シリーズ

「食は医力」

一覧に戻る

第15回 よく噛んで顎を元気に

・歯周病は“歯抜け”への1丁目
・柔らかい食事は脳の血流を細くする
・“カムカム”で幸せはやってくる

 8020(はちまるにいまる)運動というのをご存じでしょうか。80歳になっても歯を20本は残すように気をつけようという運動です。
 成人は普通、32本の歯を持っていますが、日本人は40代になると20〜25本しか本来の状態で残っていないそうです(自慢たらしくなりますが、私は歯だけはまだ20代並みです)。そして80代ともなると、平均残歯はなんと5本しかないという調査結果もありました。

◆歯周病は“歯抜け”への1丁目

 8020(はちまるにいまる)運動というのをご存じでしょうか。80歳になっても歯を20本は残すように気をつけようという運動です。
 成人は普通、32本の歯を持っていますが、日本人は40代になると20〜25本しか本来の状態で残っていないそうです(自慢たらしくなりますが、私は歯だけはまだ20代並みです)。そして80代ともなると、平均残歯はなんと5本しかないという調査結果もありました。
 こう聞くと、やはり虫歯は怖い、朝晩、歯磨きをしっかりしないと、と思われる方が多いのではないでしょうか。
 むろん虫歯も歯が抜ける大きな理由ではありますが、それよりもぐらぐらしてきて抜けてしまう歯周病によるほうが多いと専門家は指摘しています。
 歯周病というのは歯茎の病気の総称で、歯槽膿漏(しそうのうろう)、歯肉炎、歯肉炎のこと。だから歯を大切にするには、歯ブラシか指で歯茎の塩マッサージをするほうが効果的なのです。そして歯そのものを磨く以上に、歯石をとることが重要です。
 歯茎から出血したり、歯茎がはれて口臭が気になるときなどは、歯周病を疑ったほうがよいでしょう。歯周病は歯抜けの道の一丁目なのです。

◆柔らかい食事は脳の血流を細くする

 面白いことに、歯の数が減ったり、歯の調子が良くないとつい噛まなくなります。噛まなければ当然、食物を噛み潰したりすることが減りますし、唾液も減って消化という働きが鈍ります。
 ついでに言うと、噛むことが大事なのは食にかかわること以上に、脳との関係において言えることです。噛む運動によって、脳からの静脈血流が強くなって脳の活性化につながるのです。
 ですから今の若者によく見られるように、スパゲッティやカレー、ラーメンなどをほとんどかまずに飲み込んでばかりいると、あるいは清涼飲料などで菓子パンやクッキーのたぐいを流し込んで食事代わりにしていると、脳の血流は細くなります。このように、下顎の発達と脳の働きは大いに関連しているのです。
 ということは、歳をとって食が細くなったりしても、よく噛んで顎を元気に使うことで痴呆はかなり防げます。その点、牛は反芻でいつももぐもぐやっていますから、案外、頭の老化を防いでいるかもしれませんね。
 冗談はともかく、アメリカで行われた実験は聞き捨てなりません。固い食物ばかり与えたラットの一群と、柔らかい食物ばかり与えた一群を対象に、迷路から脱出する実験をしたところ固いほうのグループの成績が上だったというのです。

◆“カムカム”で幸せはやってくる

 昨今、国際学力比較で日本の児童のランキングが低下の一途というのは、柔らかい食物ばかり食べがちなことと大いに関係しているかもしれません。
 現に学校給食のメニューは、ラーメンやら菓子パンやら焼きそばやら、そんなものばかり並んでいます。しっかり噛まないといけないメニューだと子供たちの評判が良くないからというのですが、これって栄養士や教育委員の子供ポピュリズム(迎合主義)ではないでしょうか。
 よく噛むためには、何を食べるかと同時に、いかに食べるかが大事です。個食や孤食ではものも言わずにかき込むことになりますが、教室では教師がゆっくり食べる指導をすることが可能でしょう。
 家庭では、家族同士の会話など楽しく食べることで、おのずと噛む回数も増えてきます。楽しく食べれば胃での消化もはかどりますから、栄養の吸収にもつながっていきます。
 戦後間もなく、ハッピー、カムカム(come)という歌がありましたけれども、噛む噛むでこそ幸せはやってくるのではないでしょうか(中学の英語教師が「ハッピネス、カムカムが正しいんだ」と言っていましたっけ)。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2010.04.20)