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種苗開発の裏話

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第12話(最終回) 種苗開発の夢

・エジソンに並び称される農業者
・育種に一生を賭す

 植物育種を語るとき避けては通れない人物の1人にルーサー=バーバンクがいる。100年程前に米国で活躍した偉大な育種家バーバンクは、世界恐慌の時代に人々の命を救ったことで有名なジャガイモ『バーバンクポテト』を始め、各種果樹や鑑賞植物など多種多様な植物に改良を加え数多くの品種を育成した。

◆エジソンに並び称される農業者

世界中で生産、販売されている「サンリッチ」ヒマワリ バーバンクの業績は、社会に与えた影響の大きさから、当時の米国で世の中に貢献した革新的な技術者としてエジソン、フォードと並び農業分野にこの人ありと賞賛された。
 彼がかつて育種を行なった農場の一部が、今もカリフォルニア州サンタローザに残されている。今見るとその施設はとても簡素である。しかし、この簡素な施設の中に立ち、一人の男が育種に一生を捧げたことを思うと胸が熱くなる。
 育種は一生を賭す価値がある。
 種苗開発を行なうブリーダー、その基礎技術を追求する研究者の夢が、いつか自分の手掛けた品種が世に出て広く喜ばれることであるのは今も昔も変わりない。


◆育種に一生を賭す

世界中で生産、販売されている「サンリッチ」ヒマワリ 動物である人間が最良の相棒である植物と良好な関係を保ち続けることが、ますます大事な時代になっている。人間はこれまでも植物の世話になってきたが、今後もそうだろう。上手に利用させてもらわなければならない。
 古来、日本人は植物との付き合いが得意であったと言われる。植物に目が利くから自然に付き合いがうまくなるのだろう。
 かつて恩師は「育種は、紙と鉛筆とピンセットがあればできる」と言ったものだ。改良的創造に秀でた国民性を活かし、日本がさまざまな作物において世界に冠たる育種大国と呼ばれるようになることを願う。
 際限なく続く育種を「植物との共生活動」の一部と捉え、これからも植物の恩恵を感じつつ育種に取り組んでいく。 (完)

(写真)
世界中で生産、販売されている「サンリッチ」ヒマワリ(タキイ種苗研究農場から)。著者である羽毛田氏が育成した。

【著者】羽毛田智明
           タキイ種苗(株)

(2010.06.29)