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米粉ビジネス最前線

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「国内産米粉促進ネットワーク」が発足

草の根型の米粉事業をサポート

 生産者グループやJAなどが地元産の米を使った米粉パンや麺などの米粉食品をつくる...

shir169k0809111101.jpg 生産者グループやJAなどが地元産の米を使った米粉パンや麺などの米粉食品をつくる動きが広まっているが、これらの動きを地産地消や農商工連携を視野に産業として育てるサポートをしようと9月3日、「国内産米粉促進ネットワーク」が設立された。
 米粉は微細粉技術が開発されたことによって小麦と同じように食品加工ができるようになったが、こうした「新規米粉」には共通の規格や技術水準がまだできておらずばらつきがあるのが現状。米産地をはじめ消費者にも自給率向上策のひとつとして期待が高まっているだけに、専門家などによる事業のサポートや情報交換の場として新規米粉の開発に携わってきた関係者が中心になって同ネットワークを立ち上げた。今後、手続きを経てNPO法人となる見込み。理事長には高橋正郎日本フードシステム学会顧問が就任した。
 高橋理事長は「自分たちの風土にあった食品は米。しかし『粒食』よりも『粉食』のほうが簡便性があるからと消費志向が変わったとき、粉食は麦、とわれわれは思い込んでしまったのでは。微細な米粉ができるようになった今、米文化を高める国民運動としても促進できるようになってきた」と話した。
 専務理事の高橋仙一郎・協同組合米ワールド21普及協議会専務によると米粉による商品開発レベルは上がり、ケーキなどに使用される小麦粉70万トンは全量代替できる可能性もあるという。ただ、こうした技術を地域農業振興を軸に地域の製粉工場などと連携した地場産業的な発想で育成していくことが同ネットワークの考え。「そのためには単に地元の米を使いたい、ではなく、商品企画力をどうつけるかが問われる。そのための人材育成もサポートしたい」と話す。
 たとえば、秋田県のJA秋田やまもとでは直売所「JAンビニ」でJAが買い取った地元産あきたこまちを使った米粉80%のクロワッサン「コメワッサン」を発売している。米粉のもっちりした感じを生かすならクロワッサンでは、との着想で開発した。同店ではコッペパンなども含めて一日3000個が売れ、25kgの米を使用しているという。ただ、製粉はコストの関係で宮城県の業者に依頼しているのが現状。同JAふれあい課の泉牧子課長によると今後、助成措置などを活用してJAで製粉機の導入も検討しているという。
 米粉ビジネスに詳しい日本穀物検定協会の萩田敏参与は「生産者から製粉など一次加工、さらに二次加工まで見据えて事業化を考える必要がある」と話す。そのなかで早急に求められるのが、小麦に強力粉、中力粉などの規格があるように国産米粉にも「ジャパンスタンダード」をつくること。ユーザーと消費者が納得できるコスト、品質で信頼を得ればビジネスとして広がるはずだ、とみる。
 そのためには「米が余っているから米粉に、ではなく、専用品種などを使用目的別に作ることも求められるだろう。主食用以上に需要に応じた米づくりが求められることに。しかも、中山間地対策など水田資源を生かすことになる」と話している。

◆米粉が地域を変える国内産米粉促進ネットワークがセミナー

 9月3日に発足した「国内産米粉促進ネットワーク(CAP.N)」(会長:高橋正郎日本フードシステム学会顧問)は10月3日、設立を記念して「米粉が地域を変える!日本を変える!」をテーマにセミナーを開く。
 東大の鈴木宣弘教授が「食料危機と日本農業の再生〜水田農業の新たなグランドデザイン〜」をテーマに講演を行うほか、日本穀物検定協会やグリコ栄養食品の代表者などが米粉ビジネスの可能性について発表する。また学識者、生産者、加工業者の代表者など総勢7人が、「米粉が地域を変える!」をテーマにパネルディスカッションを行う。
日時:10月3日(金) 10時30分〜17時20分(交流会18時〜)
会場:全理連ビル(東京都渋谷区)
定員:250人(先着)
参加費:セミナー3500円 交流会4000円
 申し込みはFAX(03(5634)5370)かメール(cap.net08@gmail.com)で。

(2008.09.11)