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「食は医力」

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第23回 バランス良い食事で脳の退化を防ぐ

・ブドウ糖とビタミンB1B2を
・大豆や青魚で頭を活性化
・クルミは「頭の山薬」

 歳をとって困ることの1つに物忘れがひどくなることがあります。人や物の名前が出てこないとか、ついつい「あれ」とか「それ」とかですませてしまうとか。
 体の不調と違って決定的に困ることではなくとも、早めに対応していかないと怖い話につながりかねません。

◆ブドウ糖とビタミンB1B2を

 歳をとって困ることの1つに物忘れがひどくなることがあります。人や物の名前が出てこないとか、ついつい「あれ」とか「それ」とかですませてしまうとか。
 体の不調と違って決定的に困ることではなくとも、早めに対応していかないと怖い話につながりかねません。
 食べ物で頭の働きを活性化させるというのは、要するに脳が必要とするエネルギーを供給すること、そのためにも脳の血流を良くすること、脳神経を活発にすること、に尽きます。
 脳に大事な栄養素は基本的には運動するための筋肉の場合と同じで、ブドウ糖が不可欠です。
 成人の脳の重さは体重の2割前後ですが、実はエネルギー代謝も体全体の2割くらい消費しているのです(うちの人はそんなに頭、使ってないから、ということとはほとんど無関係です)。
 問題はエネルギーの中身でして、貧しい食事(値段のことではなく)からは頭に必要な糖などの栄養は届きません。
 頭に役立つ基本は何よりもブドウ糖ですが、これはさまざまな食品から取れます。何より筆頭は穀類で、イモ類、大豆類、果物も重要です。
 ただしそのブドウ糖がエネルギーに変わるためにはビタミンその他の栄養素が必要になります。特にビタミンB1とB2は不可欠で、果物、レバー、豚肉、魚、乳製品などに多く含まれています。

◆大豆や青魚で頭を活性化

 脳の働きにとってブドウ糖に劣らず重要なのが蛋白質(アミノ酸)です。細胞同士で情報を伝え合う物質を作り出すのがアミノ酸で、だから肉を食べないと頭が良くならないと、幼少の頃、父親によく言われました。
 必須アミノ酸を完全に含むのは肉だけという考えに基づく理論だったわけですが、今日では魚介類、穀物、豆類も良質なアミノ酸をたっぷり含んでいて肉にこだわることはないと考えられています。
 私の家では子供たちも一貫して肉抜きの食事をしてきましたが、成績がそれで影響を受けた気配はありませんでした(食べたらもう少しましだったかどうかはともかく)。
 だから大豆由来のアミノ酸だけでも脳内の情報伝達は大丈夫らしいし、魚介類が入ればさらに問題はないようです。
 頭の活性化にもうひとつ大事なのが脂肪酸です。特に頭が良くなるサプリメントとして人気の高いDHA、EPAは神経細胞の重要な構成要素であるオメガ3系脂肪酸です。
 これは青魚には特に多いのですが、わが家でもブリ、サバ、サンマ、イワシなどをよく食べるようにしています。子供たちは巣立っていってしまいましたが、中高年にとっても頭の衰えを防ぐ大事な食材という位置づけです。
 そのほか大豆、ゴマ、クルミ、海藻、オリーブ油なども良質の脂肪酸に富んでいます。これらは頭だけでなく、体全般に良い食品なので食卓に登場させるようにしましょう。

◆クルミは「頭の山薬」

 最後に若干の具体例を。微少ミネラルが多く「ブレインフード」と呼ばれて人気の高いナッツ類。中でもクルミは血行を良くして健忘症を防ぐので「頭の山薬」と呼ばれてきました。またアミノ酸とビタミンBの多いゴマ。そして果糖とビタミンBの多い柿・・・。
 頭を冷静に保つためには微少ミネラルが大事です。特にカルシウム不足は落ち着きがなくなり頭がうまく働きません。イカなどに多いタウリンも脳の興奮を抑えてくれます。
 と書いてくると、加工食品に偏らぬ、素材を大事にしたバランスのとれた食事こそが脳の働きを良くし、脳の退化を防いでくれそうな気がしてきますね。
 ただし「頭を使う」ことは食事の内容に劣らず重要です。テレビを横目に黙々と食べるのではなく、賑やかに手作りの食事を楽しく食べることは、何を食べるか以上に大事なことである。これを今回の結論としましょう。

【著者】浅野純次
           経済倶楽部理事長

(2011.01.27)