シリーズ

「食は医力」

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第7回 乳酸菌で腸内秩序を保ち健康に

日本の発酵学は世界1
免疫機能にプラスして花粉症などを抑制
現代にも活きる祖先の食生活の知恵

 前回は、和食は発酵食品の宝庫だという点にほんの少し触れましたが、発酵は人類の歴史とともにありながら、奥の深い、まだ解明し尽くされていない分野です。
 酵母、細菌などの微生物が自らの酵素によって炭水化物や蛋白質を分解して、アルコールや乳酸を作る。これが要するに発酵です。昔は醗酵と書いていましたが、「醗」のほうが、醸(かも)す感じが出ますね。

◆日本の発酵学は世界1

 前回は、和食は発酵食品の宝庫だという点にほんの少し触れましたが、発酵は人類の歴史とともにありながら、奥の深い、まだ解明し尽くされていない分野です。
 酵母、細菌などの微生物が自らの酵素によって炭水化物や蛋白質を分解して、アルコールや乳酸を作る。これが要するに発酵です。昔は醗酵と書いていましたが、「醗」のほうが、醸(かも)す感じが出ますね。
 日本酒、醤油、味噌、なれ寿司、納豆、ぬか漬け、パン、チーズ、ヨーグルト、食品以外でも抗生物質や一部のビタミン剤までどれも発酵によって作られます。その多くが日本の食とかかわっていることに感心させられますが、実際、発酵学では日本は世界1です。
 商品名を挙げるのはどうかと思いますが、カルピスやヤクルトなど乳酸菌飲料がこれほど好きな国民も珍しいでしょう。プロ野球球団名が乳酸飲料と聞いて驚いた外国人もいましたっけ。
 日本人の長寿はこの発酵食品によるところも大きいのですが、世界でもヨーグルトを常食としている地域に長寿村が多いようです。

◆免疫機能にプラスして花粉症などを抑制

 ヨーグルトの国といえばまずブルガリアでしょうか。自家製のヨーグルトをデザートのみならずスープ、ドレッシング、料理の調味料などに大量に使う食生活で、1人が1日に缶ビールの大(500ミリリットル)くらいは楽に摂取していることになるそうです。
 今は少なくなってしまったけれど、昔、日本で自家製味噌を料理にいろいろ使っていたようなものでしょう。ヨーグルトも家ごとに味が違うようで、手前味噌ならぬ手前ヨーグルトというわけですね。
 ヨーグルトがなぜ健康に良いかというと、乳酸菌が作り出す乳酸や酢酸が腸の悪玉菌を抑える一方、腸内秩序を保ち健康にプラスする、特に老化防止の働きをする善玉菌を増やすからです。その点では生きている乳酸菌が効果的で、ヨーグルトや味噌、納豆、ぬか漬けなどを心掛けて食べるといいでしょう。
 ただし乳酸菌はそのままずっと腸で生き続けるわけではありません。ですから毎日、発酵食品を食べて補給していかないと効果は限られてしまいます。
 とはいえ発酵食品の菌は生きたまま送り込まれなければ効果がないわけではなく、死んだ菌でも菌の成分が胃腸で有効に働いてくれます。腸の免疫機能にプラスするのも働きの1つ。免疫機能は昨今ますます重要で、花粉症などのアレルギーも発酵食品で抑制することができたりします。
 ところで人間の腸にはおよそ100種類の菌が100兆を超えて住み着いているとか。善玉菌のビフィズス菌だけで20種類以上いるようです。
 ウェルシュ菌などの悪玉菌は食物を腐敗させてスカトール、硫化水素、アンモニアなどを発生させ、腸内に毒素や悪臭を充満させる働きをします。肉食偏重の人は特にウェルシュ菌が多くなっています。腸の中を発酵食品(と食物繊維)できれいにすることは、万病を防ぎ老化を防止することにつながっていることが解明されています。

◆現代にも活きる祖先の食生活の知恵

 健康な若者の腸内ではビフィズス菌10対ウェルシュ菌3なのに、平均的老人は善玉が減り悪玉が増えて5対5くらいになっているとも言われるのでご用心を。歳とともに老化が進むのがここからも見えてきます。この流れを発酵食品で食い止めたいものですね。
 面白いことに、どの乳酸菌がどのタイプの人に合うかの法則はまだ解明されていません。ですからどの種類のヨーグルトや乳酸飲料が胃腸に合うかは、自分で判断するほかないのです。
 つまり、どの乳酸菌だと胃腸の調子はどうか、便の状態はどうか、で判断するしかありません。便秘でも下痢でもない快便が続き、便の色も茶色くらいが良いようです。黒はいけません。
 私の場合は、たまにホテルなどで美食をすると翌日、決まって黒い便なのです。「わが家の粗食がやっぱりいい」と胃腸が信号をくれているのだと思っています。なお、粗食の粗は粗末の粗ではありません。念のため。
 食ではありませんが、乳酸菌を含んだ医薬部外品も役に立ちます。わが家では何十年も昔からエビオスやラクトーンを飲んで助かっています。もっとも発酵食品も標準世帯の何倍かは食べていますので、あくまで補助的なものですけれども。
 発酵食物を食べさせた小動物の寿命が延びたとか、ガンの増殖を抑えたとかいった実験はいろいろあります。まだまだ研究途上のようですが、そうした実験結果は祖先の心掛けてきた食生活の知恵とかなりの程度、一致しているのでは? 食の「現代化」とともに発酵食品から遠ざかってしまうことのないよう心掛けていきたいものです。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2009.07.07)