シリーズ

「食は医力」

一覧に戻る

第42回 食事と運動の両輪で降圧剤よさらば

・軽んじてはいけない最低血圧
・血圧が高くなる4つの理由
・ルチンが多いアスパラやピーマン

 歳をとると血圧は上がるのが普通です(怒っても上がります)。知人から薬を飲んでいるのだが、と尋ねられました。最高血圧、要するに上が150mmHgだということでした。

◆軽んじてはいけない最低血圧

 最高血圧は140未満が好ましいとされていて、私も140ぎりぎりなので偉そうなことは言えないのですが、薬は飲んでいません。降圧剤は飲まずにすめばそれに越したことはないでしょう。
 降圧剤で血圧を下げるのは、血液の供給量を減らして心臓の負担を軽くし、脳溢血などのリスクも減らすというプラス面もありますが、全身への血液供給を減らしてしまうために臓器などへ酸素や栄養分が十分に供給できないという問題があります。
 普通「血圧が高い」というと、最高血圧が高いことを意味します。これは心臓が血液を送り出すときの血圧で、心臓は最も収縮しています。
 血圧にはもう一つ最低血圧、いわゆる下の血圧もあって、これは心臓がいちばん拡張したときの数値です。90未満(ちなみに私は60です)が望ましいとされていて、こちらの数値も軽んじてはいけません。
 なぜか。心臓がいちばん拡張したときの最低血圧が高いということは、血液が動脈から静脈へ移り、心臓へ吸い込まれて戻る過程が順調とは言えないことを意味していて、動脈硬化の危険を示唆するものだからです。


◆血圧が高くなる4つの理由

 さて血圧が高くなる理由としては四つ考えられます。
 (1)肉食過多、精製食物過多で窒素化合物が多くなっている血液は、ネバネバ度が高く血圧を上げないと流れにくい。
 (2)塩摂取過多で塩分が血液に多く含まれると血液に水分が増えて血液の容量が増し、血圧を上げないと血流が滞る。
 (3)血管が硬化して随時広がらないと、血流をスムーズにするために血圧を上げざるをえない。
 (4)血管の内壁にコレステロールなどがこびりついて狭くなれば、血圧を上げて血流を確保しようとする。
 以上の点から、(a)血管を柔軟に保つ食事、(b)血液サラサラを保つ食事、が重要なことになります。
 (a)でいうと、ルチンですね。ルチンはビタミンPの一つで、血管の補強作用をしてくれます。ソバ、野菜に多く、ミカンなど果物の皮にも含まれています。
 (b)は肉(特に脂肪分の多いもの)、バター、マーガリン、植物油は控えめにし、野菜、海草、青魚をたくさんとるように心がけましょう。
 (2)でいうと、塩分の取りすぎは血圧を上げます。適度な塩分は健康に欠かせませんが、濃い味付けが好きな人は危ない。ラーメンのスープは残すこと、醤油を使いすぎぬこと、スナック類は減らすこと、などが大事です。


◆ルチンが多いアスパラやピーマン

 ソバは高血圧対策に格好の食品ですが、汁はつけすぎず、できれば江戸っ子のようにつけるかつけないかで粋に食べましょう。そば湯はルチンいっぱいですが、汁をごく少量にしましょう。
 モズク、メカブ、オキュウトも高血圧の人にはお勧めですが、醤油をかけすぎないように。不満ならその分、お酢をたっぷりかければいいのです。
 海草、野菜はカリウムが多いので、塩分、つまりナトリウムを排出してくれる働きがあります。野菜なら何でもいいですが、特にルチンが多いアスパラガス、ピーマンは一石二鳥でしょう。
 ただし食事だけでは高血圧対策として万全とは言えません。適度な運動が絶対に必要です。予防医学の故小山内博氏は時速7キロ前後でゆっくり30分くらい走ることで高血圧は劇的に解消すると主張しました。
 走るのは苦手という人は、週に1回でも、時速は5キロでも、そして10分間でも、とにかくゆっくり走ってみて、家で血圧を測り続ければ、驚くほどの血圧降下が期待できるかもしれません。食事と運動の両輪で降圧剤よ、さらばとなるよう、祈っています。

【著者】浅野 純次
           経済倶楽部理事長

(2012.08.17)