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信用・共済分離論を排す

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JA合併はなぜ進められたか

・合併のねらい
・画期的な支店重視の経営

 合併はなぜ進められたのか。その転機は、1000JA構想を打ち出した1988年の第18回JA全国大会「21世紀を展望する農協の基本戦略」でした。この構想は、1991年の第19回JA全国大会での「農協・21世紀への挑戦と改革」を経て実現されて行くことになります。「農協・21世紀...」では、JAは、将来的に1000JA構想を実現し、系統農協を従来の2段階から3段階へ再編成するというものでした。

◆合併のねらい

 合併はなぜ進められたのか。その転機は、1000JA構想を打ち出した1988年の第18回JA全国大会「21世紀を展望する農協の基本戦略」でした。この構想は、1991年の第19回JA全国大会での「農協・21世紀への挑戦と改革」を経て実現されて行くことになります。「農協・21世紀…」では、JAは、将来的に1000JA構想を実現し、系統農協を従来の2段階から3段階へ再編成するというものでした。
 合併については、賛否両論があります。JAの経営的要請から合併を不可避と考える意見、他方、合併は組合の民主的運営に反するとしてこれに反対する意見があります。もちろんこの両論には、それぞれの根拠があり、一概にどちらが良いとは言い切れない面があります。
 しかし現実的には、1000JA構想が採択され、JAグループは組織をあげて合併に取り組むことになりました。この結果、11月1日現在で、JA数は708となり、予想を上回るペースで合併が進んでいます。合併は、金融自由化への対応や営農関連の施設整備、人材の確保(特に職員)のために行われました。JAは信用事業を兼営しており、その社会的存在から経営基盤を盤石にすることが求められ、また、将来的に組合員の付託に応えて行くためには、一定の資金の確保や優秀な人材をJAに揃えることが必要との認識がありました。
 このような要請のもとに進められた合併ですが、組織整備の基本が、単位JAの体制整備にあることに留意が必要です。系統農協の組織再編には、大きく二つの方向があります。一つは、JAの活動基盤を単位JAとし、連合組織はこれを補完するという立場であり、もう一つは、JA組織をタテ割りに再編成し、全国連が本店、単位JAは全国連の支店とする立場です。
 言うまでもなく、現在の組織整備はこのうちの、JA本店、連合組織はその補完の役割という立場に立って行われています。この意味から、「単位JAの水平統合に対する連合組織の垂直統合」というのが、組織整備の基本図式なのです。

◆画期的な支店重視の経営

 このように考えると、合併は単に単位JAだけの事情ではなく、連合会を含めてその在り方を考えなければならない課題でもあります。合併が進まなければ、相対的に連合組織の力は巨大となります。事業は連合会主導型、単位JAは単なる連合会の事業推進の手先と言う方向は、とるべき組織再編の姿ではないでしょう。したがって、合併はJA主導の組織運営を進めて行く上でも必要とされる対策でした。
 協同組合には、その組織特性から、組合員の協同活動を盛んにして行かなければならないという命題と、もう一つ、組織そのものを維持発展させていかなければならないという経営的な命題があります。
 この二つの命題の衝突とその克服は、協同組合組織であるところから避けて通れないものです。いわゆる経営主義に陥らず、いかに組合員主体の経営を進めて行くかは、常に問われるべき課題です。当然のことながら、この二つの命題の衝突は、経営規模が拡大すればするほどJAの組織運営の矛盾として立ち現れます。
 第26回JA全国大会では、「支店重視の経営」が採択されました。これは、JA運動史上画期的なことで、この戦略の実現の成否は、JA運動の将来を左右することになるでしょう。単なる合体JAではない、合併効果を出すためには、集中・集権的な経営が不可避です。このため、これまでJAは、ひたすら本店にヒト・モノ・カネ・権限を集中する集中・集権的な経営を進めてきました。
 これは、明らかに組合員主体の経営とは反するものです。JAは今、集中・集権的な経営からの転換、さらなる高みを目指す、協同組合らしい集中・分権的な経営を確立して行く大きな課題に直面しています。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2012.11.13)