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「食は医力」

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第11回 「冷えは万病の元」体を温めよう

・体温が下がると抵抗力が低下
・朝食をきちんととることから
・冬は根菜類など陽性の食品を

 暑い時に汗をかくのは体温を下げようという自然の働きです。汗が十分に出ないと熱中症になって命にかかわります。猛暑のもとで水分の補給が大事なのはそのためです。反対に、寒いときに体が震えるのは無意識のうちに体温を上げようとしているわけです。もちろん極寒のもとでは、体を震わせる程度ではとても足りません。
 体はそのようにしてけなげに体温を調節しようとしているのですが、私たちはそんなことを忘れてとかく体を冷やしすぎる傾向が強いので注意がいります。
 体を温かく保つことは健康を保つ秘訣です。

◇体温が下がると抵抗力が低下

 体温が下がるほど血流は減りますから、それに伴いさまざまな障害が発生します。
 しかも体温が下がると血液内の白血球も減り、抵抗力が低下します。風邪を引きやすいだけでなく免疫力が落ちていろいろな病気になりがちと、まさに冷えは万病の元なのです。
 ですから体を冷やすことは夏でも避けるべきですが、特に寒い季節には禁物です。それなのに、冬に体を冷やす陰性の飲食物をたくさん飲み食いする人がいます。これでは病気を呼び込んでいるようなものです。
 近年、日本人の体温は低下し続けているそうです。平温は36・5度くらいですが、それより1度も低い人が少なくないとか。世界に冠たる日本人の病院通いは低い体温による抵抗力の低下と密接につながっているといってよいでしょう。
 まして歳をとってくると、新陳代謝がどんどん衰えてくるため血行が悪くなる一方です。これでは日頃からよほどしっかり備えていないと冬は乗り切れないし、冬が終わっても病気を追い払うことが難しくなります。

◇朝食をきちんととることから

 では体を温めるにはどうしたらよいのでしょうか。順不同で列挙してみます。
 [1]室内をほどほどに暖かく保つ。
 [2]?衣類も保温力のあるものを。特に首と足を温かくすると効果的です。
 [3]運動やマッサージ。私は手足の指をよくほぐします。
 [4]風呂はぬるい湯にゆっくりと。私の場合は、冬だと38?39度の湯に15分ほど浸かります。
 [5]ストレスをためず夜更かしをしない。ストレスは意外にも体温を下げます。
 [6]食事を取ること自体が体温を上げます。朝食をきちんと取ることはその意味でも大事です。
 朝、起きたときの体温は1度くらい下がっているのが普通です(だから人は明け方に亡くなりやすいのです)。ですから体温の低い朝に朝食をとらないと体温も抵抗力も低いまま出かけて風邪を引くことになるわけです。
 [7]そして食事の量と質。大事なのは食べすぎないこと。食べすぎると血液が胃に集まってしまい体は冷えるのです。
 温かい食事は体を温めるので、冬には鍋料理は最適です。野菜を多めにして食材のバランスをとり、好みの鍋を選べばいいでしょう。

◇冬は根菜類など陽性の食品を

 ショウガや唐辛子には体を温める働きがあり、冬の料理には欠かせません。漢方的にいうと、陽性の食品ほど体を温めます。野菜ではニンジン、大根、ネギ、ごぼう、山芋などの根菜類。概していうと北国の野菜や果物ほど陽性です。
 逆にマンゴー、パイナップルなど熱帯果物は冬はごく少量にしましょう。肉も陽性ですが、すき焼きやしゃぶしゃぶでは肉ばかりあさらずに、ビタミンの豊富な野菜もたっぷり食べましょう。
 そして日干しした食材、熱を通した料理ほど陽性です。切り干し大根の煮物などは「陽性の二乗」というところでしょうか。柿も、干し柿は体を温めます。
 ところで「風邪を引く」は、英語とフランス語では「寒さを捕まえる」、ドイツ語では「自分を冷やす」です。風邪と冷えが直結していることは世界共通のようですね。十分温かくして冬を無事に乗り切りたいものです。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2009.12.21)