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「食は医力」

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第46回 おせち料理でお正月は家族団らんを

・三が日の朝は昆布茶と干柿から
・貴重なタンパク源だった黒豆
・大事にいただきたいお雑煮

 いよいよお正月というので、スーパーの店頭には「おせち料理の予約受け付け中」という文字が躍っています。
 おせち料理というのは御節の字から来ているとおり、本来、節句用の料理のことです。節句というと端午の節句(5月5日)、七夕(7月7日)など五節句があり、そのときどきのご馳走を食べたものなのですが、今はそのような風習もほとんどなくなりました。

◆三が日の朝は昆布茶と干柿から

 いよいよお正月というので、スーパーの店頭には「おせち料理の予約受け付け中」という文字が躍っています。
 おせち料理というのは御節の字から来ているとおり、本来、節句用の料理のことです。節句というと端午の節句(5月5日)、七夕(7月7日)など五節句があり、そのときどきのご馳走を食べたものなのですが、今はそのような風習もほとんどなくなりました。
 今日はわが家の正月の食風景に即しておせち料理を考えてみたいと思います。三が日の朝はまず昆布茶と干柿から。
 干柿はビタミンCがなくなってしまっている一方で、ビタミンAがたっぷりになっています。なぜか不思議な気がしますけれど。
 さて次は大事なお屠蘇です。日本酒と味醂のバランスが大事で、早めに屠蘇散を浸しておかないと屠蘇の成分が滲み出しません。屠蘇散は漢方成分で健康に良いことは確かなので、毎年、理屈を言わずにやや多めにいただいています。

◆貴重なタンパク源だった黒豆

 食卓にはおせち料理が並びます。お皿に取り分けておくのは私の仕事。ごまめ、昆布巻、黒豆、栗きんとんを各人の皿にほぼ四等分に盛り付けます。別の小皿には数の子と酢の物でテーブルは賑やかになります。
 昆布巻は鮭とニシンですが、近年は店で出来合いを求めることが多くなりました。黒豆ときんとんは何日も前から奥さんが準備しています。サツマイモの裏ごしは私でもできます。というより結構、力仕事ですね。
 ごまめは田作りとも言いますが、昔はごまめ即ちカタクチイワシを田畑の肥やしにしていたところからの別名です。カルシウムも多いし、健康食として立派なものです。
 黒豆はエネルギーのもとである必須アミノ酸が豊富で、特に肉や魚が乏しかった時代、貴重な蛋白源でした。もちろん今でも大事な食材で、黄色い大豆より黒い大豆(つまり黒豆)のほうがなぜか薬効が高いと言われています。
 なます、つまり酢の物は大根と人参の千切りにコノシロ、別名こはだを刻んで乗せます。コノシロは各地で呼び名が違いますが、酢の物も健康に良い大事な料理です。

◆大事にいただきたいお雑煮

 ひととおり食べ終わった頃にお雑煮が登場します。この準備も前の晩から始まり、前夜と当日朝が勝負という点では主婦はとにかく大変です。その仕事ぶりを見ているとますます大事にいただかなければという気になります。
 わが家のお雑煮は輪切りの煮大根をお椀の底に敷き、人参、ゴボウ、小松菜、里芋、お餅がそろったところに、焼いたばかりの鯛の身を少々乗せ、昆布と鰹節で作った澄まし汁をかけて出来上がり。最初の椀が仏壇へ行きます。
 昔は父の郷里、岡山県のスタイルでブリだったのですが、鯛に変えてから味は少々上品になりました。ブリが下品と言ってはご先祖様に申し訳ありませんが、ブリは脂がのって濃厚な感じでしたから、淡白になったと言い換えることにしましょうか。
 夜は野菜の煮物を中心に、かまぼこなどのお重が出てきます。事前につくっておいて、三が日の夜くらい主婦に多少の楽をしてもらおうという昔からの風習が残っています。
 正月の食べ物もだんだん肉や蟹、海老など豪華なものが増えていますが、素朴な野菜料理もいいものです。毎日が美食の現代にあっては、三が日ぐらい昔風の低カロリー食、食物繊維中心でおなかを休めるのも、逆説的ですが案外、健康的かもしれません。
 とはいえ、せっかくの正月の楽しみがないじゃないか、と連れ合いや子供たちに文句を言われそうでちょっと難しいでしょうか。健康に大事なことは何より楽しくいただくことで、お正月の食卓が健康料理であってもだんらんが損なわれない程度にしましょう。

【著者】浅野 純次
           経済倶楽部理事長

(2012.12.28)