シリーズ

「食は医力」

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第9回 「腹も身のうち」食べすぎは万病のもと

・大食・過食に3つのパターンが
・「常に大食をなすものは必ず不幸者」
・ゆっくり・楽しく・スローな食事を

 食物は健康に深くかかわっていますが、「食物の質」については気をつけても、「食物の量」となると関心がもたれることは少ないようです。
 特に飽食の時代に育った若い世代は食べたいだけ食べるのが当然のようで、大食い競争、早食い競争に情熱を燃やす人も少なくありません。

◇大食・過食に3つのパターンが

 食物は健康に深くかかわっていますが、「食物の質」については気をつけても、「食物の量」となると関心がもたれることは少ないようです。
 特に飽食の時代に育った若い世代は食べたいだけ食べるのが当然のようで、大食い競争、早食い競争に情熱を燃やす人も少なくありません。
 さる串揚げの店には大食い番付の名札が掛けてあり、男性は1位の74本から20位まで名前が書かれ、常に掛け換えられているようでした。女性も1位の53本からずらっと並んでいるのです。案外やせている人かも、などと空想しました。
 それはともかく大食、過食という場合、切り口は3つ考えられます。
1.運動量、代謝に合った、必要なカロリーを補給している大食。スポーツ選手は概して大食ですが、必ずしも肥満にはなりません。それ以上にカロリーを費やしているからです。
2.毎回、腹十分目以上に食べムダなカロリーを摂りすぎている。これは必ず肥満になり、生活習慣病になっていきます。
3.3食の量は八分目でも間食が多すぎて臓器の休まるヒマがなく、これも肥満になる。
 2も3も健康の大敵です。昔から「腹八分に医者いらず」とか「腹八分に病なし」と言うとおりで、肥満に良いことはありません。
 ところで中国人が総じてスマートなのはウーロン茶が脂肪を溶かして排出するからだといいますが、肉を食べない私は緑茶派です。
 肥満で問題なのは心臓疾患と糖尿病ですが、以前、私どもの経済倶楽部で講演いただいた京都・高雄病院の江部康二理事長によると、糖尿病はカロリー過多による肥満の問題よりも、糖質を制限することが肝心だそうです。東洋経済新報社から著作も出されているので、糖尿が心配な方は一読をお勧めします。

◇「常に大食をなすものは必ず不幸者」

 さて、大量の食物がいっぺんに殺到しても胃腸は対応しきれません。「腹も身のうち」と昔から言って暴飲暴食を慎んできたのはそのためでしょう。食べすぎを諌めることわざは昔からたくさんあります。
 「食べずに死なず、食べすぎて死ぬ」という諺のように、大飢饉でもない限り食べ物がなくて死ぬことはなくとも、食べすぎで生活習慣病を呼び寄せ病死する人はいつの世にも少なからずいて、現代はその最盛期だと言ってよいでしょう。
 桜沢如一という食養家は「すべての病気は食べすぎに起因するといって過言ではない。その証拠に平時や豊年には病人が非常に多く、凶作や戦時にはかえって病人が少ない」と言っています。今の飽食の時代に病院が繁盛している図などは、桜沢の言うことを証明しているようなものです。
 「飢えて死ぬは1人、食べすぎ飲みすぎで死ぬは1000人」というのも同様です。「大食短命」とはいかにもそのものずばりですし、食べすぎによる肥満は万病のもとと言ってよいでしょう。
 もっと面白いことを言った人もいます。江戸時代の観相家、水野南北がそれで、「食事の量により寿命が左右されるばかりか、貧富の差が生じて人の運命までも決まる」と主張しました。
 彼の言い分は、要するに「常に大食をなすものは必ず不幸者である。常に大食や暴食をする者は、ついに病気を生じて父母からの賜物である自分の肉体をそこなう」というのです。逆に食事量が少ないと恵まれた人生を送り、若死にしないし、特に晩年が「吉」だ、というのですから、大食は分が悪いですね。

◇ゆっくり・楽しく・スローな食事を

 大食はスタミナをなくすばかりか、細胞の老化を早めて認知症を呼び込むキッカケになります。だとすると、ご馳走尽くめとか、奥方のおいしすぎる手料理とかは、食べすぎを招いて問題かもしれない。食べすぎない程度の、多少まずいくらいの手料理が家族の健康の秘訣である。というのはもちろん冗談ですが。
 最後にそれでは食べすぎ、大食、飽食を防ぐ方法を。旨い旨いといって食べすぎるのは人間とペットの犬猫ぐらいのもので、ライオンや虎などは一定限度食べたら、鹿や縞馬がすぐそばにいても見向きもしません。
 人間も、実はおなかがいっぱいになったと脳へ信号がいけば、大抵は食べるのをやめるのです。そのためには、何よりゆっくり食べること。ゆっくり食べられれば苦労はないという人には、楽しく会話しながら食べることと、十分噛んで食べることをお勧めします。
 個食、孤食でかき込んで食べるのがいちばん危ない。家族や友人とスローな食事を心掛けましょう。冬眠しない人間には、余計なエネルギーを溜め込む必要はないのです。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2009.10.16)