提言

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絶えざる改革と挑戦なくしてJAの将来はない

特集・新たな協同の創造と農と共生の時代づくりをめざして
JA広島中央会
村上光雄 会長

 「大転換期に突入したJA」との環境認識を第25回JA全国大会議案は示し、そのうえでこれまでの組合員間の協同を再構築し、多様な人・組織が多様な方法で連携・ネットワークを構築する「新たな協同の創造」を提起した。
 これを実現するために各JAは現状をどう認識しどのように改革していかなければならないのかを、村上光雄JA広島中央会会長に提言してもらった。

絶えざる改革と挑戦なくしてJAの将来はない

新たな協同の創造と新たなJAづくり

JA広島中央会 村上光雄会長 私は経営とは時代の変化にどのように対応していくかということであり、絶えず改革していくという問題意識と変化に対して挑戦していくという前向きな姿勢なくしてJA組織の将来はないと思っている。
 議論していて壁に直面するとよく出てくる言葉が「原点に帰る」ということである。難しい議論もこの言葉が出てくると何となく納得したような気分になるから不思議である。ある意味ではこの言葉が逃げ場となっているようにも思える。中には「原点に帰る」というと昔に帰るかのように錯覚して「昔はよかった」で終わってしまうこともある。
 原点とは言うまでもなく「組合員の心」であり、「組合員のJA」であり、「役職員のJA」ではない、ましてや「連合会のJA」でもない。要するに「組合員あってのJA」ということである。
 その主人公たる組合員の生活基盤は刻々と変化し、取りまく経済社会情勢もめまぐるしく変化している。それにつれて組合員の意識「組合員の心」が変化していくのも当然である。
 私達はもはや後戻りすることは不可能である。組合員を取りまく情勢の変化と組合員の意識の変化を的確に把握・分析し、絶えず新しいJA運動を創造していくという気概を持つことが必要である。
 ここで視点を変えてみると、今や市場万能、マネー万能の新自由主義経済は破綻し、協同組合精神に基づく経済運営が見直されている。今こそ私たち協同組合セクターの出番であるし、踏み出さなければならない。
 ある会合で女性組合員の80%が生協組合員であるということを耳にし唖然とした。ここまで来ると現場では事業面でかなり競合、摩擦が生じていることは想像できる。
 私の現状認識の甘さを反省すると共に、今こそJA、生協といった領域を超えた協同組合間連携、さらに事業共同について真剣に検討しなければならない段階に来ているように思える。協同組合セクターとしての共同行動に新たな協同の創造の糸口があるようにも思える。広島から何らかのアクションを起こしていきたい。


JA組織3つの甘え構造

 以前からJA組織には危機意識ではなく甘えの構造があるように思えてならない。全国大会を契機にお互いに胸に手をあてて考えてみてもらいたい。

(1)JAは潰れないだろうという甘え
 企業の寿命は30年。今頃は変化のスピードが早いので10年とも言われている。
 実際にアッという問に急成長し、アッという間に潰れていく。それに比べてJA組織は戦後からでも60年、活動し続けている。(実際には破綻JAは救済合併されている)
 そのことからすると何とかなってきた訳であり、JA組織が経営サイドからみても優れた組織であるということである。あれこれ言っても協同精神によって特定の組合員を囲い込んでいることは絶対に優位であり、有利である。
 しかし、その強みである囲い込み手法が企業の会員制度、ポイント制度などにより浸食されつつあり、JAの優位性が崩されつつある。JA組織としての特異性を発揮する手法を構築していかないと組合員が離れていってしまう。今度こそ本当に潰れるかもしれない。
(2)組合員だから利用するのが当たり前という組合員への甘え
 今はかなり少なくなってきたように思うが、事業が伸びないのは組合員が利用しないからだと責任を転嫁してしまう。組合員が利用しないのは何が原因なのかということを考えようとしない役職員、これこそ主客転倒といえる。自已点検が必要である。
(3)単協の連合会、連合会の単協への甘え
 経営が悪くなっても系統組織だから何とかしてもらえるだろう。いざという時は連合会に言えば何とかなるだろうという甘え。その逆に最後には単協が協力してくれるだろうという連合会の甘えもある。要するに、もたれあい構造になっているということである。
 やはり自己完結意識、自己完結能力を備えないと本当の改善も改革も生まれてこないのではないだろうか。


JAの農業経営参画への対応

 今大会では農地法改正を受けてのJA本体での農業経営参画が大きな議論となっている。以前からJAによる農業経営は両刃の剣だと思っているし、これでJAの存在が試されているとも言える。従って軽々に手を出すべきでもないし、短絡的に出来る訳がないと投げ出すべきでもない。要はJAが農地と農業生産にどのようにかかわっていくかの問題である。
 そもそもJAは農地所有の組合員によって構成されている以上、組合員の農地をどのように管理していくかを組合員と一緒になって考えなければならない。といってすべてをJAが背負うことは不可能であり、行政、農業委員会と一体となって農地管理センターのようなものを設立して農地の有効活用を考え実施していかなければならない。
 このことは集落法人についても同様である。集落はJAの原細胞であり原組織である。
 その集落の構成員である組合員が智恵と労力を出し合って集落機能、集落営農を守り発展させようとしていることに対してJAは一緒になって考えるべきである。そのことが集落を守り、JAを守ることに通じると確信する。
 次に農業経営への参画であるが、そこにたどり着くまでにはやるべきことがいろいろあり、段階を踏むべきである。広域合併前のJAでたばこ耕作、農作業受託を直営的に経営したことがあるが、その時も個人で出来なければ隣近所、それもダメなら集落、そして機械利用組合と段階的に進めてきた。そこでこれからも集落法人への出資等の支援もして最終的にどうしてもダメならJA直営に進むべきだと考える。又その時も行政、農業委員会等と一体的に検討、協力して実施すべき事業だと考える。
おわりに
 「百年に一度」とよく言われるが、何が本当に百年に一度なのか、その危機感も悲壮感も伝わってこない。何も内容がないということである。JA全国大会は「大転換期」である。何が本当に大転換しているのかよくよく理解され、対応しないとJAの将来はないといっても過言ではあるまい。
 最後に、進化論のダーウィンの言葉を借りて締めとします。
 「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢いものが生き残るものでもない 唯一生き残るのは、変化できる者である」


【略歴】
むらかみ・みつお  昭和17年生まれ。岡山大学農学部卒。44年三和町農協監事、53年広島県農協青壮年連盟委員長、三和町農協理事、54年全国農協青年組織協議会副委員長、56年双三三和町農協組合長理事、63年広島県信連専務理事、平成3年三次農協理事、6年広島県農協中央会専務理事、7年三次農協代表理事組合長、18年広島県農協中央会会長、19年全中理事

(2009.07.22)