのうえでこうした支援策のあり方などを国民に示すことが「TPP交渉参加の是非を判断する前提になる」とし、いずれ農業分野の影響とその対策を具体的に検討するという今後の議論の方向性を示したといえる。
 また、「国民皆保険制度」への懸念については、これが混合診療の解禁というかたちで求められる場合も含めて「実質的にも、結果的にも(国民皆保険制度が)損なわれる内容を含む協定は認められない」との考えでまとめた。
 ISDS条項(投資家が国家を訴える条項)については、「わが国の主権や地方自治の侵害につながるような協定は認められない」とした。そのうえでISDS条項については米韓FTAやNAFTA下のカナダの経緯や各国の立場を参考にすべきとしている。
 また、「共済」について「これまで議論はないとの情報もあるが、懸念は払しょくしきれない」とした。


(関連記事)
APECでのTPP参加表明せず 藤村官房長官 (2012.09.04)

官邸前で毎週火曜日に抗議 TPPはいらない! 暮らし、農業、医療を守ろう (2012.08.29)

「懸念事項」で政府に回答求める  民主経済連携PT (2012.07.27)

事前協議で「譲歩せず」を政府に要請 民主党PT総会 (2012.07.12)

(2012.09.18)