シリーズ

JAは地域の生命線

一覧に戻る

「支所」を核に新たなJAづくり  JAみなみ信州(長野県)

・「米以外」を旗印に農業振興
・選果場改革と販売戦略
・新わい化栽培の促進
・天空の郷で創意工夫
・域産域消でブランド化を図る

 長野県南部の「飯田下伊那」を管内とするJAみなみ信州は平成9年に6JAが合併し誕生した。農産物は果樹、野菜、畜産など多彩で、JAも合併以来、旧JAを基盤として地域事業本部制を導入して運営してきた。
 しかし、今年4月からは事業本部制を廃止、「支所」を核にしたJA運営の姿を築こうと新たな取り組みを始めている。矢澤輝海代表理事組合長は「支所ごとの特徴をしっかり発揮してひとつのJAをつくる」ことを目標に掲げている。

現地ルポ

JAみなみ信州(長野県)果樹・野菜・畜産――

多彩な生産をいかに持続させるか?


◆「米以外」を旗印に農業振興


標高1000mの「下栗の郷」 JAみなみ信州管内の特徴を表す言葉に「りんごの南限、お茶の北限」がある。
 この気候条件を生かし、リンゴのほか、モモ、ナシの3種すべてが栽培、出荷されている全国有数の産地である。お茶は生産量は少ないものの標高1000メートル近くでも栽培され、高地のお茶はタンニンが少なく甘みがあると評判だという。
 そのほかブランド品として定着した「市田柿」の産地でもあり畜産も盛ん、と多彩な産物を生み出している。
 「りんごの南限、お茶の北限」と、いわば寒流と暖流が交わるような地域とはいっても、それは農家が実際に作り続けたからこそ、結果として実証されたことである。
 矢澤輝海組合長は「見てのとおりこの地域には広い農地がありません。そこに苦労があったのでしょうが、逆に米以外に何を作ればいいのか考えた結果、いろいろ品目が増えたのだと思います」と話す。同じ伊那地方でも上伊那は有数の米産地だが、対照的に下伊那は「米以外」を旗印に農業を展開してきたといえる。
 矢澤組合長自身も自分の代から養豚経営を始め、これを軸に一家で野菜や米を作ってきた。養豚は種豚150頭の一貫経営。今は息子さんが専業農家として継承している。
 当然のことながら、こうした農家の創意工夫の積み重ねによる地域農業をいかに持続し発展させるかが、JAの課題となる。


(写真)標高1000mの「下栗の郷」

 

 

◆選果場改革と販売戦略


7月に竣工したばかりの北部果実選果場。モモの出荷最盛期を迎えていた。九州への販売が3割を占めるという そのための取り組みのひとつとして、8月に稼働したのが松川町の北部果実選果場だ。北部地域の4つの選果場を集約し、糖度センサーを導入した。モモ、ナシ、リンゴすべてを扱うことができる。合わせて7500トンを出荷する計画だ。
 選果場統合準備室長でもある田中一盛・松川支所長は糖度センサーの導入によって「大きさ、形だけでなく内容(味)を保証できる選果場になった」と話す。また集約化によって選果場での労働力を600人から150人に削減するなど固定費削減も実現できるという。
7月に竣工したばかりの北部果実選果場。モモの出荷最盛期を迎えていた。九州への販売が3割を占めるという さらに統合を機に、集出荷機能だけの選果場から脱皮し、販売センター機能も発揮することをめざす。具体的には市場の先にある量販店など小売り段階まで見通して商品提案するような取り組みだ。 たとえば、化粧箱に優良品を4つ箱詰めした贈答品用に商品化する。こうした商品化のために仲卸業者がこの選果場に足を運び産地と消費地で情報交換するといったイメージだ。
北部果実選果場にある直売所 一部ではすでにその戦略が実現している。それがモモ、ナシ、リンゴ共通の高級品ブランドとして評価の高い全国市場向けの「太鼓判」、特定市場向けの「大満足」である。基準は糖度13度以上。大きさは1ケース12玉から25玉までに区分する。 新しい選果場によってコスト削減と同時に利益をいかに産地と生産者に還元するか、その販売戦略を考えることが課題となった。選果場の統合は「生産者にとっては自分たちの出城がなくなるようなもの。どう組合員を新たな体制に引きつけていくか」(田中支所長)が問われるなか、糖度センサーによる「内容保証」をてこに新たな組織販売構築への取り組みを進めている。

