農政・農協ニュース

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【JA全国大会特集】地域とともに生きる農協をめざして 歴史をふまえ第26回大会の意義を考える  座談会:種市一正氏・冨士重夫氏・田代洋一氏

出席者
種市一正・三沢市長
冨士重夫・JA全中専務理事
田代洋一・大妻女子大学教授

 JAグループは10月11日、第26回JA全国大会で「次代へつなぐ協同―協同組合の力で農業・地域を豊かに」を決議する。
 具体策として、持続可能な農業を実現するための「地域農業戦略」、豊かで暮らしやすい地域社会の実現のための「地域くらし戦略」、そして「JA経営基盤戦略」の3つを決定し実践することを柱としている。
 今号では、大会議案の内容を軸に、地域の課題にJAがどう向き合うべきかをJA組合長や中央会・連合会会長、全農会長も歴任した青森県の種市一正三沢市長も交えて話し合ってもらった。

地域とともに生きる農協をめざして


「つながる」取り組みで組織基盤を強化


◆協同組合原則から大会議案を考える

 田代 8月末の朝日新聞の世論調査ではTPP問題をはじめ日本の外交力に期待しないという声が78%を占めていました。国民は政府はあてにならないと思っているようですし、日本の将来は地域から協同の力で切り拓いていくしかないと思われます。その意味で第26回JA全国大会には期待も高く、本日は大会議案を軸に縦横に話し合っていただきたいと思います。
 大会議案を拝見し、まずはJAは変わったのかなという印象を受けました。リストラ型経営から事業伸張型へ、支店拠点化などがそれです。果たして変わったのか、それとも従来路線の延長なのか、今大会の新機軸は何かについて、最初に冨士専務からお聞かせいただけますか。
 冨士 JA全国大会を振り返ると、やはりある時は前回大会を引き継ぎ、またある時は新機軸を打ち出すということだったと思います。
 今回は第25回大会を一部引き継いではいますが、ご指摘のように組合員の高齢化など組織基盤自体が大きな転機を迎えていることからすれば、新しい機軸も出していかなければならないということです。
 また、くしくも今回は国際協同組合年でもありますから、大会議案の組織協議でもこれを意識すべきだという意見が出されました。そうした議論もふまえ、今回のテーマを「協同組合の力で農業と地域を豊かに」としたように、「協同」を強調しています。
 まず、今回の大会議案では、協同組合原則(左頁)の第6原則の「協同組合間の協同」の重要性をふまえていることを指摘したいと思います。
【JA全国大会特集】地域とともに生きる農協をめざして 歴史をふまえ第26回大会の意義を考える これは地域による協同、全国における協同、そして国際間の協同、すべてを意識しています。グローバル化が進むなかで競争が激化している。そういう時代環境のなかで、競争ではなく協同による事業方式でお互いが連携し合って豊かにしていく、という立ち位置に私たちはあるということです。第6原則をこのように新しく位置づけて捉えるべきだと思います。
 さらに第7原則では「地域社会への係わり」をいっていますが、言い換えれば地域社会への貢献ということであると認識しています。それはなぜか? 協同組合はもともと組合員のための組織であるがゆえ、組合員のための利益集団、だから閉鎖的な組織だと受け止められてしまいがちです。でも、そうではないんだということを、この第7原則が言っているわけです。
 地域社会に貢献していく協同組合とは、利潤追求ではない、まさにコミュニティを発祥の地としている協同組合であって、こうした方向を協同組合の価値、原則のなかから位置づけていこうということも、大会議案で強調したいことです。


◆農業振興が地域の活性化に欠かせない

 田代 大会議案のはじめにはJA綱領に加えて協同組合原則が掲載されていますね。今のお話からその意味が理解できます。
 種市市長に伺いたいと思いますが、青森県は東日本大震災の被害にも遭われました。今、地域で何が問題なのか、それに応える大会議案になっているかお聞かせ願います。
 種市 農業基本法が施行されてちょうど50年ということですが、私が高校を卒業したのが昭和35年でした。当時を思うと基本法ができて新しい農業がこれから始まるんだという思いを持ちましたね。
 そのときに東畑精一さんが今の農業は改革が待ったなしだ、いわゆる時計の針を止めないで修理をするようなことが求められているという話を聞きました。厳しさも感じましたが当時は1ドル360円の時代、とにかく1日1万円、1万ドル農業をやろうと提唱しながら、農業は天職だと思い一生懸命に取り組んだことを思い出します。
 今は行政を預かる立場となり、この立場で農業をどうするかを考えなければいけないわけですが、やはり農業や漁業が活性化しないと町は元気にならないと感じています。たとえば冷害に見舞われたとなると、もう町全体が寂れます。そこはつながっているんです。
【JA全国大会特集】地域とともに生きる農協をめざして 歴史をふまえ第26回大会の意義を考える ただ、農業は自然相手の仕事ですからなかなか大変で、しかも三沢市の場合はとくにやませというハンディがある。それならばと私たちは長いもなど土のなかにもぐる野菜を作ろうと努力をし、今では全国に誇れる野菜産地になったと思います。厳しい環境でしたからそれが逆に絆の強さを生み、たとえば共同出荷など、とにかくみんなで力を合わせて産地づくりをしようとしてきました。
 しかし、今は外から見ていると、農協運動というものが少し下火になったのかなということを感じます。やはり農協は運動なくして事業なしだと思いますが、今は環境が厳しいために経済オンリーに振り回されているという感じを受け、農協運動があって経済活動がある、ということを少し忘れかけているのかなという気もしています。
 冨士専務が指摘した社会貢献のことで思うのは、そもそも農業とは社会貢献をしなければこれは発展しないのではないかということです。ソロバンと論語という言葉もありますがソロバンが経済だとすれば論語とは文化だと思います。ここにも着目しないと農業の発展はない。農協はそこが原点で、もう一回戻る必要があるのかな、ということを感じています。


【協同組合原則】
1.定義
 協同組合とは、人々が自主的に結びついた自律の団体です。人々が共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、経済的・社会的・文化的に共通して必要とするものや強い願いを充すことを目的にしています。

2.価値
 協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値観に基づいています。
 組合員は、創始者達の伝統を受け継いで、正直、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的な価値を信条としています。

3.原則
第1原則 自主的で開かれた組合員制
第2原則 組合員による民主的な管理
第3原則 組合財政への参加
第4原則 自主・自立
第5原則 教育・研修、広報
第6原則 協同組合間の協同
第7原則 地域社会への係わり


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(2012.10.10)