シリーズ

信用・共済分離論を排す

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准組合員問題を考える

―総合JA批判の背景とはその10―
・地域組合か職能組合か
・どう対応すべきか

 (社)JC総研の調査によれば、准組合員対応は重要課題としながらも、具体的な対応方針は決めていないJAが多いという結果が出ています。また、准組合員になるきっかけはローン利用者など信用事業とのかかわりが大きいといいます(本紙6月10日号)。
 総合JAにとって、今や欠かせない存在の准組合員について具体的な対応方針が決められていない理由はどこにあるのでしょうか。

◆地域組合か職能組合か

 (社)JC総研の調査によれば、准組合員対応は重要課題としながらも、具体的な対応方針は決めていないJAが多いという結果が出ています。また、准組合員になるきっかけはローン利用者など信用事業とのかかわりが大きいといいます(本紙6月10日号)。
 総合JAにとって、今や欠かせない存在の准組合員について具体的な対応方針が決められていない理由はどこにあるのでしょうか。それは、この問題がJA組織の本質問題を抱えているからです。JAの存在目的については、農業振興が目的とする意見と農業だけでなく広く地域振興を目的とする意見の二つがあります。
 これまで、JA組織の性格について様々な意見が出されてきましたが、大きくはこの農業振興を目的とする「職能組合論」と地域振興を目的とする「地域組合論」でした。この論争は、経済成長の中で「地域組合論」優勢のうちに決着がついたと思われました。
 しかし、経済成長が止まり農業の重要性が高まる中、急速に「職能組合論」が台頭してきました。その中心的役割を果たしているのが農水省です。農水省はJAを農業振興の手段のみとする指導を強めており、JAの第1の事業を営農指導事業とするなどの法改正を行い、また生活関連事業の合理化を迫ってきました(農協のあり方についての研究会報告)。
 こうした中で、JAが農業生産に直接のかかわりを持たない准組合員の対応方針を明確にして行くことは難しい環境にあり、JAでもこれに躊躇する雰囲気があります。
 第2次大戦後の農協法は、アメリカ流の職能組合の方向でした。だが一方で、それまでの産業組合が業種を問わず広く地域の人びとを組合員にしていたため、これらの組合員を新たな農協に引き継ぐために准組合員という制度がとられました。このように、准組合員制度は農協発足時から職能組合とは矛盾する存在でした。


◆どう対応すべきか

 しかし、都市化が進む中で准組合員は増え続け、こうした地帯では、もはや准組合員の存在なくしてJAを語ることはできません。都市化地帯のJAでは、准組合員の皆さんのおかげでかろうじて農業振興の取り組みが行われている状態にあります。
 准組合員制度は、生協などには認められておらず農協や漁協・森林組合に見られる独特の制度です。准組合員には自益権(事業利用権)はありますが、共益権(運営参加権)は認められていません。これはJAが非農業的利害によって支配されないようにするためとされますが、一方で組合員参加を旨とする協同組合の運営にとって根本的な問題を抱えています。
 「職能組合論」や「地域組合論」にせよ、JA組織の本質は組合員の協同活動ですから、本来的には准組合員にも共益権が与えられるべきと考えれば、JA組織のあり方が改めて問われることになります。
 このような問題を抱えているにもかかわらず、准組合員について、員外利用問題を含めて、いま現実的なJAの対策が求められています。それは、准組合員の存在が単なる生活者・JA事業の利用者に止まらず、地域農業の理解者・協力者であるからです。
 対策の内容は、(1)協同活動に共鳴する者の加入の促進、(2)准組合員加入者への対応からなります。(1)についてはローンの利用者だけでなく、地元農産物の利用、学童・体験農園の取り組みなど農業への理解、(2)については、JAの組織活動や事業活動について共益権の制限を前提としつつも、なるべく正組合員と区別しない対応を心掛けて行くことが重要のように思われます。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2011.07.21)