提言

JAの現場から

一覧に戻る

改革の基本は意識改革から

いずも農業協同組合 代表理事組合長 萬代宣雄

 昭和17年3月、島根県は出雲市、出雲大社の隣町に農家の長男として生を受けました。働き者で農業の中心であった祖父の急逝や戦争で身体をこわした父が、力仕事ができなかったこともあり、中学校を卒業すると農業を志し、一家の生計はすべて私の肩にかかることとなりました。継承した1・1haの農地でも最低限の生活はできたでしょうが、将来の専業農家として不安を感じ、国の制度資金を活用しながら水稲に養豚を加えた複合経営を行い、水田3ha、肉豚300頭の一貫経営へと規模を拡大し、夢のある農業を常に追求しておりました。

いずも農業協同組合 代表理事組合長 萬代宣雄

◆主人公は組合員

 昭和17年3月、島根県は出雲市、出雲大社の隣町に農家の長男として生を受けました。働き者で農業の中心であった祖父の急逝や戦争で身体をこわした父が、力仕事ができなかったこともあり、中学校を卒業すると農業を志し、一家の生計はすべて私の肩にかかることとなりました。継承した1.1haの農地でも最低限の生活はできたでしょうが、将来の専業農家として不安を感じ、国の制度資金を活用しながら水稲に養豚を加えた複合経営を行い、水田3ha、肉豚300頭の一貫経営へと規模を拡大し、夢のある農業を常に追求しておりました。
 また、専業農家として取り組む傍ら、地域の活性化や将来の生活基盤の確立を求めて、近隣の先輩方や同じ農業を志す同志とともに、4Hクラブ活動(農業改良青年会議)や農協青年部活動、地域青年団活動など、農業と地域活動に積極的に関わり、昼夜を問わず奔走しました。
 そこで感じましたのが、封建的な出雲の田舎町にあって将来に向けての夢を実現するためにはさらなる地域興しの必要性です。少なくとも県議会議員の1人位は出せる力をつけないと夢は叶えられないと鑑み、そうした基盤を作るため仲間と共に努力を重ねました。具体的には、飲み代稼ぎに会社経営に励み、それぞれの地域では市会議員選出にからみ、一方でJA運営にも発言力をつけねばと農青連盟友が総代・役員に進出するための運動を展開する等数々の努力をしながら今日を迎えています。
 そうした成果として、すでに県議の誕生を見て30数年、農協役員にしめる農青連関係者も組合長をはじめ多数の理事・総代選出へと夢実現への基盤は整ったと言っても過言ではありません。私自身も6年前に組合長に就任し、若き農青連時代に執行部に言っていた事が、逆に受ける立場となり組合員の為のJAとして、地域に不可欠なJAとして、永続的にこの役割を果たせるJAを創るべく、『組合員が主人公』・『組合員・地域・JAが一体となった運営』を合言葉に日々努力を重ねております。


