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信用・共済分離論を排す

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「JA綱領」を読み解く その5  組合員参加による分権的運営を

・JAらしい経営とは
・高みを目指す経営

 JA組織が持つ最も大きな「特質」は、「組合員の協同活動」を基盤とした「農業振興中心の総合事業の展開」であり、組織独自の「運営方法」は、「協同組合原則」とJA組織の得意ワザである「組織活動と事業活動の連携・連動と事業間の連携・連動(組合員への一体的対応)」です。
 こうした、総合JAとしての組織の「特質」や独自の「運営方法」を生かしていくためには、JAに支店単位などより小さい範囲での事業の展開、つまり組合員主体の運営が可能な分権的経営の確立が不可欠です。それは、これまでJAが進めてきた「集中・集権的」な経営から「集中・分権的」な経営姿勢への転換を意味します。

◆JAらしい経営とは

 JA組織が持つ最も大きな「特質」は、「組合員の協同活動」を基盤とした「農業振興中心の総合事業の展開」であり、組織独自の「運営方法」は、「協同組合原則」とJA組織の得意ワザである「組織活動と事業活動の連携・連動と事業間の連携・連動(組合員への一体的対応)」です。
 こうした、総合JAとしての組織の「特質」や独自の「運営方法」を生かしていくためには、JAに支店単位などより小さい範囲での事業の展開、つまり組合員主体の運営が可能な分権的経営の確立が不可欠です。それは、これまでJAが進めてきた「集中・集権的」な経営から「集中・分権的」な経営姿勢への転換を意味します。
 これまでのJA改革は、合併による単位JAの体制の整備を主眼に行われました。このことは形の上では、つまり器をつくるうえでは成功しました。しかし、その内実はどうでしょうか。合併JAでは、本店集中のタテ割り事業推進体制と支店の合理化がすさまじい勢いで進展し、組合員主体のJA運営に大きな危惧が持たれる事態になってきています。
 JAは合併して器は大きくなったのですが、役職員はこの大きくなった経営装置を自在に駆使して組合員主体の分権的なJA運営を行うことが叶わず、当面の合併効果を出すために、ひたすら集中・集権的な経営に邁進してきたのが実情ではないでしょうか。
 JAに限らず、経営者は手に入れた自らの経営体制をさらに強固なものにしようとします。JAでも、現行の集中・集権的な経営をさらに強固なものにしようとします。
 このため、JAは今、[1]特定組合員の協同活動による組織基盤の劣化とメンバーの高齢化、[2]特定組合員への事業活動の集中による事業の先細り、[3]大規模化・官僚化による組織の動脈硬化と指示待ち人間の増加といった危機的事態に直面しています。

◆高みを目指す経営

 分権的な経営が必要なのは、組合員の協同活動は小さい組織の単位で活発に行われるという理由のほかに、JAの特質である総合事業を展開して行く上で、小さい単位での事業活動が必要になるからです。事業のタテ割はJAでは本店までとし、支店ではサザエさんに登場する三河屋の御用聞きというのが望ましい事業体制ではないでしょうか。
 一般企業では、デフレ経済の中でコストのかからない事業推進としてワン・トゥ・マン(企業対人)マーケティングを進めています。企業は消費者の個別ニーズに対応するよりは、消費者一人一人のニーズに丸ごと対応するほうが効率的と考えているのです。
 こうした最先端のマーケティングを行う機能をJAはすべて備えています。この際、JAの強みとは何かを再認識しそれを生かして行く知恵が求められています。
 いくらJAの体制が整備されても、組合員主体の運営体制がJA内に構築さなければ、これまで、一体何のためにJA改革を進めてきたのかということになります。JAの理念・特質・運営方法との関係では、JAが持つ総合JAとしての組織の「特質」や独自の「運営方法」を生かすことが出来なければ、「綱領」で掲げるJA理念を実現して行くことはできません。
 しかし、多くのJAの現状をみれば、経営政策とは一体何かさえ理解されない心もとない実情にあるのではないでしょうか。組合長はじめJAトップには、これまで進めてきた集中・集権的な経営政策を踏まえて、現状に甘んずることなく組合員参加のさらなる高みを目指した分権型経営を進めて行く勇気が求められています。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2012.02.09)