農政・農協ニュース

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担い手と一緒に営農ビジョンと豊かな地域を創造する TACパワーアップ大会2012  JA全農

 農業の担い手のところに出向き、JAへの要望・意見を聞くとともに、担い手の所得向上、経営の安定をはかるために、実需者・消費地のニーズに応えた生産・販売の提案するJAのTACの活動が5年目を迎え、全国で成果をあげ、定着しつつある。
 そうしたTACが年1回集まる「TACパワーアップ全国大会」が、11月21〜22日、横浜市で開催された。

◆TACの活動を核にJAの総合力を発揮

全国から550名が参加し盛大に開催された パワーアップ大会は、全国36府県116JA373名をはじめ、各府県JAグループ関係者など550名が参加して開催された。例年に比べJAの参加者が多いのが今回の特徴だという(大会事務局)。
 中野吉實JA全農会長は「TACの活動は毎年レベルアップしてきている。それは、実需者への販売契約、担い手への生産提案を地道に積み上げてきた成果だといえる。これからもJA役職員のみなさまが、地域農業振興に向けて、目標を共有化しTACの活動を核としてJAグループの総合力を発揮した取り組みをしていただきたい。
 JA全国大会で決議した地域農業戦略を実践するために、全農としてもTACの活動を支援し、担い手対応に結びつくよう努力していきます」と、開会のあいさつで述べた。
 そして、来賓として雨宮宏司農林水産省生産振興審議官と伊藤秀雄日本農業法人協会副会長があいさつ。
 その後、全農会長賞をはじめとする活動表彰が行われ(表彰JA、TACは別掲の通り)、中野会長から表彰状と記念品が手渡された。
 21日には、JA島原雲仙(全農会長賞)をはじめとするJA表彰とJA特別表彰JAが取り組み事例を発表した。

(写真)
全国から550名が参加し盛大に開催された

◆目的は地域営農振興とJA事業の拡大

 そして中澤靖彦JA全農営農販売企画部長が「今後のTAC活動について」提案した。
 そのなかで中澤部長は、23年度の活動実績として全国293JA・1593名のTACが9万1000戸の農業経営者に訪問・面談を73万回行ったが、24年度はそれを大きく上回り、月間面談件数は月間平均で7万5000件となっていると報告。しかし、6段階に分けた活動進展度では、まだ68%のJAがSTEP4以下にあり、今後さらなるレベルアップに向けた取り組みが課題だと指摘した。
 そして今後のTACのあるべき姿として、TAC活動の目的は、地域営農振興とJA事業の拡大にあると提起した。
 最後にJAおちいまばりの八木陽子氏(TAC新人賞受賞)が、▽担い手と一緒に、営農ビジョンと豊かな地域を創造します。▽担い手へ、JAグループの総合力を発揮した事業活動を提案します。▽担い手と一緒に、食の安心・安全を消費者に提供します。
という大会宣言を提案し、満場の拍手で確認した。
 なお、1日目には、キリンビール(株)の磯崎功典社長が「食を通じた地域との共生」と題して、JAグループと連携し、被災3県の生産者に376台の農業機械を提供した大震災復興支援「復興応援 キリン絆プロジェクト」などの取り組みを含めて基調講演を行った。
 2日目はTAC表彰者による取組事例報告と参加者による分科会が行われ、岩城晴哉JA全農常務理事が閉会のあいさつをし、来年の再開を誓い合って閉会した。


◆表彰されたJAとTAC

【全農会長賞】
中野会長から表彰状と記念品を手渡されるJA島原雲仙の加藤寛治組合長 JA表彰組合のなかからとくに優れたJAを表彰。
○JA島原雲仙(長崎)
 担い手への計画的・継続的な訪問活動を土台に、関連部署、関連機関との連携をはかりながら営農経済事業に関する個別提案を実践している。関係部署と連携し生産部会を巻き込んだ馬鈴薯の「農家手上げ方式による契約販売に取り組み、JA未利用・低利用の担い手のJA出荷実現や、受益農家の利用率で収支を賄う「農援隊」(労働力支援)の立ち上げ、担い手への就農サポートによる地域の後継者確保の取り組みなどを実現させた。そのほか、新規就農者・農業後継者育成支援(後継者の花嫁対策など)や地域農業戦略の策定・実践など多岐にわたる実践を行っている。結果として担い手のJA利用実績も、JA全体の利用高が伸び悩むなか、販売高107%、購買高106%と伸長させている。

