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【もの申す】 市場経済になったんだ!勘違いさせるな!

安高澄夫

 日本農業のことなんか知るもんか!」と言いたくなるような農業政策ですが、そう短気にならないで...。あなただけじゃなく、あなたのお子さんやお孫さんが暮らすこの国ですから...。

 日本農業のことなんか知るもんか!」と言いたくなるような農業政策ですが、そう短気にならないで…。あなただけじゃなく、あなたのお子さんやお孫さんが暮らすこの国ですから…。
 ちょっとひと昔前と比べて、農業の雰囲気が変わったと思いませんか。そうなんです。変わったんです。180度旋回するような大転換なんです。食糧管理制度はなくなったんですよ。食糧管理法は、売り先と価格を規制していた。これは管理経済です。つまり、社会主義経済だったんです。
 食管法から食糧法へ変わったということは、社会主義から資本主義に変わったってこと。管理経済から市場経済へ変わったんです。政府の指示で生産するんじゃなく、市場の要望や注文に応じて生産するんです。
 市場経済なのに政府の「指示待ち」農業をやっていたら、自ら逆風に突っ込んでいるようなもの。市場経済は競争原理で動いてる。所得補償では経営者がダメになる。競争力はつかない。競争力をつける方法はただひとつ、競争すること。
 お役所に文句を言ってる場合じゃない。マーケットから文句を言われてるんです。だから売れんのです。
 お上に陳情する暇があったら、営業しなきゃ。
 食糧管理法は1995年になくなったんです。
 おコメの世界は、社会主義的な管理経済が続いているかのような見せかけしてきたようだ。食管法がなくなったのに、需給調整と価格維持を政府にすがってたんじゃ、市場経済なんて言えんだろう。
「昨日までは右側通行、今日からは左側通行」というくらいの大転換だったのに、その変化を誤魔化しちゃった。そのあいだに、農業が市場経済の原理に包囲されちまった。農業生産者は、食管法が続いているかのような勘違いをさせられた。
 食管法とともに歩み、管理経済の中で大活躍した農協だった。市場経済に変わった15年前は、農協が大転換できるチャンスだった。にもかかわらず、管理経済に恋々としてしまった。
 変わらなければ「沈みゆく船」となるだろうが、決して「沈みゆく泥舟」じゃない。
 かつては見事な活躍をした船だった。管理経済という湖だと勘違いしている船長が、市場経済という荒海を渡っているから危ない。
 農協法は食糧管理法時代のままなんです。農業との関わりが薄い正組合員が9割になった。これじゃ営農販売事業に舵を切れない。信用事業の制約があるから、経済事業が萎縮する。
 制度や仕組みを改めれば、生き生きと動き出す農協組織なんです。農家とのつながり、地域における信頼、組織の連携、職員の熱意などはこの国を蘇らせるために不可欠なんです。
 農協は、法に縛られて動き難い船になった。しかし、断じて「泥舟」ではない。

※安高さんの「高」の字は正式には旧字体です。

(2009.12.24)