 

(写真)
上・中:7月に竣工したばかりの北部果実選果場。モモの出荷最盛期を迎えていた。九州への販売が3割を占めるという
下:北部果実選果場にある直売所

 

 

 

◆新わい化栽培の促進


新わい化栽培でつくられたシナノドルチェ JAにとって販売戦略が重要なのはもちろんだが、高森支所の唐澤聖支所長は「技術と新品種で生産者は活性化する」とJAの営農指導の重要性も強調する。
 多彩な農産物生産を実現してきたのは個々の生産者のチャレンジがあったからこそ。そのチャレンジ精神を呼び起こす取り組みの1つがリンゴの「新わい化栽培」だ。
 ほ場を訪ねると1反に200本が植えられていた。列と列の間はトラックが入れるように開けてある。45年で成木になるが、2年めから収穫できる。剪定を必要とせず、なによりも樹高が3メートル程度と低く収穫作業のほとんどを地上で行うことができる。収穫量も1反で1000kgが期待できるという。
 中央ヨーロッパのチロルで導入され長野県もこれに注目、JAみなみ信州からも現地視察に行くなど、技術を学んできた。
りんごの新わい化栽培のほ場。1列に密植しその間にトラックが入れるように整備。地上での農作業がほとんどで労力削減と転落事故防止にもなる この新わい化栽培は高齢農家にとっても、安全に農作業ができるため「これならあと5年はがんばれる」との声も出ているという。また、定年帰農者にとっては、親のリンゴ園をそのまま引き継ぐのではない、自分の目標を持つことができる。通常は改植すれば5年間は収穫はないが、この方法なら2年で収穫できるから、「先が見える」と取り組む人も出てきたという。
写真左から高森支所・唐澤聖支所長、上郷支所・古木誠支所長、松川支所・田中一盛支所長 リンゴの主力品種はシナノスイート、シナノゴールド、ふじだがいずれも新わい化栽培が実現している。また、8月に収穫できる初つがるにも今後はJAとして力を入れていく方針だが、新わい化栽培の普及と合わせて生産を誘導していく方針だ。まさに「技術と新品種で生産者は活性化する」という取り組みだといえるだろう。今のところ普及面積目標は100haだという。

 

(写真)
上:新わい化栽培でつくられたシナノドルチェ
中:りんごの新わい化栽培のほ場。1列に密植しその間にトラックが入れるように整備。地上での農作業がほとんどで労力削減と転落事故防止にもなる
下:写真左から高森支所・唐澤聖支所長、上郷支所・古木誠支所長、松川支所・田中一盛支所長

 

