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現場に役立つ農薬の基礎知識

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第7回 病害虫の特性、地域ごとの実態に合わせた防除を―大豆の病害虫防除(下)

・大豆の主要害虫と防除法
・防除に役立つ新技術

 前回に続き、主な大豆病害虫の特徴と防除上の注意点を紹介する。

病害虫の特性、地域ごとの実態に合わせた防除を

大豆の主要害虫と防除法

ハスモンヨトウ
◆幼虫が小さいうちに防除

幼虫の食害による白化葉(ハスモンヨトウ) ダイズの生育中期に大発生し、大きな被害を起こす大害虫である。葉裏に卵塊を産みつけ、孵化した幼虫が集団で葉を食べて白く透けた白化葉となる。その後、幼虫は他の葉に移り、食害を続けて被害が大きくなる。幼虫は、成長すると40mm前後の体長となって、背中と体側に淡黄色、気門線の下には太い黄白線があるのが特徴である。
 8月頃から発生するが、地域によって発生時期や発生量が変動するため、その時期になったら圃場での発生状況に気を配り、発生が確認されたら、速やかに農薬散布を実施する。
幼虫(ハスモンヨトウ) 幼虫が大きくなると農薬が効きにくくなるので、小さい幼虫が固まっている白化葉が目立つようになった時期とその7〜10日後に農薬散布すると効率よく防除できる。

(写真)
上:幼虫の食害による白化葉(ハスモンヨトウ)
下:幼虫(ハスモンヨトウ)

 

シロイチモジマダラメイガ
◆サヤに入りこむ前に防除

 年に3〜4回は発生し、サヤ害虫として最も被害が大きい。サヤに産み付けられた卵から孵化した幼虫がサヤに食入して子実を食べ荒らす。サヤで成長し、サヤからサヤへと移動して、サヤ全部を食いつくされてしまうことも多い。蛹になる前にサヤに穴を開けて出てくる。このような生態のため、いったんサヤに入られてしまうと、防除が難しくなるため、サヤに入りこむ前に防除することが重要である。
莢(さや)内の豆を食害する若齢幼虫(シロイチモジマダラメイガ) このため、産卵やサヤへの食入が多いサヤの肥大初期〜中期に徹底防除する。別の害虫のマメシンクイガも同様の生態を示し、この害虫は、サヤの肥大中期?後期に防除するとよい。

(写真)
莢(さや)内の豆を食害する若齢幼虫(シロイチモジマダラメイガ)


フタスジヒメハムシ
◆種子処理による防除を

莢(さや)を食害している成虫(フタスジヒメハムシ) 成虫は、ダイズのサヤの表面をナメるように食害し、茎葉や花にも加害する。
 特に、サヤの食害により子実に黒斑ができ、被害が大きくなる。
 幼虫は、ダイズの成長の源である根粒を食い荒らすため、ダイズの生育が抑制される。幼虫の段階での防除が重要なので、種子処理による防除か、粒剤の播種溝に施用する。

(写真)
莢(さや)を食害している成虫(フタスジヒメハムシ)


その他の害虫

 害虫も、地域によって発生する種類や時期が違うので、地域の発生状況に合わせて防除を組み立てる。
 指導機関が出す防除指針などを参考にするとよい。

 

防除に役立つ新技術


地下水位制御システム「FOEAS」


 水田でダイズを栽培する場合、湿害に悩むことが多い。
 病害の項でもふれたが、病害も湿度が高い状態で発生が多くなる。
 このため、圃場の水はけをよくすることが病害防除への近道となる。
 このことを実現するのが地下水位制御システム「FOEAS」だ。(独)農研機構と?パディ研究所が共同開発したシステムであり、従来の暗渠排水に地下水位を制御できる機能を加えたもの。
 地下水位を自在にコントロールし、乾燥時には地下灌漑、大雨時には自動排水することで、圃場の水分を適正に保つことができる画期的なシステムとのこと。
 このシステム導入により、湿害が回避され収量が安定した例が多く認められており、導入する価値のある技術と評価も高い。


種子処理による病害虫防除

 種子処理は、ダイズの種子に薬剤を塗りつけて乾燥させ、そのまま播種し、発芽直後から襲いかかる病害虫を防除しようというもの。
 種子処理を使えば、圃場での防除作業が大幅に軽減でき、労力面、効果の面でもメリットがある技術である。この処理ができる新規剤が登場しているが、その中でもクルーザーMAXXは、1剤で病害(茎疫病)と害虫(フタスジヒメハムシ,アブラムシ,ネキリムシ)を同時防除できる現在のところ唯一の農薬とのこと。

大豆の適用農薬一覧(殺虫剤)

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           第7回

(2012.06.13)