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信用・共済分離論を排す

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JA経営の弱みとは

・JAの弱み―経営責任の所在
・10年を超えてJAは生き残れるか

 JAは、組織の特質に由来する運営上の大きな弱点を持ちます。JAの組織は、横は信用事業など各種事業の兼営、縦は補完組織たる連合組織との機能分担でガッチリ守られています。このようにタテ・ヨコで組織が守られ、かつ組合員(組織)を基盤としているような組織は、日本はもちろん世界にも例が見られず、JAは最強の組織形態を持つ存在といって良いでしょう。

◆JAの弱み―経営責任の所在

 JAは、組織の特質に由来する運営上の大きな弱点を持ちます。JAの組織は、横は信用事業など各種事業の兼営、縦は補完組織たる連合組織との機能分担でガッチリ守られています。このようにタテ・ヨコで組織が守られ、かつ組合員(組織)を基盤としているような組織は、日本はもちろん世界にも例が見られず、JAは最強の組織形態を持つ存在といって良いでしょう。
 しかし、それゆえにこそ、半面でJAは肝心な経営責任の所在が不明確になるという大きな弱みを持つことになります。
 JAでは合併前には連合組織の力が巨大で、かつ組合員との間はフェース・トゥ・フェースの関係にあり、こうしたJAの弱みは表に出ませんでした。否、弱みが出ないようすることにこそJA組織の真骨頂がありました。連合組織は強固に形成され、JAはひたすらボトムアップの協同活動強化に努めることで課題は解決できました。
 極端に言えば、JAは経営責任を持たなくてもいいほどの存在だったのです。しかし、合併によって事態は一変しました。
 JAの体制は表面的には立派になりましたが、一方で、組織整備による合理化で連合組織の補完機能の力は弱くなり、また支店の統廃合などで協同活動の力は弱くなりました。このことで、経営責任が不明確というJAの持つ弱みが、一挙に顕在化してきているように思えます。
 このところJA全国大会議案でも、「新たな協同の創造」、「次代へつなぐ協同」、「支店の重視」、「CからはじまるPDCA」など、JAの組織経営への危惧が示されていますが、それはこうしたことの表れと見ることができるでしょう。JAが持つ弱みの解決のためには、何よりもJA役職員の意識改革による経営責任の明確化が必要になってきています。

◆10年を超えてJAは生き残れるか

 JAの経営責任のうち、JAでは、今後10年程度を見通して自らの組織・事業基盤がどのように変化し、どのような基本対策が必要かを考えてみることが重要になっています。
 言うまでもなく、JAは組合員の組織であり、その気になれば組合員のJA利用状況は全て分かり、将来の事業量の推測も可能です。JAの弱みを克服し、強みを発揮して行くためには、まずは、組合員(世帯・年齢・男女・正准別など)ごとの事業横断的なJA利用状況の把握から始める必要があります。競争激化で短期的思考を脱しきれず、長期的視点での将来分析を行っているJAが少ない実態にあるなか、10年を超えてJAが生き残れるのかは、組合員・役職員の共通の関心事となってきています。
 10年先の経営状況など、先のことだからどうでもよいという姿勢では将来のJAに責任を持つことにはなりません。
 第26回JA全国大会議案でも言っているように、現在、正組合員の4割以上が70歳を超えています。これは後10〜15年もすれば、この人たちがJAの現場から去って行くことを意味しています。そうなれば、事業量の減少などJA経営は甚大な影響を受けることになります。
 このように考えれば、まずは70歳以上の第1世代のリタイアにともなう後継者のスムーズなJA加入に全力を挙げることが喫緊の課題であることが分かります。このためには、具体的な将来予測の数字に基づいて対策を考えることが重要です。
 一方、農地を通じて集落組織を形成するといった組織の共同体的性格は、JA組織によそ者を受けつけない保守的性格を持たせることになります。このため、時代の変化に対応した地域に開かれた協同活動が求められています。
 JA組織の特質に基づく組織の閉鎖性から、JAの組合員構成や事業利用は極端に高齢者に偏っています。ほとんどのJAで組合員の平均年齢は60歳をはるかに超えており、将来を見通せば、若い男女のJA運動への加入・参加をいかに進めていくかが大きな課題です。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2012.09.04)