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冷え込む消費―価格下がっても集客につながらず  日本生協連などの10月度販売実績から

 日本生協連は11月22日「主要地域生協の10月度供給実績」を公表した。ほぼ同時に、日本チェーンストア協会や毎月共同で販売実績データなどを公表している食品スーパーの団体である日本スーパーマーケット協会・オール日本スーパーマーケット協会・新日本スーパーマーケット協会も10月度の販売実績を公表した。
 そこに見られるのは、価格を下げても集客につながらず販売実績が共通して下がっていることだ。

◆低迷する生協の店舗事業

 日本生協連が公表した「主要地域生協」の10月度の供給(販売)実績は、総供給高で1908億5300万円で、前年同月比98.7%となっている。日本生協連では、4〜10月度累計では「前年比100.0%を維持」しており、「宅配の供給高のうち、個配は前年比101.3%と伸長」していることを強調している。
 しかし、4月度以降の推移をみると、総供給高は、6月度までは前年同月を上回っていたが、7月度以降、10月度まで4カ月連続で前年実績を下回っている。
 6月度まで前年を上回る実績を上げてきたのは、個配を含む宅配事業が牽引していたからだが、7月度以降は個配は前年実績を上回っているが、宅配全体では前年実績を下回り、それが総供給高の実績を押し下げているといえる。
 また、生協事業の重要な柱の一つである店舗事業は、4月度以降1度も前年を上回る月がなく、9月度前年比95.3%、10月度95.8%と低迷し、4〜10月度累計でも同96.4%と全体を押し下げていることが分かる。

◆チェーンストアは8カ月連続で前年割れ

 こうした店舗事業の低迷は生協だけに限った現象ではない。11月22日に公表された10月度のチェーンストアの販売概況によれば、総販売額は1兆36億円で、これは既存店で前年同月比96.0%と8カ月連続の前年実績割れとなっている。
 衣料品の実績が大きく前年を下回ったこと(既存店で92.0%)が最大の要因だが、チェーンストア店の売上げの太宗を占める食料品も6202億円と既存店ベース96.6%、全店ベース96.1%と「全体をカバーできない」状況にある。
 なかでも農産品は野菜の相場安が続いている影響で同94.6%と大幅に前年実績を下回っている。

◆食品スーパーも生鮮が伸びず

 また、食品スーパー3団体が11月21日に公表した10月度の速報値でも、既存店ベース総売上高は前年同月比97.2%と前年を3ポイント近く下回っている。そして食品の主力である青果・水産・畜産の生鮮3部門が、96.2%と4ポイント近く前年を下回り、なかでも青果が同95.5%と低迷しているのが注目される。これは野菜の相場安の影響とみられるが、必ずしもそれだけではないという見方もある。

◆消費者の購買意欲は「悪化」している

 食品スーパーの中核店を対象として毎月3団体が実施している景気動向調査では、消費者の購買意欲は「悪化」しており、「客単価」「来店数」は「下降している」とみる経営者が多い。
 また消費者の低価格志向は強いが、「値下げが必ずしも集客につながらない」との見方もある。さらに、通常なら消費税値上げ前の「駆け込み需要」が期待されるが、大型家電や自動車などの買い替え時期ではないこともあって、「これもあまり期待できない」という意見もある。
 終わりの見えない長引く不況による所得の伸び悩みや長期失業者の6割が25歳から54歳の働き盛り層という(総務省調査)「失業長期化」などが、確実に消費行動を冷え込ませているといえる。
 年末に向かって、生協を含めた小売業界は必死の打開策を打っているが、どこまでその効果があらわれるのか、そしてそれが生産現場にどのような影響をあたえるのか注目していきたい。


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