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「食は医力」

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第44回 「古事記」にも登場する麹

・いまやラーメン屋にも塩麹が
・旨み・風味が増し、肉を柔らかく
・秋冬は麹使用の漬物で野菜を食べよう

 10月20日頃には、東京・小伝馬町界隈ではべったら市が開かれて賑わいます。べったら漬けは大根を麹、もち米、焼酎、砂糖、塩で2週間くらい漬け込んだもので、麹漬けの代表的なものです。
 名前の由来は麹でべたべたしていることからとも言われ、甘みがありお茶請けとしても格好です。

◆いまやラーメン屋にも塩麹が

 10月20日頃には、東京・小伝馬町界隈ではべったら市が開かれて賑わいます。べったら漬けは大根を麹、もち米、焼酎、砂糖、塩で2週間くらい漬け込んだもので、麹漬けの代表的なものです。
 名前の由来は麹でべたべたしていることからとも言われ、甘みがありお茶請けとしても格好です。
 漬物には味噌漬け、糠漬け、粕漬け、醤油漬け、麹漬け、塩漬け、辛子漬けなどさまざまにあり、発酵度が高いものほど健康に良いと言ってよいでしょう。
 漬物のカギは麹が握っていますが、昨今、料理に麹が多く使われるようになりました。特に塩麹は人気のようで、近くのラーメン屋にまで塩麹の旗がはためいていました。
 スーパーの店頭には塩麹が山と積まれています。その脇には塩麹マヨネーズ、塩麹オリーブ油まであり、今や何でもありの感があります。
 麹は米、麦、大豆、糠などに麹菌を適当に繁殖させたものと辞書にあります。「適当に」というところが面白いですが、それくらい昔からポピュラーで多様ということでしょう。
 『古事記』の冒頭に、ウマシアシカビヒコヂという名の神が登場しますが、これは「旨し」「カビ」と読めるそうです。こんな古代から麹が意識されていたのだとしたら、なんともすごいことではないでしょうか。

◆旨み・風味が増し、肉を柔らかく

 とにかく日本の誇る日本酒、味噌、醤油は麹がなければ絶対に出来なかったので、麹菌は本当にありがたい存在です。
 「もやしもん」という人気マンガは、東京農大とおぼしき大学での麹菌をめぐる学生と教授のお話。発酵の知識が得られるし、「醸(かも)す」などという言葉が飛び交うとても面白いマンガなので、興味があったらのぞいてみてください。
 麹菌というのは蛋白質を分解し、でん粉を糖化する働きがあります。これが酒、味噌、醤油をおいしくし、肉、魚、豆、イモなどでん粉や蛋白質の多い食材の料理に旨みを与える理由です。
 塩麹は自分で作ることもできます。重量比で塩1に対し乾燥麹3〜4を混ぜて常温で2週間ほど置くと発酵してペースト状になります。もちろん市販の瓶詰めなどならすぐ使えます。
 レストランでも塩麹を使ったメニューが売り物のようで、ブリの蒸し焼き、サワラの焼きもの、マグロのカルパッチョ、チキン照り焼きからスープやソースの隠し味など、次から次へと登場します。塩麹で旨みや風味が増す、肉が柔らかくなる、と結構、評判がいいようです。
 人気が出たのは、健康にもいいとテレビや雑誌で盛んに取り上げられたためもあります。

◆秋冬は麹使用の漬物で野菜を食べよう

 漬物全体に言えることですが、乳酸菌の働きでビタミンやミネラルが増えるために、疲労回復、脳の代謝向上、生活習慣病予防などの働きがある点がまずあげられます。
 ビタミンでは麹にはB1、2、6などが含まれていて、特にB6の効果が注目されています。乳酸菌そのものは便秘の防止、腸の活性化、免疫力の向上に効果が期待されます。
 そのほか麹によって生成された良質のアミノ酸が活力を高め、ストレスを低下させることも重要です。
 さらに活性酸素の働きを抑えることから、老化防止、美肌維持、ガンの防止などの効果もあると言われています。
 これらはみな麹カビの酵素の働きによるものなので、漬物調味液から短期間に作られた無発酵の即席漬物では効果は全くありません。それよりそもそも味がまるで違います。
 なお野菜の漬物は、ビタミンやミネラルが取りやすいこと、生野菜より陽性化しているので陰性体質の人に好ましいこと、乳酸菌の働きがあることなど、塩分の取りすぎさえ気をつければ、生野菜よりも優れていると言えます。特に秋冬は漬物でいきましょう。

【著者】浅野 純次
           経済倶楽部理事長

(2012.10.26)