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この人と語る21世紀のアグリビジネス

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「エコ」対応 パワフルに  きめ細かいサービス展開 コマツリフト株式会社代表取締役社長 礒田信也氏

・回生電力を再利用
・長時間稼動が可能に
・食料危機への対応を

 礒田社長は『エコ』への配慮を経営課題とする企業が多くなったと指摘し、排気ガスを出さない自社の機種を紹介。また販売政策などを語り、リースやレンタルについても「顧客が望む機械の提供方法をできるだけ多く用意している」と、きめ細かいサービス体制を強調した。

コマツリフト株式会社代表取締役社長 礒田信也氏 ――組織再編で昨年10月にコマツリフトが発足しました。狙いは国内販売体制の強化ですか。
 「コマツユーテリティ(株)の国内事業部と連結子会社の販売店9社を経営統合して発足しましたが、これは、経済環境が激変し、国内総需要が07年度比でほぼ半減した中で効率化を図りながら、お客様への対応力を落とさないようにするためです」
 ――すごい合理化でしたね。お客というのはやはり法人中心ですか。
 「そうです。メーカーやJA、食品関係とか。私はずっと建設機械のほうにいましたが、フォークリフトのお客様は建機よりもはるかに業種の裾野が広いですね」
 ――景気動向の影響を受けやすいのでは?
 「リーマンショック以後は外需系の企業の需要が大幅に落ちましたが、内需系の落ち幅はそれほどでもなかったのです」
 ――全体として今は少し回復しましたか。
 「外需系の電機、自動車関係で抑えられていた投資が少し出てきたし、政府の政策その他で最近は生産量も増えてきており、それを背景にリフト需要も回復してきています」
 「でも前年比でプラスというだけで、07〜08年に比べれば60〜65%止まりです。今後も数年間の期待できるレベルはその程度と見られます」
 ――ずいぶんシビアな見方ですね。
 「他の業界の見方も同様ですよ」
 ――建機とフォークリフトは別々に顧客開拓をするのですか。

◆回生電力を再利用

 「そうです。建機とリフトの顧客はほとんど重なっておらず、1つの例ですが、自動車工場の場合、リフトは持っていても建機は持ちません。だから建機の営業先は、それを保有して工場の建設や営繕を請け負っている建設業者ということになるのです」
 「話は別ですが、リフトを初めて買うというお客様は少ないのです。他社のリフトばかりをそろえているお客様には『コマツの製品もご利用下さい』と勧めたりします」
 ――リフトの改良状況はどうでしょうか。
 「安全安心が基本ですが、近年の大きなテーマは『エコロジー』です。お客様の側も省エネやランニングコスト削減を含めて『どれだけ会社がエコを配慮しているか』を経営課題にする企業が多くなっています」
 ――コマツは排気ガスを出さないキャパシタハイブリッドというフォークリフトを07年に投入しました。
 「これは一般的なハイブリッドと違って基本的には電動なんですが、バッテリーからの電力に加えて、回生電力を再利用できるキャパシタという装置からの電力も使って2つの電源でモーターを動かすためハイブリットといっております」
 ――もう少し詳しく説明して下さい。
 「フォークリフトは走ったり止まったりする時に熱エネルギーを発生させます。従来のバッテリーフォークリフトはそのほとんどを回収できなかったのですが、キャパシタは100%近くを回収して電力に置き換え、回生電流として再利用します」

