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「食は医力」

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第39回 鉄分が足りないと酸素不足で貧血に

・体によい重い鉄製のフライパン
・人体に不可欠な微量ミネラル
・鉄分の7割が赤血球中に存在する
・鉄分の吸収を促すレモンや酢

 厚さ5ミリが普通のフライパンに1・5ミリのものが商品化されて話題になっています。熱伝導率が高く焦げムラができにくいとか。三重県の鋳造会社が開発したもので「魔法のフライパン」というネーミングです・・・。

◆体によい重い鉄製のフライパン

 厚さ5ミリが普通のフライパンに1・5ミリのものが商品化されて話題になっています。熱伝導率が高く焦げムラができにくいとか。三重県の鋳造会社が開発したもので「魔法のフライパン」というネーミングです。
 フライパンはフッ素樹脂加工が一世を風びしていますが、わが家はいまだに厚手の「旧製品」を使っています。年季もので、重く、油その他がたっぷり焦げ付いていたのを、こそげる道具を買い求めてばりばりはがしたところずいぶんすっきりして、女房に喜ばれました。
 重いのはいやだという方が多いでしょうが、鉄製には鉄製の良さがあります。戦後しばらく、アルミやアルマイト製の鍋全盛の時代があり、その頃、鉄製のほうが体に良いということが盛んに言われたりしたものです。


◆人体に不可欠な微量ミネラル

 鉄に限らず微量ミネラルが体に大事なことはよく知られていますが、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、マンガンなどは、細胞や血液の構成要素だったり、体の生理機能を調節したりして、人体に欠かすことができません。
 不足すると、亜鉛は味覚異常や血糖上昇、鉄は貧血や疲労、マンガンは生殖能力低下や成長阻害、マグネシウムはカルシウムの吸収阻害などが生じます。いずれも微量でありながらその「微量」が重要なのです。
 微量ミネラルは、肉(特にレバー)、卵、穀類、ナッツ、海草、牡蠣などに多く含まれています。
 レバーについては肝臓の本来的機能を考えればよくわかるような気がするし、海草と牡蠣は、海水にミネラル類が多種かつ多量に含まれていることを考えると当然といっていいでしょう。


◆鉄分の7割が赤血球中に存在する

 微量ミネラルの中で、今回は鉄分について少し考えてみます。特に貧血症状の多い女性にとって、鉄分の補給が大事なことは常識といっていいかと思います。
 鉄分が不足する理由としては、需要面からは成長期だとか出血、妊娠、授乳などによって鉄が欠乏する、供給面からは食事の偏り、特に動物性食品の不足、および消化器障害によって鉄分の補給が不足する、ということが考えられます。
 肉、レバー、卵、魚介類(特に牡蠣)などの動物性食品は、鉄分含有が多いというにとどまらず、造血に必要不可欠な良質の蛋白質をたくさん含んでいるために鉄分の吸収自体もいいのです。
 実は人体に蓄えられている鉄分の7割がヘモグロビン鉄として赤血球の中に存在し、残り3割は肝臓、脾臓にあります。
 ですから赤血球の少ない人は鉄分不足の可能性が強く、貧血の人が青白い顔をしていることが多いのはヘモグロビン(血色素)が少ないためです。
 こうして鉄分の多い食品をきちんと取らないでいると、貧血、頭痛、めまい、疲労、耳鳴り、動悸、息切れなどが生じやすくなります。


◆鉄分の吸収を促すレモンや酢

 鉄分の多い食品だけでなく、鉄分の吸収率を高めることも大事です。そのためには良質な蛋白質や微少ミネラル、ビタミンを適切に摂るよう心掛けることや、レモンや酢を使った調理が鉄の吸収を促して好都合です。
 こうして鉄が順調に吸収されるとヘモグロビンが生成され貧血防止につながります。ヘモグロビンは鉄と蛋白質の結合体で、酸素の運搬役ですから、貧血になるということは酸素が不足するので、体にも頭にも非常にマイナスです。たかが貧血などと軽んじてはいけません。
 なお食後すぐコーヒー、緑茶をたくさん飲むと、タンニンが鉄と結合してしまい、鉄の吸収が妨げられるので、貧血の人は食間に楽しむようにしましょう。
 なお、鉄欠乏からくる貧血がひどくなった場合は、食事では対応しきれないので、医師に鉄剤による治療をしてもらわないといけません。未病への対応は大事ですが、病気になってしまったときは専門家の力を借りるのが正解です。

【著者】浅野 純次
           経済倶楽部理事長

(2012.05.14)