◆天空の郷で創意工夫


写真右から営農部の今村明人部長、澤柳実也次長 広域のJA管内の特徴を営農部の澤?実也次長は「飯田市を中心とした北部は比較的平坦で果樹が中心。その南は山間地域で条件が厳しいところも多い。考える以上に地域差があります」と語る。
 多彩な農業が営まれているといっても、耕地条件は標高400mから1000mに及ぶ。いったい標高1000mの集落ではどんな農業が営まれているのだろうか。 南アルプスが眼前に迫るという飯田市上村の「下栗の郷」まで上がってみると、作業着姿の野牧年甫さんが、まさに山の斜面に貼り付くような畑で待ってくれていた。下を見ると足がすくみそうな山岳地帯である。
野牧年甫さん。手にしているのは新たに栽培している紫色のきれいな花、シンフォニーカルポス 今、ここに戸数49戸、109人が暮らす。小学生3人、保育園児1人がいるという。最近は某企業のテレビCMの撮影場所として有名になり、観光で訪れる人も多い。集落全体を眺められるビューポイントまでの山道は住民が自ら拓いた。
 こうした活動を通じて地域をもっと元気にしようと8年前に結成された「下栗里の会」代表の野牧武さんは元JA職員。現役時代はここから車で1時間以上かけて通勤していた。「毎日ドライブしてたようなもの」と笑う。
 会には特産品部会をつくり、野菜や雑穀の付加価値向上をめざしている。いちばんの特産品は下栗いもだ。この地で古くから栽培されていたジャガイモで、直径は4センチほどと小さいが味は評判。夏と秋に収穫できるから「二度いも」とも呼ばれる。
 信州大の協力で原種保存につとめ、また、ウイルスフリーの種イモの導入にも成功。収量も大きく増えた。直売所での販売のほか、東京の料亭からも引き合いがある。せんべいや焼酎といった加工品開発も手がけている。
 下栗いものほかは、キャベツ、ソバ、大豆、コンニャク、お茶などなど、急斜面の畑を案内してもらうと実に豊かな“山岳農業”が存在していることを実感できた。
「下栗里の会」会長の野牧武さん。日本のチロル、下栗の郷の地域ブランド化をめざす こんな急斜面での作業はきつくはないのですか、と聞くと「かえって楽なんだ。腰、曲げなくてもいいから」。たしかに38度もある斜面だから壁に向き合って農作業をするようなもの。「ただし、耕すときは下から上に土を上げる、です。そうしなかったら今ごろ畑なんかなくなってるよ」。
 標高1000mでの野牧さんたちとのこんな会話に大笑いしながらも、その発想に元気をもらった。
JA管内にはUターン、Iターンの新規就農者が年間30人ほどあるという。伊東啓吾さんは横浜から飯田市に移住した。「農業なら絶対に人の役に立つ」が動機。市のワーキングホリデーを利用し農業を実習、農家での研修を経てハウスキュウリを栽培して今年で2年。JAは新規就農者への生産資材費支援も行っている。 「自分のうちで何でも食べられるようにみんな熱心に作ってきた」というのがここの農業の原点だが、最近では花きの栽培にも取り組んでいる。JAからの指導でダリア、ヒペリカム、リアトリス、シンフォニーカルポスといった切り花を栽培し出荷、所得に結びつけている。ここの野菜は「信州の伝統野菜」に認定されているが、一方ではこうした時代に応じた新しい取り組みも進めているのである。

 

(写真上から)
・写真右から営農部の今村明人部長、澤柳実也次長
・野牧年甫さん。手にしているのは新たに栽培している紫色のきれいな花、シンフォニーカルポス
・「下栗里の会」会長の野牧武さん。日本のチロル、下栗の郷の地域ブランド化をめざす
・新規就農者が年間30人:JA管内にはUターン、Iターンの新規就農者が年間30人ほどあるという。伊東啓吾さんは横浜から飯田市に移住した。「農業なら絶対に人の役に立つ」が動機。市のワーキングホリデーを利用し農業を実習、農家での研修を経てハウスキュウリを栽培して今年で2年。JAは新規就農者への生産資材費支援も行っている。

 

◆域産域消でブランド化を図る


下栗いもは小粒だがでんぷん価が高い。上村の特産品直売所で 下栗の郷の農業は産物だけでなく、熱心な農業が人を引きつける景観を作り出す。その意味で地域そのものをブランド化する取り組みだといえる。
 他の地域にもそれぞれに伝統野菜があり、JAはそれを各地域の農業振興策のひとつとして位置づけている。
 ただ、発信先はまずは地域内だという。営農部の澤柳次長は「外で認めてもらうには地域内でプレミアムをつけてもらうしかない。飯田下伊那の17万8000人に関心をもってもらうことが大事」と話す。
飯田市内には「南信州牛」ののぼり旗を立てた飲食店が多い。地元の人から認知度を高める取り組みだ 野菜以外でそれが実現している例がある。飯田市内には「南信州牛」ののぼり旗を立てている焼き肉店が多い。牛肉を地域ブランドとして売りだそうと6年前から取り組みを始めた。積極的に働きかけがあったのは地元の飲食店組合だという。豚肉でもブランド豚として地域の飲食店が扱っているものもある。これらはもちろん生産者、JAとの連携で実現している。JAは「域産域消」も地域農業振興の課題としている。
 上郷支所の古木誠支所長は「こうした課題に支所からボトムアップでいかに取り組むか、です。多様な農業を持続させ、いずれは南信州全体をブランド化することもテーマ」と話していた。

