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美味しい農産物と土づくり――土壌診断にもとづく土づくりと効率的な施肥

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第2回 減少し続ける堆肥、土づくり肥料

2〜3割りも減っている水稲の施肥量
乳白米発生率を高める後期窒素とけい酸の不足

 図1は、農林水産省の米生産費調査による10a当たりの化学肥料の施肥量の推移(暦年)である。平成18年の10aの窒素成分施用量は6.4kgであり、昭和45年と比較して36%強も減少しているが、特に平成10年代に入り30%以上の減少となっている。りん酸は20%程度、加里は30%を超える減少となっている。
  被覆肥料などの緩効性肥料や側条施肥法の普及による施肥量の減少も考えられるが、米の食味値を低下させない(蛋白質含有率を高めない)施肥管理が定着した影響が大きいと考えられる。
  一方、堆肥は平成18年が44kg強となっており、昭和55年との比較では4分の1以下であり、これも平成10年代以降大幅な減少となっている。

2〜3割りも減っている水稲の施肥量

 図1は、農林水産省の米生産費調査による10a当たりの化学肥料の施肥量の推移(暦年)である。平成18年の10aの窒素成分施用量は6.4kgであり、昭和45年と比較して36%強も減少しているが、特に平成10年代に入り30%以上の減少となっている。りん酸は20%程度、加里は30%を超える減少となっている。
  被覆肥料などの緩効性肥料や側条施肥法の普及による施肥量の減少も考えられるが、米の食味値を低下させない(蛋白質含有率を高めない)施肥管理が定着した影響が大きいと考えられる。
  一方、堆肥は平成18年が44kg強となっており、昭和55年との比較では4分の1以下であり、これも平成10年代以降大幅な減少となっている。

乳白米発生率を高める後期窒素とけい酸の不足

 ここで筆者が課題としてとらえているのは、堆肥施用の減少は地力窒素の低下を示しており、水稲による窒素吸収量は施肥窒素量以上であることを考えると、施肥量の減少は窒素収支としては負を拡大し、地力窒素を消耗し続ける側面があるという点である。
  このことが、後期窒素の不足による登熟の良化や乳白米発生率を高める一因にもなっている。
  このことから、施肥にあたっては地力の違いを考慮することが重要であるといえる。地力窒素の低い地域は、堆肥施用やワラ還元等によって地力の維持向上と、後期窒素を効かすことができるケイ酸質肥料・資材による土づくりが「充実した良質米」を作るには重要であると考えられる。
  過去に地力窒素を評価するのに、4週間の培養窒素は15mg/乾土100g以上が肥沃な土壌で、10mg以上必要といわれていた時期があったが、現在は8mgが基準となっている県もある。

土づくりの徹底で産地の信頼を確保する

 また、 表1に主要な土づくり肥料およびりん酸質肥料の生産量の推移(暦年)を示したが、年々減少の一途をたどっている。
  水稲の土づくり肥料の代表である石灰窒素は昭和45年と比較して5分の1に、ケイカルも5分の1になっているが最高だった昭和43年の111万トンに対しては6分の1ということになる。熔りんは、他の加工りん酸質肥料や輸入肥料に代わったこともあるが7分の1以下になった。一方、畑作の酸性改良が中心であるが、炭カル、消石灰など石灰質肥料は、半分となった。
  土づくり肥料の施用量がここまで減少した原因として、
 作物の作付面積の減少
 農業従事者の高齢化・婦女子依存度の高まり
 土づくりは重要と思っているが、土づくり肥料は重たく、多量施用のため散布作業が重労働
 土づくりは地道な取組みとはいえ、目に見える効果が出にくい
 有機農産物など有機志向の顕在化
などがあげられる。
  しかし筆者は、
 農産物価格の低迷による投資意欲の減退
と併せて、
 省略栽培が定着し、良質米など売れる米づくりへの意欲の希薄化
が大きいと考えている。
  その意味では、JAの販売対策の一環として、土壌診断にもとづく土づくりを徹底し、良質米生産地として、消費者・実需者の信頼の確保やブランド化に結びつけたいものである。

※吉田吉明氏の姓「吉」の字は、常用漢字で掲載しています。

【著者】吉田吉明
           コープケミカル(株)参与(技術士)

(2009.04.27)