◆長時間稼動が可能に

 「バッテリーのほうも補水のいらないものを採用し、さらに約1時間で急速補充電できる新開発のインバータ充電器を搭載していますから、例えば朝から稼動し、昼休みに補充電すれば午後もすぐ使えるといった形での長時間稼動が可能です」
 ――セールスポイントが多いのですね。
 「お客様からは『コンパクトな車体ながら、安全安心の性能と、長時間稼動に耐えるという2つのメリットがある』などと評価されています。フォークリフトはバック時の事故が多いのですが、この機種は後方の視界も通常のバッテリー車と同様の視界を確保しています」
 ――他社の機械との競合はどうですか。
 「エンジンハイブリッドは排気ガスが出ます」
 ――食品企業とか屋内作業などは排気ガスをいやがります。
 「ディーゼルが主流だった青果や魚の卸市場関係ではバッテリー化が急速に進んでおり、今後はハイブリッド化も進むでしよう。市場関係は稼動時間が長いから、やはりキャパシタハイブリッドです」
 ――御社の体制の特徴はどうでしようか。
 「従業員数1900人のうちサービスが約1000人、営業が500人います」
 ――サービスが多いのは故障の修理ですか。
 「修理と安全検査が半々です。検査というのは国の代行業務で、従業員が資格を取得して行います。管轄は厚労省です」
 ――車検みたいなものですね。ところで、お客向けの研修制度があるということですが。
 「コマツグループの中に車両教習所の会社があり、そこがリフトも建機も含めて資格を取得するお客様に講習を実施しています」

◆食料危機への対応を

 ――リフトのリース制度もありますね。
 「外部のリース会社と協力しながらやっていますが、グループの中にもコマツビジネスサポートというファイナンス機能を持った会社があってコマツグループ全体のファイナンス部門を担っています」
 「当社としてはお客様が望む機械の提供方法をできるだけ多く用意することを心がけています」
 ――短期間のリースもあるんですか。
 「すでに契約しているリース台数に上乗せして1週間だけ数台を余分に借りたいという注文にはその分をレンタルで貸すという対応もできます」
 「数年間といった長期の場合はメンテナンス費用などの多い月と少ない月がありますから毎月のリース費用を平準化した形の長期契約にして運用したいといった注文も結構多いのですよ。とにかく市場関係なんかは大半が今はリースです」
 ――JAについてはどうですか。
 「生産者サイドでは保有資産として持っているケースと、産地によってコメやリンゴなど収穫期にスポット的にレンタルする場合があります」
 ――最後に世界の食料事情や日本の自給率についてどう見ていらっしゃるか、お聞かせ下さい。
 
「マスコミにしても世界の食料事情がどれだけ危機的な状況になっているかをきちんと継続的に報道したり、対策を提起したりしていませんね。おカネさえあれば何でも手に入るという幻想をまだ引きずっているような気がします」
 「農業も企業経営みたいな形で国際競争力を持ち、結果として利益を生む仕事になり、なおかつ食料自給率が上がるといった政策や議論があってしかるべきだと思います」
 「中国やインドなどの人口は今後も増え続けるでしよう。とくに中国の経済動向はこれまでも鉄とか石炭など資源の国際的な需給に大きな影響を与えてきました。食料でも同じようなことが今後も起きると思います」
 「日本では朝ごはんを食べない子どもが増えていますが、主食のコメの消費はもっと拡大しないといけないと思います」

【略歴】
(いそだ・しんや)
昭和28年1月兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。昭和50年(株)小松製作所入社、平成17年4月コマツ近畿代表取締役社長、21年2月コマツユーティリティ(株)常務執行役員・国内事業部長、10月同社取締役常務執行役員(兼)コマツリフト(株)代表取締役社長。


インタビューを終えて
 本社は、東京都内しながわ区民公園の借景を楽しめる場所にある。少し手狭といっても自社ビル。フオークリフトの国内販売シェア20%弱がコマツ製、それだけに、リーマンショック後の落ち込みは激しかった。現在は回復し以前の60〜65%だという。フオークリフトの顧客は法人がほとんど。米袋、ジャガイモ、野菜、肥料など重量物を運んで倉庫内、港湾、市場を忙しく走り回るフオークリフトを想像する。
 礒田社長は、昨年10月創立の新会社の社長に抜擢された。兵庫県出身、都内のマンション住まいの単身赴任。外食・店屋物はすぐ飽きて、今は自炊。朝は必ずご飯を炊く。他の単身赴任社員にも自炊を勧めている。奥様は時々上京し、その時は東京案内する。上野、根津、本所など歴史小説の宮部みゆきの世界を二人で散策する。東京の街歩きを楽しむ。娘さん2人は既にOL。趣味はゴルフと自宅に帰った時の庭弄り。(坂田)
 

【著者】インタビュアー坂田正通(本紙論説委員)
           コマツリフト株式会社代表取締役社長

(2010.04.13)