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「作りあげよう! 実践しよう! 自らの手で」―地域営農ビジョン策定・実践強化全国運動

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第1回 インタビュー 飛田稔章・JA全中副会長(担い手・農地対策推進委員会委員長)

・運動の背景と目的
・農を通じた地域づくりも課題
・JAは組合員の支援を

 JAグループは全国の集落で(1)担い手経営の明確化と育成、(2)多様な担い手の役割発揮、(3)JAの生産・販売提案をふまえた産地づくり、(4)農を通じた豊かな地域づくりを重点課題とする「地域営農ビジョン策定・実践強化全国運動」に取り組む。本紙では全国でこの運動が進むよう現場の努力や工夫、課題などを探っていくシリーズ「作りあげよう! 実践しよう! 自らの手で」をスタートさせる。第1回はJA全中の担い手・農地対策推進委員会の委員長である飛田稔章・全中副会長に運動の目的やJAの役割などを聞いた。

JAトップのリーダーシップに期待

◆運動の背景と目的


 ――最初にこの全国運動の位置づけをお聞かせください。

飛田稔章・JA全中副会長 全中は昨年5月に「東日本大震災をふまえた農業復権に向けた提言」を決めましたが、今回の全国運動はその具体策として決定したものです。これは第26回JA全国大会議案のなかの「持続可能な農業の実現に向けた実践事項」の重要な柱でもあります。
 一方で、国は「人・農地プラン」(地域農業マスタープラン)の取り組みを進めていますが、持続可能な農業を実現しようというわれわれの「地域営農ビジョン」とめざすところは一致していますから、行政とも連携して「人・農地プラン」と一体的な策定と実践を進めていこうという位置づけです。

 ――運動の目的は何でしょうか。

 3つあります。
 1つは地域農業の生産拡大を図ること。2つめは農業所得の向上に結びつけること。
 そして3つめは、農を通じた豊かな地域づくりを実現していこうということです。
 この運動は地域農業を支えてきた農家が高齢化し、世代交代が進むなかで、農家の所得確保を図り農地を次世代に引き継いでいこうという取り組みです。
 その主役は農家です。農家組合員のみなさんが徹底的に話し合って、5年後、10年後の集落や地域の将来像を考えてもらいたいと思っています。
 つまり、自分の地域や農業をどうしていきたいかは営農に携わる農業者本人が基本になって考えていくことです。今回の運動ではそれを地域農業の担い手として位置づけ、どう育てていくかということに必ず結びつける。そこが大事だと思っています。


◆農を通じた地域づくりも課題

 ――「地域づくり」を目的のなかに掲げましたが、その狙いは?

 農業を展開するうえで何が大事かといえば、やはり人と人とのつながりです。地域のなかで人のつながりを大事にし、お互いに協力し合いながら、ということを重要視した取り組みを図っていくことが「地域づくり」でもあるということです。
 農業は一人でぽつんとできるものではないですね。農地があって担い手がいて地域を守っていくという、この3つがしっかりかみ合わないといけません。

 ――JAグループはこれまで「水田農業ビジョン」や集落営農の組織化など水田農業を課題にした運動を展開してきました。今回は水田農業に限らず全国の集落からビジョンをつくるということですね。

 これまでは米は主食ということもあって米を中心にした運動展開だったことは事実です。
 しかし、今回は、地域農業全体という捉え方、つまり、米や野菜や果樹、畜産があって日本の農業が展開されていることを国民のみなさんにしっかり理解してもらうことが大事だとの考え方です。そのために、われわれがめざす農業の将来像とはこういう姿ですよ、と示すことに自ら集中的に取り組もうということです。
 それは日本の特徴を活かした農業を展開していくことを示すということ。海外のように広大な面積で農業をやるのとは違うわけですから。日本の良さを活かしながら農業生産をし国民の命を守っていくという方向を打ち出さないとなりません。
 そのためには各県ごとに考えていかなければならないし、県のなかでも農地や気候条件の違いは必ずあるわけですから、地域の特性を活かしたビジョンづくりが非常に大事になります。


◆JAは組合員の支援を

 ――運動展開にあたってのJAの役割は何でしょうか。

 日本のJAは総合農協であり、農業を守るだけでなくどう地域を守っていくか、そして最後は生活を守る、これがJAの使命だと思います。
 今回の運動は農家組合員が主役でJAはそれを支援していく役割にあります。具体的には、農家組合員の話し合いをサポートするため営農センターや支店を拠点に「地域営農支援チーム」を立ち上げていただきたいと思います。
 それから集落での話し合いと合意形成にあたっては、JAからの生産・販売提案、事業支援提案も積極的に行っていくことも必要です。その提案では(1)担い手経営体への農地集積、組織化・法人化支援、(2)担い手経営体への農業経営管理支援、TACなどによるJAの対応強化、(3)地域の特色ある産地づくりに向けた生産・販売提案が重要ではないかと提起しています。

 ――JAのトップ層への期待をお聞かせください。

 何が大事かといえば、JAトップの取り組み姿勢だと思っています。自分のJAをどのようにつくりあげていきたいのか、というリーダーシップがなければなりません。
 とくに担い手経営体に加え、ベテラン農家や兼業農家、女性など多様な担い手の皆さんにも役割を発揮してもらい、地域全体で営農を持続させていく集団的な取り組みをすすめるためには、JAの強いリーダシップが必要となります。
 そして、担い手の方々にはそれぞれ自分の考えがあると思います。こういう方向でいきたい、と。それを活かすための方策、仕組みづくり、それをしっかり地域の合意のもとに支援していくことがJAの大きな役割・使命だと思っています。トップの皆さんのリーダーシップを大いに期待しています。

 ――「地域営農ビジョン」づくりではありますが、まさに自分たちはどんなJAをめざすのか、という取り組みでもあるわけですね。

 そうですね。自分のJA管内をどのような地域にしていきたいかをきちんと描き、組合長をはじめトップ層自らが膝を交えて農家組合員と話し合いをしていただきたいと思っています。話し合いをすればいろいろな意見が出ます。そういう場に臨んでいただきたい。そこが大事です。
 この運動は、ビジョンの積み上げにより「地域農業戦略」の強化・再構築につながることとあわせ、組合員の世代交代が進むもとで、組合員とJAとの新たな絆をつくり、JA事業・組織・経営基盤の再構築を図る取り組みでもあります。
 今回決定した全国方針をふまえ、早急に運動への取り組み方針と推進具体策を決めて、行動をスタートしていただきたいと考えています。

           第1回

(2012.06.19)