シリーズ

信用・共済分離論を排す

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「JA綱領」を読み解く その1

・「JA綱領」制定の背景
・その評価 お題目としての「綱領」

 現在の「JA綱領」は、それまでの「農業協同組合員綱領」に代わって、1997年のJA全国大会で制定が決められました。その背景には、91年の「農協・21世紀への挑戦と改革」のJA大会の決議があります。この決議は、合併による全国1000JAの実現(JAの自己責任経営の確立)と連合組織の合理化、JAと連合組織の系統2段階制の実現をはかるものでした。

◆「JA綱領」制定の背景

 現在の「JA綱領」は、それまでの「農業協同組合員綱領」に代わって、1997年のJA全国大会で制定が決められました。その背景には、91年の「農協・21世紀への挑戦と改革」のJA大会の決議があります。この決議は、合併による全国1000JAの実現(JAの自己責任経営の確立)と連合組織の合理化、JAと連合組織の系統2段階制の実現をはかるものでした。
 この決議の後、4000あった全国のJAは715(2011年9月1日現在)にまで減り、連合組織の合理化も共済連の一斉統合などその実現がはかられてきました。こうした状況の下、全国の合併JAの精神的支柱として「JA綱領」が制定されました。新生合併JAとして新しい体制のもと、どのような経営理念でJAが社会的役割を果たして行くのか、内外にJAの姿勢を明らかにするものでした。
 それまでは、JAの経営姿勢を表わすものはなく、組合員の立場に立った内向きの「農業協同組合員綱領」があるだけでした。その内容は、いかにも古色蒼然として時代の要請に応えるものではなくなったことも「JA綱領」制定の一因でした。

◆その評価 お題目としての「綱領」

 こうしてできたのが、皆さんご存じの「JA綱領」です。この「JA綱領」については、当時、いわゆる「地域協同組合論」の立場から高い評価が与えられました。「地域協同組合論」は、JAの目的を単に農業振興(職能)だけとするのではなく、広く地域全体の振興を目的とする考え方に立ちます。「JA綱領」は、地域協同組合論者からその方向性をJAグループが正式に認めたものとして高い評価が行われたのです。
 筆者は、「JA綱領」の制定に異常に高い評価が加えられたことに、当時大きな違和感を覚えたことを記憶しています。それは、後に述べるように、JAはもともと総合JAとして農業振興と総合事業という二つの事業領域(ドメイン)を持ち、農業振興を中心に地域全体の振興に役割を果たす存在だからです。
 地域協同組合論者の評価はそれとして、「綱領」はその後の実際のJA運営との関連で、次のような大きな問題を持ってきていると言えます。
 その一つは、「綱領」は多くの場合、JAでは各種会議などの冒頭での唱和に止まっており、その意味でお題目の域を出ておらず、JAでの戦略課題の検討に結びつけられていないということです。
 また、もう一つは「綱領」の制定でJAが前面に出過ぎ、逆に組合員の立場が弱くなることによってJAに「悪しき経営主義」を進める結果になったのではないかと言うことです。筆者は、当時このことに一抹の危惧を抱きましたが、不幸にもこの心配は的中したようです。
 合併による「JA綱領」制定の必要性を訴えた当事者の一人として、反省の意味を込めて、以下に「綱領」の新たな活用方法と組合員主体(もしくは参加)の経営の確立について述べてみます。
 そうした指摘はもはや遅すぎる(トウ・レイト)という指摘が聞こえてきそうですが、今からでも「綱領」の持つ意味を見直し、JAにとって将来の帰趨を決める組合員主体の分権的経営の確立とは何かを考えて行くことが重要と考えられます。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2011.09.01)