 

(写真)
上:下栗いもは小粒だがでんぷん価が高い。上村の特産品直売所で
下:飯田市内には「南信州牛」ののぼり旗を立てた飲食店が多い。地元の人から認知度を高める取り組みだ

 

澤柳実也次長の「柳」の字は正式には外字です。

 

 


矢澤輝海代表理事組合長に聞く


支所単位で経営会議 

地域特性を明確に打ち出す


◆地域事業本部は廃止

 今村 管内面積は香川県よりも大きいですね。この広大な地域でJAを運営していく基本理念をまずお話いただけますか。
 矢澤 6JAが合併しそれ以来15年間、6つの旧JA単位での地域事業本部制で運営してきました。
矢澤輝海代表理事組合長 しかし、地域事業本部制では、それぞれの本部が抱える問題が原因となって、なかなかJAとしてひとつの考え方になれなかった。そこで今年の総代会で地域事業本部制の廃止を承認してもらい、今後は11の基幹支所と金融のみの5支所の合わせて16支所体制で運営していく方向で進んでいます。
 今までは本所、地域事業本部、そして支所という3段階のなかで組合員対応をしてきたわけですが、今後は支所機能を確実に発揮するということです。そのために支所長に大きな権限を持たせました。
 今村 ボトムアップ路線ですね。
 矢澤 本所からの指示はしますが、それを支所長がどう判断しどう生かしていくかは任せます。経営状況も厳しくなっていますから、その支所の収支をしっかり支所長に把握してもらい、支所ごとに選出されている理事とも一緒になって、月に1回は支所の経営会議をしてもらう。そこで運営の方向づけや組合員対応を考えてもらうという方針です。
 その支所の方針に対して本所はどう対応すべきかを考えていく、という農協づくりをしていきたいと考えているんです。


◆支所長の権限増やす

 今村 支所ごとの特徴をはっきり打ち出していこうということですか。
 矢澤 そうです。そこをはっきり出していかないと。合併して組織は大きくなったものの情報や指示が行き届かないという問題もありました。ですから、そこはもうある程度、支所長の判断で進めてもらおうということです。
 今村 支所長の責任は重くなる、と?
 矢澤 はい。しっかり重くしていきたいと思っています(笑)。
 これを全面に出していかないと組合員が、支所長はそんなに権限もないのか? ということになってしまう。これではいけません。組合員は支所を拠点にJAと関わっているわけですから。
 今村 11の基幹支所の責任は営農指導から金融・共済まで多方面にわたるわけですね。ということは、合併から15年、今後は支所単位から改めて新しい農協をつくろう、といった狙いもあるわけですか。
 矢澤 そこにつなげていかなければいけないと思っています。
 今、職員は960人ほどいますが、なかには本所からの指示がないから動けないとか、連絡を聞いていないからできない、といった風潮もあった。だから、そんな言動が出ないような体制にするには、どうしても身近な支所長が指示する体制にする必要があると思っていました。
 理事についても今までは理事会に出ていれば自分の使命を果たせると考えている理事も多かったわけです。しかし、地域の支所を盛り上げるには理事も一緒になって支所長や職員と膝を交え、事業をどうするのか、組合員対応をどうするのかということに役割を果たしてもらいたいということです。
 今村 新体制の課題はどういう点にありますか。
 矢澤 役員も職員も自分から進んで仕事に取り組む、ということだと思います。これはやはり農協経営が厳しくなっているという現実をみんなで共有してもらわなければならないと思ってのことです。
 そのなかでいずれは支所ごとに、たとえば、わが支所はこの作物を重点にしていくといった方向を打ち出してもらわなければいけないと考えています。