【JA表彰】
 担い手への提案内容とその成果、TACの活動を通じたJAの事業効果を基準に、活動が総合的に優れているJAを表彰。
○JA津軽みらい(青森)
 土壌診断などを活用し、担い手の高品質な農産物生産や経営などに寄与したことが評価された。担い手のJA利用実績も販売高107.2%、購買高108%と伸長させた。
○JA古川(宮城)
 担い手の状況に応じた的確な情報提供の徹底、地域の園芸生産を拡大したことなどが評価された。担い手のJA利用実績も販売高137.3%、購買高174.5%と伸長させた。
○JAグリーン近江(滋賀)
 農業法人ネットワークづくり、担い手の販売チャネル開拓などに寄与したことが評価された。担い手のJA利用実績も販売高127%と伸長させた。
○JAうま(愛媛)
 担い手に対する生産・技術の的確な情報提供の徹底、担い手が実際の消費現場を知り、それをもとにした農産物生産に寄与したことが評価された。担い手のJA利用実績も販売高111.7%、購買高108.6%と伸長させた。

【JA特別表彰】
 23年産米の集荷促進のための施策・提案とその成果、出荷契約実績が総合的に優れているJAを表彰。
○JAぎふ(岐阜)
 担い手経営に有益な情報提供や管内産米の販売チャネルの拡大などに寄与し、その結果、担い手の米契約数量が124.9%、契約件数が122.5%と伸長した。
○JAレーク伊吹(滋賀)
 担い手にとって柔軟な米集荷・精算、実需者ニーズとのマッチングなどに寄与。担い手の契約数量101.9%、契約件数100.7%と伸長させた。

【TAC表彰】
 TACミーティングなどによる担い手の要望に対する十分な検討、担い手への提案内容の新規性、創造性の程度、提案による担い手満足度およびJA事業への貢献度といった活動が総合的に優れているTACを表彰。
 表彰者名の後の「〜」以降は評価内容の要約。
○JA栗っこ営農部畜産センター畜産販売課長補佐 佐藤吉己氏(宮城)
 〜優良種雄牛「茂洋」(しげひろ)を活用した子牛の販売戦略〜
○JA秋田しんせい中央部営農センター副審査役 小松世氏(秋田)
 〜エリア化体制での情報収集と意見・要望・提案情報連絡票の活用〜
○JAてんどう営農販売部担い手支援TAC・農地集積推進課 山口輝氏(山形)
 〜手取り増加を目的とした早期収穫・出荷可能な新品種導入・助成事業の提案〜
○JA新ふくしま営農部農業振興対策室 渡辺智由里氏(福島)
 〜風評被害に苦しむ担い手に希望を与え、安心・安全を届ける農家と消費者のつなぎ役となり、販売に成果を上げた〜
○JAなす南経済部経済課 山本哲氏(栃木)
 〜JAなす南産米ブランド形成に取組み「産地と消費地を結ぶTACの架け橋機能」を発揮〜
○JA新潟みらい営農経済部営農経済課 落合一彦氏(新潟)
 〜組合員のJA離れを阻止するために、出向くJA、相談・指導・提案できるTAC活動を丹念に積み重ね大きな成果をあげた〜
○JAとぴあ浜松浜北営農緑花木センター主任 栗田雅樹氏
 〜砂糖えんどうへの栽培転換で担い手の所得を向上させるなど、担い手に変動する消費者ニーズに対応した提案と実践に導いた〜
TAC表彰されたみなさん○JA京都営農部南丹広域営農センター係長 藤井良氏(京都)
 〜新丹波黒大豆の生産振興による地域営農振興へ取り組み、衰退していた黒大豆産地を蘇らせ担い手に安定した経営をもたらした〜
○JA兵庫西営農生活部営農指導課係長 竹田拡二氏(兵庫)
 〜担い手に生産する意欲と喜びをもたせるとともに、事業の活用や販路を開拓したことで、担い手の経営を改善させた〜
○JAうま営農部営農販売課調査役 鈴木哲也氏(愛媛)
 〜花木類ピットスポラムなど(枝物類)の産地化に向けた取り組み〜。

【TAC新人賞】
 担い手の定期的・積極的な訪問面談、担い手の意見・要望の十分な聴き取り、担い手への的確な情報提供などの活動が総合的に優れている活動経験が24年8月末時点で1年未満のTACを表彰。
○JAとぴあ浜松東・中央営農センター 植松千晶氏(静岡)
 〜生産ニーズに応えた施肥設計〜
○JAグリーン近江営農事業部営農企画課 河並健太郎氏(滋賀)
 〜水田野菜の提案〜
○JA京都やましろ北部営農経済センター担い手支援課 桐木隆夫氏(京都)
 〜担い手の信頼の向上と販路拡大に向けた取り組み〜
○JAいずも営農部総合指導課 高橋恵子氏(島根)
 〜土壌分析を基にした土壌診断と肥料提案、肥料農薬講習会の開催〜
○JAおちいまばり営農販売部営農指導課 八木陽子氏(愛媛)
 〜管内産甘長とうがらし“甘とう美人”の産地化と消費促進活動を評価〜
○JAやつしろ経済事業本部経済渉外課長代理 秋永誠一郎氏(熊本)
 〜TAC活動の“見える化”へのチャレンジ〜

 

(写真)
上:中野会長から表彰状と記念品を手渡されるJA島原雲仙の加藤寛治組合長
下:TAC表彰されたみなさん

(2012.11.22)