提言

JAの現場から

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「地域企業」として評価されるJAを目指して

JAとぴあ浜松
代表理事専務 増谷 幸大

 当JA管内農業は、主に施設を活用した野菜・花き・果実の園芸地帯で、全国東西市場への輸送園芸産地として全国に名を馳せてきた。このような産地環境の中で05年の夏頃から高騰を始めた原油価格は、施設農家にとって深刻さを増してきた。

◆緊急利用還元による農業経営支援

JAとぴあ浜松代表理事専務 増谷幸大氏 当JA管内農業は、主に施設を活用した野菜・花き・果実の園芸地帯で、全国東西市場への輸送園芸産地として全国に名を馳せてきた。このような産地環境の中で05年の夏頃から高騰を始めた原油価格は、施設農家にとって深刻さを増してきた。そして、07年には穀物相場とともに緊急事態となり、対策として飼料、燃油のJA利用農家8100戸に対して総額1億7000万円の利用還元援助を実施した。
 翌08年も前年より様態は悪化、毎日のように燃油価格は上がり続け、営農重油はリッター当り117円まで上昇した。それに伴い輸送運賃の値上げや飼料、肥料をはじめとするダンボールなど出荷資材までの軒並み値上げは農家からの悲鳴となって表れた。
 このような状況から前年に続き、飼料、燃油はもちろんのこと肥料及び出荷資材まで範囲を拡大して支援対象とすることを決め08年度は、総額2億8000万円の緊急利用還元経営支援を実施した。

◆担い手育成に営農アドバイザー

 今回はこのように急なことで利用戻し的な支援を行ったわけであるが、ここ10年の間に当JA管内農業も耕作面積・農業生産額・生産資材の取扱高はともに全国の減少傾向値と同様に3割減となっているのが現状である。このような中で、何と言っても重要課題は担い手育成による農業振興方策である。
 まず、担い手を(1)法人または法人に準ずる企業的経営農家(2)専業農家(3)兼業農家の中で将来経営を拡大する意欲を持つ農家(4)ファーマーズマーケット会員農家等地域農業の発展、維持に大切な役割を担っている農家と位置づけた。そして、出向く営農指導員(男38名、女15名)を営農アドバイザーと名付け、担当作物と担当地区農家の生産に係る業務を行って、4年目を迎えて大変喜ばれている。
 特に行政と協力して農地の斡旋と集積を通じて多様な担い手を育成し、地域における農業振興と農地の維持保全と新規就農者・担い手育成支援講座を継続的に実施していくことが地域貢献と考えている。また、地域農業の発展の観点から現在、各種の生産者延べ7898人からなる42の生産者部会は、縦の流れは強いが、農家同士の連携が希薄となっている。産地として地域内の農家同士のつながりを強くするため、広域に対応できる営農アドバイザーを育て、産地総合力を発揮できる支援策により地域貢献につなげたい。
 
◆地域活性化につながるグループ活動への支援

 生活事業の中で地域文化への貢献活動は青壮年部・女性部のグループ活動に代表される。両者の活動に共通するのは、管内小学校や幼稚園の児童に農業体験を通して、農業や自然に対する理解を深めることや、いろいろな野菜の収穫体験から農業の大切さや食べ物の恵みを理解してもらうのに役立っている。
 また、600名余の女性部朝市グループは各々47会場で開市され、地産地消と地域住民のふれあい交流の場として地域活性化につながっている。特に女性部グループの中にある助け合い組織は、ふれあい活動として元気な高齢者を対象に要介護状態の回避を目指し、高齢者の楽しめる活動を展開している。このような数々の活動こそJAでなければできないものとして、続けていくことである。
 
◆組合員を中心とした信用取引基盤の強化

 信用事業の基本は資金を集め、融資をすることである。この資金となる貯金が合併15年目に入る09年4月には9041億円となり、14年間で2532億円増加した。04年より貯金の増加が目立ち、地域金融機関として選ばれる金融機関JAとなった。同時に組合員加入運動と相まって組合員7万2178人を数えるまでになっている。しかし、組合員構成をみると60歳以上が68%、これから地域を担う30〜50歳代が30・2%と低い構成である。従って、JAの強みである組合員に対する訪問活動強化によるサービス向上を目指し、組合員家族への提案活動を通じて取引拡大を図り、次世代に向けた取引基盤を強化することである。
 
◆経営・業務の効率化に向けて

 JAは総合経営であり、組合員のニーズが多様化している中、満足度を向上させることは難しい課題である。これに応えるためには、財務内容が健全なことが重要であることは言うまでもない。
 健全経営のため、部門収支や人材育成と内部けん制上の問題、そして、今までのように利便性だけでは次世代層への満足度を高め、利用度深耕と組織存続のためには無理があることから、1995年の合併当初に107店舗あった店舗を09年6月までに75店舗とした。こうしたこともあり、08年度の決算は総資産9719億円、経常利益36億円となってあらわれた。
 また、地元企業との所得比較ではこの地域にあるスズキ(株)、ヤマハ(株)、浜松ホトニクス(株)、浜松信用金庫等に次ぐ位置を目指してきた。今やJAとぴあ浜松は「JA」も「浜松」も取れ、「とぴあ」で通用するまでになった。今後、地域企業として評価されるJAとなるため、経済団体であることを自覚しながら常に変化する環境の中で浜松地域の特性を活かし、都市との共生、農と暮らしが一体となった社会の構築を基本理念として次世代へ引き継ぐJA、農業の展開に取り組んでいかなければと思う。
 
【略歴】
(ますや・ゆきひろ)
昭和22年浜松市生まれ、
45年明治大学卒、旧浜松市南農協入組、平成17年とぴあ浜松農協常務理事就任、19年代表理事専務就任
   

(2009.08.11)