◆組合員意識を高める

 組合長就任までには、零細企業(7社)、社会福祉事業(保育園、特老、老健)を経営し、市会議員7期(28年)など仲間の協力の下で様々な経験をしました。そうした経験もあってか、JA非常勤役員15年を努めた時にはあまり感じなかったJAのあるべき姿と現実の差に気づかずにはいられませんでした。
 1つは、組合員の姿勢が『我らの農協』というよりは、選択肢の1つである経済団体という評価しかされていない、そんなさみしい感じを強く受けました。条件が悪くても利用下さいとは言えませんが、利用できない問題点があれば改善を要求し、利用できる環境を整える、これが組合員と農協の関係ではないかと思うのです。組合員の皆様には農協は誰のための組織か、職員のための組織でも、役員のための組織でもありません。どこまでも組合員の皆様の組織であります。『組合員としての意識の希薄さ』に驚きを隠せませんでした。
 2つには、役職員の姿勢でありますが、「厳しさがない」「ぬるま湯」につかっている様な何か緊張感や危機感がないことに問題有りと感じました。民間企業の厳しさなどよそふく風、しかしいずれ一般企業との競争は一層激化すると予測されるこの重要な時期に『役職員の意識改革』の必要性を感じました。
 3つには、組合員のためのJAである中で、現在の組合員基盤で将来的に安定経営できるのか、JAの役割発揮ができるのか、さらに競争が激化する事などを考えると、『組合員基盤の拡充』、『組織の再点検』に取り組む必要性を強く感じました。特に、女性部・青年部・各生産部会・准組合員への対応が放っておけない重要な要素であると感じております。
 以上、大別してこの3点について、早急に対策を講じる必要性を感じたということであります。これもJAという組織に突然、常勤役員となった新鮮さがもたらしたための体感ではないかと思っています。この体感に基づき我がJAの抜本的改革をスタートさせることと致しました。
 1つ目の組合員としての意識離れに関してですが時代の推移と共に農業や農家に関する環境も一変し、JAの存在価値の低下とでも申しますか、あらゆる分野において競争社会が到来したということであります。しかし、時代の流れとは言え、JAの果たす使命・役割を放棄するわけにはいきません。また、こういう時期だからこそ逆にJAとしての使命を発揮していかなければなりません。
 当JAでは、毎年春には集落座談会(常会単位)、夏には組合員大会(小学校単位)を開催しております。あらゆる機会を通じ『農協は誰のもの』、『農協は組合員が主人公』、『皆様が多額の出資をして作った皆様方の組織』だと訴えました。そういう意味では、もっと建設的な意見をと随分お願いを致しました。しかし、口で言っただけでは理解してもらえず、賦課金の2・5倍への引き上げ、販売手数料の引き上げといった政策を講じました。この時代になぜ、と言う意見も多くありましたが、組合員意識を高揚していただくための苦肉の策でありました。随分抵抗もありましたが、この抵抗こそがJAのエネルギーだと感じました。その後、引き上げに賛同頂いた中で、『我らの農協』への意識は少しずつでは有りますが高まり、建設的な意見も随分多くなったと実感している所であります。


◆職員のぬるま湯体質を改善

 2つ目には職員の対応であります。JAが総合経営である所以もあると思いますが、他の企業と比して経営的に安定して今日まで来たため、厳しさに欠けるという事です。職員研修会等あらゆる機会で、地域の中小企業の現状を説明し、JAとの厳しさの違いを説明、更には将来に向けて、競争社会の進展を見据え、意識改革の必要性を訴えました。組合員と同様に、この程度では効果が薄く、労働時間の延長という全国のJAでは例の無い荒療治をもって改革を進めました(年間変形労働時間制による年間2000時間労働)。
 また、全員で知恵を出しアイディアを出し合って組合員サービスの向上、仕事の効率性向上をやろうと「提案制度」の創設、職員間のふれ合いが更に必要であろうと任意グループに「研修旅費」の支給制度、職員退職後、農業に従事する場合の「助成金制度」等の新しい制度も発足させました。厳しい環境ではありますが、メリハリをつけた支援も行うことと致しました。このような施策により、世界的な金融恐慌にあり、JA経営の厳しさも現実味を帯びる中、ぬるま湯体質が少し変わりつつあることを感ずる昨今であります。
 3つ目の組織基盤強化についてでありますが、生活店舗を経営している事もあり、さらなる組合員数の拡大を目指し「おさいふカード」なるシステムを開発し、総合ポイント制度の導入を致しました。これにより、1万5000人の新組合員の加入を頂き、管内人口に占める組合員の割合も全人口比40.9%、20歳以上人口51%になりました。これも女性部、青年部等の多大な支援の賜物であり、さらにこうした組織活動を通じての安定した基盤整備が重要であると考えます。
 この6年間の中で取り組んだ一端をのべましたが、この様な努力にも関わらず時代の流れは予想に反し、一層厳しさを増しております。すでに小手先の改革では追いつけず、構造的・抜本的かつ大胆な思い切った改革が急務であろうと思っています。井の中の蛙にならない為にも役員に外部からの人材も入れるなどし、JAとしての役割、使命を全うしなければなりません。
 JAの基盤が拡充され、組合員の皆様が『我らの農協』という意識の下で、役職員が一丸となってさらなる厳しさを見越した中で緊張感を持って智恵を出し、アイディアを出し、汗した時は、必ずや10年、15年と言わず永続的に地域に根ざした、なくてはならないJA、存在感あふれるJAとして活躍できるものと確信しております。

(2009.03.13)