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【TPP特集】 危機が迫るメキシコの農村 『壊国の契約 NAFTA下メキシコの苦悩と抵抗』の訳者、里見実氏に聞く

 カナダとともにTPP(環太平洋連携協定)への参加を表明したメキシコ。そのメキシコは1994年に北米自由貿易協定(NAFTA)を締結して以降、米国から安いトウモロコシの輸入が急増し多くの農家が苦境に立たされているという。若者は農村から米国に出稼ぎに行き人口減で農村の荒廃も進んでいる。
 こうしたメキシコの最近の状況を描いた『壊国の契約?NAFTA下メキシコの苦悩と抵抗』がこのほど農山漁村文化協会から刊行された。今回はこの翻訳をした里見実國學院大學名誉教授に同書をもとにメキシコの農村や社会全体が抱える問題について聞いた。

トウモロコシを失うことは
国を失うこと…


◆トウモロコシの特別な意味

『壊国の契約 NAFTA下メキシコの苦悩と抵抗』(農文協刊・定価2600円+税 四六版282P) 原題は『トウモロコシのための闘い?メキシコ農村における農民、労働者、GMコーン』で、カナダの女性文化人類学者、エリザベス・フィッティングが昨年発表した。
 同書は「遺伝子組み換えトウモロコシをめぐる論争」と「NAFTAがもたらした農業の危機と生活の激変」が大きな柱で関係者や農民との膨大なインタビューとその検討を通じてメキシコ農村の今を描き出した研究書でありジャーナリスティックな証言でもある。
 メキシコの人口は約1億1000万人で日本と同程度だが、国土は日本の5倍。農林水産人口は2000万人だ(09年、FAO統計)。
 メキシコはトウモロコシの発祥の地で、これが主食であるが、2001年、地元品種に組換え遺伝子との交雑が発見され大問題となった。
 メキシコにおけるトウモロコシは主食であるだけでなく、その文化的アイデンティティと結びついて特別な意味をもった作物であるといわれている。
 トウモロコシをクレープ状にしたトルティーヤはメキシコ人の日常食だが、植民地時代は「進歩」を代表する小麦のパンに対してインディオの「後進性」を代表する食べ物とされていた。そうした蔑視の中で、農民は地域に合った多種多様な地元品種を育て、それを日常食に、また酒その他の儀礼食として守ってきた。
 トウモロコシは「メキシコ人をメキシコ人たらしめる」文化の臍の緒でもあった、という。


(写真)
『壊国の契約 NAFTA下メキシコの苦悩と抵抗』(農文協刊・定価2600円+税 四六版282P)


◆GM種発見の衝撃

メキシコのトウモロコシは、白、青などさまざまな色がある。 そのメキシコの地元トウモロコシはクリオーリョ種と呼ばれる白いトウモロコシだ。北米産の黄色のトウモロコシとは外観も風味も異なっている。今でも村の女たちはこれでトルティーヤをつくるが、そこに政府は栽培認可をしてもいないのに組換え遺伝子を持つ種が紛れ込んでいたのだから大きな衝撃だ。原因はNAFTAによって急増した米国産のGMコーンからの遺伝子移動である。
 しかし、GMは収量を上げる結構な技術ではないかという推進論が、メキシコでも多国籍企業や北部の大農園を中心にあがっている。 ウサビアーガ農相はある全国紙で「われわれは文化と闘っている」と述べたことが同書で紹介されているが、それは低収量の地元種によるトウモロコシ生産へのこだわりこそがメキシコの発展を妨げている、という認識を表明したもの。こうしてNAFTA締結を契機に効率的な農業への転換と市場主義への傾斜が急速に強まっていった・・・。


(写真)
メキシコのトウモロコシは、白、青などさまざまな色がある。


(続きは クローズアップ農政 危機が迫るメキシコの農村 で。)


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