◆本所は全体の戦略づくり

 今村 支所の独立性を強める一方でJAとしては本所を中心に全体としてどういう路線を築くかということも同時に打ち出さなければならないと思いますが、そこにはどう取り組まれますか。
 矢澤 支所を重視するということは本所は極力こぢんまりした体制にしなければならないと思っています。ただ、単に縮小するのでは支所にまとめる大方針を発信できるか、つまり、その「頭」を形成できるかという課題があると思っています。
 今村 いろいろな農産物がありますから、販売戦略や6次産業化、農商工連携などのテーマにJA全体としてどう取り組むかという課題がありますね。
 矢澤 たとえば「市田柿」はおかげさまで1つのブランドとして定着しました。しかし、ブランドとして定着すると業者も農家に接近するようになる。これはどこの地域でも課題だと思いますが、いわば市田柿の分捕り合戦みたいな話になるわけです。
 これをどう農協が集めるかですが、われわれはJAとして子会社「農業法人市田柿本舗ぷらう」を立ち上げました。これは集荷するだけでなく高齢化でもう生産ができないという農家に対して、生産も支援して買い取り、さらに加工して販売するという会社です。今年で3年ですが、これを充実させて農協の力を発揮していかなければならないと考えています。
 今村 もうひとつの大きな課題は人材をどうつくるかだと思います。
 矢澤 人づくりがいちばん難しいと思っています。高度成長から今のように低成長の時代になってもなかなかその切り替えや引き継ぎがうまくいっていないのが農協だと思っています。いい時代の事業のやり方を新しい職員に引き継いでもそれでは組合員はついてこない、といったことがある。昔流ではだめで新しい時代のなかで切り替えを早くしないといけない。
 今は農業に飛び込めばお金になるという考えの企業が多い。そういう企業がどんどん飛び込んで来て、組合員を巻き込もうとするわけです。それに対しては農協が新しい事業のやり方を示していかなければだめだと思っているんです。
 今、日本農業は、地域の農協が一番厳しい状況に置かれています。この状況に対して、県の連合会、全国の連合会はどのような指導をしてくれるのか。われわれは地域の人的結合体として信頼される組織づくりに励みながら、同時に全国組織へ現状理解を促し、新しい時代の中でより高いレベルのJAグループを構築していきたいと考えています。

 


人を活かす 地域を興す ネットワークを拡げる

今村奈良臣(東大名誉教授・JC総研 研究所長)


人を活かす 地域を興す ネットワークを拡げる JAみなみ信州の管内の面積は広大であり、四国の香川県の面積を上回るという。長野県南の中心地飯田市を拠点に下伊那地域全体をその管内に持つ。地域の中央を天竜川が流れ、河岸段丘が発達し、耕地は標高400メートルから1000メートルに分布、東西に南アルプス、中央アルプスの美しい景観に恵まれて、その立地特性を生かし、かつての養蚕王国から大きく転換し、モモ、ナシ、リンゴ、柿などの果樹、きのこ、お茶、多彩な野菜、そして肉用牛、養豚など、地域ごとの特産品が多彩である。
 しかし、その立地特性の反面は、中山間地域が多く、耕地狭小のため、ご多聞にもれず過疎、高齢化の波がひたひたと押し寄せている。
 こうした実態を踏まえ、JAみなみ信州は今年から大胆な組織改革に取り組んでいる。合併当初の旧6JAごとの6地域事業本部体制を改め、16支所(基幹支所11、金融支所5)に再編した。各支所は、地域ごとの農業の特性、組合員の自主性の発揮とともに支所長の権限を大幅に拡大し、支所ごとの大胆な発展戦略を打ち出す方向へ改革を進めている。かつてのトップ・ダウン路線からボトム・アップ路線への大胆な転換を通じて地域の活性化をはかろうという組織改革路線である。この改革を私なりに表現するならば、「人を活かす、地域を興す、ネットワークを拡げる」ということになろう。支所長と地域選出の理事とが携えて、地域特性を発揮する新路線を打ち出し、JA本部に持ち寄り、討議を深め、JA全体の戦略を打ち出す方向へ舵を切ったのである。
 JAみなみ信州はワンフロアー化のトップランナーであった。JAと市町村行政、農業委員会が振興センターをつくり地域振興に努めている。
 さらに歯科診療所もJAは持ち、辺地の高齢者のためにも巡回診療車を用意している。地産地消をさらに進め、「域産域消」を掲げつつ、首都圏と中部圏双方の中間点にある立地を活かし、地域特産品のブランド化を進めつつ、販売戦略の新たな展開を推進している。

(2011.08.15)